自由韓国党が北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)労働党中央委員会副委員長の訪韓に反対する大会を開いた。金英哲副委員長が2010年に起きた天安艦沈没事件の主犯だというのが彼らの根拠だ。 科学者として、このように科学的根拠に反する主張を大声で叫ぶ風景には憂慮せざるを得ない。
2010年の韓米軍事訓練、それも対潜水艦訓練中に天安艦が沈没した。対潜水艦訓練が意味するものは、当時世界最強の米国と韓国の潜水艦と駆逐艦が北朝鮮の潜水艦の浸透に対応する訓練をしていたということだ。 その後、李明博(イ・ミョンバク)政権が任命した民間・軍合同調査団(以下合同調査団)が1カ月半という短い期間の拙速調査の末に中間調査発表として、そのような対潜水艦訓練中に北朝鮮潜水艦が誰にも知られずに入って来て一発の魚雷で天安艦を沈没させ、誰にも知られずに逃げたと主張した。
その合同調査団の主張は、科学的根拠とは反対のものだった。魚雷爆発があったならば当然発生しなければならない諸現象が全くなかった。 例えば、魚雷が爆発をしたなら100メートル程度の高さの水柱が発生しなければならないが、その当時甲板に出ていた2人の見張り兵は水柱は見られなかったと証言した。天安艦の切断面で発見された蛍光灯は割れもせず無傷だった。合同調査団が最終報告書で認めたように、死亡した兵士たちの遺体には破片傷や火傷の跡がなく死因は溺死だった。 しかし合同調査団はこれら全てのデータと反対の結論を主張した。そうするために一般人には理解しにくい、いわゆる“科学データ”を提示した。
その直後に私は科学者として合同調査団が提示した科学データに問題点を見つけ、捏造されたということを科学的に証明した。いわゆる「1番の魚雷」で、低温で燃焼する「1番」のインクはそのまま残り、高温でも焼けないペイントは溶けてなくなったという矛盾はまだ解明されていない。 いわゆる“吸着物”の分析データは操作されたものであることが確実だ。 さらには、米国側の調査団長だったトーマス・エクルスも2010年7月13日に韓国国防部に送ったEメールで、これに対する「疑いを除去するに十分であるとは思わない」と問題を提起したではないか。その頃科学界最高の学術雑誌の一つである『ネイチャー』もまた、合同調査団の結論に合理的疑問を提起した人々の主張を詳細に扱った記事を書いた。科学者として断言する。 天安艦が北の魚雷によって“爆沈”されたという主張は科学的根拠に反する虚構だ。
合理的な人間ならば当然、科学的に疑問だらけの合同調査団の結論に対する再調査を要求すべきである。しかしその反対に、合同調査団が言及さえしなかった人物をその沈没事件の主犯に仕立て、さらに「射殺」すべきだと主張するのは典型的な魔女狩りだ。21世紀にこのような政治勢力が韓国社会で相変わらず大声を上げているという状況は、分断の反理性的な姿を示すものだ。
しかし、科学的事実はいくら自分の“信仰”に基づいて否認しても消えはしない。 近年に起きている極端な気候に、以前は気候変動を信じなかった人々も今では気候変動という科学的事実を受け入れ始めている。科学的事実は消えない。結局は受け入れざるを得ない。科学的事実のもう一つの重要なポイントは、その現象が再生可能であるというところにある。合同調査団が核心的科学データだとして提示した模擬爆発実験を再度実施すれば、合同調査団の操作事実を科学的に示すことができる。
今や金英哲の責任を問う前に、天安艦沈没の真の原因を理性的に再検討すべき時点である。自由韓国党が天安艦沈没の責任者を問い始めた。この機に天安艦沈没の全貌を科学的に究明しよう。