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文大統領、国連演説で「平和」30回…平昌五輪を「朝鮮半島の緊張緩和」の呼び水に

登録:2017-09-22 04:05 修正:2017-09-22 07:44
今月21日(現地時間)、米ニューヨーク国連本部で開かれた第72回国連総会で、文在寅大統領が基調演説を行っている=ニューヨーク/大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が21日(米ニューヨーク現地時間)に行った国連総会の基調演説のキーワードは、「平和」と「ろうそく」だった。「平和」をモットーとする国連という空間の象徴性と平和な変革を成し遂げた「ろうそく革命」の精神を結び付けようとしたものだった。特に文大統領は、「平和」という言葉を30回も言及した。北朝鮮の挑発に対しては、国際社会と協力して制裁・圧迫を強化し、北朝鮮の核・ミサイル問題は多国間の対話を通じて平和的に解決するしかないという原則を再確認した。朝鮮半島の緊張局面が偶発的な軍事衝突につながってはならないという点も強調した。それと共に、来年2月に開かれる平昌(ピョンチャン)冬季五輪を、朝鮮半島の安定と平和へと進むための“テコ”にする考えも示唆した。

 文大統領は演説で、「ろうそく革命」を何度も取り上げた。彼は「ろうそく革命は民主主義と憲法を回復しようとする熱望が市民の集団知性につながった広場だった」とし、「大韓民国国民は最も平和で美しい方法で民主主義を成し遂げた。暴力よりも平和の力が世の中を大きく変えられることを証明した」と強調した。

 同日の演説を控えて注目が集まったのは、文大統領が北朝鮮核問題に対し、いかなる解決策を提示するのかであった。文在寅政権が最近、相次ぐ北朝鮮の核・ミサイルの“挑発”に対抗するため、米国トランプ行政府の「最大限の圧迫と関与」政策に歩調をあわせて、対北朝鮮強硬基調を維持してきたからだ。

 文大統領の北朝鮮の核に関連した言及は断固としたものだった。文大統領は「北朝鮮が他国を敵対する政策を捨て、核兵器を検証可能に、そして不可逆的に放棄することを求める」としたうえで、「全ての国が安保理決議を徹底的に実施し、北朝鮮がさらに挑発を続ければそれ相応の新たな措置を模索すべきだ」と述べた。

 その一方で、文大統領は、今年7月にドイツ・ベルリンの「ケルバー財団」演説で明らかにした、北朝鮮の崩壊、吸収統一、人為的統一を追求しないといういわゆる「3ノー(NO)」政策を再確認した。また、「私たちのすべての努力は戦争を防ぎ、平和を維持するためのもの」だとしたうえで、「過度に緊張を激化させたり、偶発的な軍事的衝突によって平和が破壊されることがないように、北朝鮮の核問題を巡る状況を安定的に管理していかなければならない」という点も明確にした。特に「平和は紛争がない状態ではなく、紛争を平和な方法で扱う能力を意味する」というロナルド・レーガン元米大統領の言葉を引用し、「状況の安定的管理」を強調した。

 北朝鮮の核問題解決原則と「多国間主義」も強調した。文大統領は「北朝鮮の核問題を根本的に解決するためには、国連憲章が示している安保共同体の基本精神が朝鮮半島と北東アジアでも実現されなければならない」とし、「北東アジアの安保の基本軸と多国間主義が賢明に結合されるべきだ」と述べた。そして、「多国間対話を通じて、世界平和を実現しようとする国連の精神が最も求められるのが朝鮮半島」だと強調した。

 朝鮮半島の平和に向けた文大統領の提言はろうそくと平和の結合だった。文大統領は「民主主義の危機を前にして、大韓民国国民が掲げたろうそくのように、平和の危機の前で平昌が平和の光を照らすろうそくになると信じている」としたうえで、「皆さんと国連がろうそくになって欲しい」と話した。文大統領はさらに、「世界各国の首脳たちを平昌に招待する。皆さんの足取りが平和への一歩となるだろう」と述べた。

今月21日(現地時間)、米ニューヨーク国連本部で開かれた第72回国連総会で、文在寅大統領が基調演説を行っている=ニューヨーク/大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 文大統領は今月19日、トーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)委員長と面会し、来年2月の平昌冬季五輪期間中、全世界の紛争を中断しようという「停戦決議案」を国連総会に提出したと明らかにした。1993年10月、国連総会の決議(48/11号)の採択以降、国連は五輪を控えた年にオリンピック・パラリンピックの開幕7日前から閉幕7日後まで「五輪休戦」を遵守することを加盟国に要請してきた。文大統領は、この期間を朝鮮半島の緊張緩和と共に情勢転換のための主要な糸口として活用することを目指しているものとみられる。文大統領は20日、ニューヨークのメトロポリタン博物館で開かれた「平和五輪のための平昌の夜」での演説でも、「平昌冬季五輪を北朝鮮が参加する平和五輪にする」と明らかにした。

 カギとなるのは北朝鮮の動きだ。これまで「政治・軍事問題が解決される前に、スポーツ交流はあり得ない」という北朝鮮の態度が変わっている点は、ひとまず肯定的だ。北朝鮮のチャン・ウンIOC委員は、今月16日、ペルーのリマで開かれた国際オリンピック委員会総会に出席し、「政治と五輪は別々だと考えている。参加資格を得られれば、参加を決定する」と述べた。しかし、「国家核武力の完成」に向かって突き進んでいる北朝鮮の追加挑発の可能性やそれに伴う国際社会の対応など、今後の情勢は依然として不透明であり、これからも難関が待ち受けるものとみられる。

 キム・ヨンヒョン東国大学教授は「五輪を媒介に朝鮮半島の軍事的緊張を解消し、平和に対する大統領の積極的意志を訴えたもの」と分析した。キム・ヨンチョル仁済大学教授は「現在の朝鮮半島の危機を北東アジアレベルの多国間安保協力と北東アジア経済協力で(危機を)根本的に解決すべきとした点が大事だ。これは、北朝鮮核問題を北東アジア地域秩序のレベルで話したものであり、演説文に盛り込まれているわけではないが、朝鮮半島平和体制および南北経済協力に拡張できる部分」だと話した。

チョン・インナン、イ・ジョンエ、キム・ジウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/812087.html 韓国語原文入力:2017-09-22 00:28
訳H.J(2805字)

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