司法行政権乱用疑惑に関する特別調査団報告書の波紋が尋常でない。 ソウル中央地裁の単独判事らが会議を招集し、KTX解雇乗務員たちが大法廷に入って抗議行動に出るかと思えば、全教組は記者会見を開いて「判決は無効だ」と主張した。 特別調査団が公開した極めて一部の文書だけ見ても、事件当事者が怒らないとすればかえって不思議なほどだ。にもかかわらず、裁判所行政処は「治癒と統合」を主張して文書をほとんど非公開にし、キム・ミョンス最高裁長官は告発するかどうかを長考中だ。 裁判権独立を侵害された判事だけでなく、公正な裁判を受ける権利を蹂躙された当事者に背を向ける仕打ちだ。
特別調査団は確保した410件の文書のうち「全教組法外労組通知処分効力執行停止関連検討」など3件だけ内容を公開した。しかし、この3件はもちろん残りの407件の中にも、タイトルだけ見ても“司法壟断”の疑惑が濃厚な文書が少なくない。2015年8月6日朴槿恵(パク・クネ)大統領とヤン・スンテ最高裁長官の面談に前後して作成された「VIP(大統領)報告書」(2015年8月3日)には「創造経済具現のための裁判所」「労働問題解決プロセス革新」といった目次が入っているという。「BH(大統領府)の民主的正当性付与方案」(9月5日)や「ハン・ミョンスク判決以後の政局展望および対応戦略」(8月23日)という文書もある。タイトルだけ見ても、最高裁ではなく政府・与党が作成したという錯覚を呼び起こすほどだ。
朝鮮日報がさまざまな文書に登場するのも非常に異例だ。「朝鮮日報広報戦略」「朝鮮日報報道要請事項」「朝鮮日報訪問説明資料」など10件に実名で登場している。朝鮮日報は本事件の初期から「ブラックリストはない」として、判事たちがありもしない“怪談”を作り出したという形で過度に「ヤン・スンテ最高裁」を擁護する報道をしてきた。上告裁判所に反対する判事に対する対応策として「保守メディアを通して対応論理を流布し、反対の立場をけなして孤立させ、進歩性向の判事の突出的言動の前歴を浮き彫りにする」という戦略(「上告裁判所に対する裁判所内部の理解度深層化方案」、2015年7月6日作成)を立てた行政処の「広報」と「説明」が功を奏したものか。
文書内容を公開しなければ疑惑を大きくするばかりだ。判決をもって政権と裏取り引きしたという疑惑だらけの文書が大量に出てきた司法史上初のこの事件を前にして、キム最高裁長官は真相究明に職を賭けるべきだ。そうするには当然、文書を公開し、関連者を全員告発しなければならない。