李明博(イ・ミョンバク)政権時代、民間人不法査察の被害者のキム・ジョンイク元KBハンマウム代表(65)に国が支給した損害賠償金の一部を、当時査察を担当した公務員が国に支給すべきとする裁判所の判決が出た。裁判所はイ・ヨンホ元大統領府雇用労使秘書官など公務員が故意に違法行為を働いたと判断した。
ソウル中央地裁民事47部(裁判長チェ・ギサン)は17日、政府がイ元秘書官とイ・インギュ元首相室公職倫理支援官ら7人に対し、国が(キム元代表に)支給した賠償金を返すことを求めて提起した求償金請求訴訟で、イ元秘書官などが国に6億3870万ウォン(約6180円)を支給することを命じる判決を言い渡した。裁判所は、イ元秘書官が国に支払うべき金額を2億2356万ウォン(約2160万円)、イ元支援官の場合は1億5968万ウォン(約1550万円)に策定した。
キム氏は、李明博政権時代に首相室公職倫理支援官室(支援官室)が行った民間人不法査察の代表的被害者として知られている。2008年、キム氏が自分のブログに李明博元大統領を戯画する「チュイコ(ちっぽけなことの意味。李明博大統領のあだ名)」動画を掲載したことを受け、支援官室は全面的な査察に乗り出した。キム氏に動画の掲示経緯を調査するのはもちろん、キム氏が会社代表取締役から退き、会社の株式15000株を安値に売り渡すよう圧力を加えた。これに対し、キム氏は2011年、国とイ元秘書官など7人を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。
昨年4月、最高裁判所(大法院)は国とイ元支援官などが連帯して、キム氏に強制退職によって受けられなかった給与と精神的な慰謝料など5億2092万ウォン(約5040万円)の支給するよう命じる原告一部勝訴判決を言い渡した原審を確定した。政府は翌月、キム氏に遅延損害金を含めて9億1249万ウォン(約8830万円)を賠償した後、「イ元秘書官などが故意に違法行為を働いたため、損害賠償金を負担すべきだ」として、イ元秘書官など7人を相手に求償金を請求する訴訟を起こした。国家賠償法は公務員が単なるミスではなく、故意や重大な過失で違法行為を働いた場合、国が先に賠償した後、公務員個人にも賠償責任を求められるように定めている。
裁判所はまず、イ元秘書官などが行った民間人査察は故意による違法行為であることを明確にした。続けて「民間人不法査察は支援官室の新設当時に企画されたものと見られ、公務員個々人よりも、国家機関によって行われた行為に近い」として、査察が政府レベルで組織的行われたことを強調し、国も30%の責任を分担すべきだと判断した。裁判部は特に「支援官室は、公職紀綱の確立を通じてこのような国家公務員の違法行為の予防に貢献すべき国家機関であるにもかかわらず、それを予防したり、防止するための努力をしなかった」と指摘した。ある法曹界の関係者は「公務員の違法行為に対する国の求償権請求を裁判所が認める場合は多くない。民間人査察は公務員一人一人も積極的に服務した重大な違法行為ということを裁判所が再確認したもの」だと話した。