国民の党の安哲秀(アン・チョルス)大統領候補の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に関する立場が以前と大きく変わった。安哲秀候補は6日、寛勲(クァンフン)クラブの招請討論会と9日の聯合ニュースとのインタビューで「次の政府は国家間合意を尊重すべき」として、「状況が変わったのに以前の立場を守ることこそ問題」と明らかにした。安候補のこうした発言は、慶尚北道星州(ソンジュ)にTHAADを配備した現政権の決定を事実上支持するものと解釈される。
安候補は政府のTHAAD配備発表直後の昨年7月10日に声明を出し、THAAD配備に強く反対し国会批准と国民投票の実施を提案したことがある。当時、安候補はTHAADの性能と費用、対中関係、電磁波問題などを取り上げて「国益に役立たない」と明らかにした。それと共に「政府が一方的に決められる事案ではない。公論化過程を経て社会的合意によって決めなければならない」と主張した。安候補の態度は「次期政府が決めることにしよう」という共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)候補の主張よりはるかに強力だという評価を受けた。
ところが最近、こうした立場をひっくり返した。安候補は「国家間合意」が重要だという点を挙げたが、韓米政府のTHAAD配備決定は国会の批准を経て国際法的効力を発生する「条約」とは異なり、元に戻すことのできない「国家間合意」とは見難い。安候補はまた「状況が変わった」という根拠として、昨年10月20日の韓米国防長官共同発表を挙げた。ところで、これは両国の長官が「共同発表」形式で「(THAAD配備)合意を再確認」したという水準なので、状況が変わったとは言えない。その上、安候補は共同発表の直後である11月13日、毎日経済とのインタビューで「THAAD配備反対」を主張し続けた。ろうそく集会が大きく広がる時期であった。ろうそく市民の世論が激しいと「THAAD反対」を叫び、今は保守票を意識して態度を変えたのではないかと見られる変化だ。
もちろん、この間に韓国と米国の当局が発射台をはじめTHAAD装備を奇襲搬入して配備を押し切ったせいで「今は元に戻すのが難しいのではないか」というムードが広がったのは事実だ。しかし、大統領候補として出た人がムードを理由に、または票を意識して重要な外交安保問題で明確な説明もなく、一瞬にして立場を変えるならば、有権者はどうして信頼できようか。安候補は今になって、なぜTHAADが国益に役立つと判断するようになったのかを率直に説明しなければならない。それが責任ある政治指導者の姿勢であろう。