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[インタビュー]「朝鮮半島の最大の悩みの種、THAAD問題を解きます」

登録:2017-02-22 06:35 修正:2017-02-22 08:11
チョン・ウクシク平和ネットワーク代表//ハンギョレ新聞社

 「THAAD問題だけを扱った本では初めてです」。最近、『THAADのすべて」(“ガラス窓”出版)でチョン・ウクシク平和ネットワーク代表(45・写真)は、THAAD(終末段階高高度地域防衛体制。通称・高高度防衛ミサイル)配備が「韓国の国益には百害あって一利なし」と断言した。彼は北朝鮮のミサイル攻撃など北朝鮮核問題の対処用としても「THAADは無用の長物であるだけでなく、むしろ北朝鮮を助ける利敵行為に近い」と強調した。

 「昨年末、忘年会で会った高校の同窓生たちが訴えていた。整形外科医、東大門市場の商人、大企業の社員など、様々な職業を持つ友人たちが『THAADのせいで大変だ』と。野党の政策諮問会議で、野党側がTHAAD問題に無気力で大統領候補らもこの問題で揺れているという心配の声を聞いた」。それでTHAAD問題をまとめた本を書こうと決心した。「THAADを知らない方には良い入門書に、THAADを賛成する方にはもう一度考えてみる再考の参考書に、THAADに反対する方には論理的指針書になれればいい」

政治家から商人まで「大変だ」と訴えている  
『THAADのすべて』まとめて出版  
「百害あって一利なし・無用の長物・利敵行為」明快  
「賛成者も、もう一度考えてみるための参考書に」 
「金正男事件」安保危機の名分になることを懸念  
「大統領選挙候補らは『THAAD猶予』宣言から」

 韓国にTHAADが配備されれば、最も喜ぶ人は?「おそらく米国軍需企業のロッキード・マーティンの会長でしょう」。彼は、8兆ウォン(約8千億円)台の次世代戦闘機(F-X)事業の決定段階にあったボーイング(F-15SE)を一晩でロッキード・マーティン(F-35)に変えてしまったように、最近、韓国の米製の武器・装備の大規模な購入がロッキード・マーティンに集中発注式で進められてきた点を指摘した。THAAD1個砲台がいったん配備されれば、追加配備にパトリオット部隊も増強してイージス弾道ミサイル防衛体制(ABMD)も導入しなければならないため、ロッキード・マーティン社だけでなく、「米軍産複合体全体が大喜びするだろう」という。

 彼は次に喜ぶ人に「安倍晋三首相」を挙げた。「まず、THAADが日本の防衛に貢献できるからだ。THAADの砲台に含まれたX-バンドレーダーは、従来の日本のイージス艦とパトリオットとも連動される。しかも、韓米日軍事情報保護約定に続き、韓日軍事情報保護協定まで締結されたところだ。もう一つは、韓米両国のTHAAD配備の決定で、韓中関係が破綻しているからだ。安倍晋三は韓国と中国の接近に気を揉んできたが、THAAD一発で全部解決したのだ。手を使わず鼻をかんだどころではなく、朴槿恵(パク・クネ)が安倍の鼻をふいてやったわけだ」。これは韓国とライバル関係にある日本経済にも好材で、中国人観光客も日本に傾くようになり日本の観光業界も歓迎しているという。

 何より「THAAD韓国配備で最大の恩恵を受ける者は北朝鮮」だろうと彼は言った。「その当然の帰結で南(韓国)が最大の被害者となる呆れた出来事が起きている」とし、チョン代表は「北朝鮮の核制裁などに向けた国際的合意も(中国・ロシアなどとの対立のために)全部崩れ、THAADがその座を代わりに占めた。中国と仲違いして新冷戦の二極対立構造が深刻化すれば、どんどん北朝鮮の立場ばかり強化される」とした。

 THAADが北朝鮮の核問題解決にも、北朝鮮ミサイル防御にも無用の長物という事実は「小学生レベルの基本常識だけでも知ることができる」ということを前提にした彼は「むしろさらに大きな危険を招く恐れがある事」にもかかわらず、国防部と保守勢力がこれを知らなかったり、知りながらもあえて無視していると批判した。THAADが米国でさえ技術的有効性を確実に検証を受けたことがなく、莫大なコストがかかるうえ、迎撃ミサイルを撹乱する北朝鮮の「欺瞞弾」(デコイ)に無策であり、南北のように狭い地域で互いにくっつき合い「縦深」が短い地形的特性上、最大射程200キロ、最低・最高迎撃高度40~150キロのTHAADでは北朝鮮の中距離ミサイルに対処できないという点など、限界がすでに知られているということだ。「THAADで大韓民国の半分以上を守ることができるという国防部の主張は、一次元的かつ単細胞的なものだ」。それでもないよりはましではないかという主張に対して、彼は「ないほうがましだ」と言い返した。

 チョン代表は「THAADのX-バンドレーダーの探知・追跡範囲は半径3000キロを超える」というマサチューセッツ工科大学(MIT)のセオドア・フォーストール教授やコーネル大学のジョージ・ルイス先任研究員の分析を引用し、THAAD配備による自国の対米・日軍事的抑止力の無力化を恐れている中国の猜疑心と反発は根拠がないことではないとした。

「米日‐中ロ、大国同士でやりとりする取引に私たちはまた卒兵の役割をしなければならないのか」と自嘆した彼は、これを自ら招いた韓国政府と安保専門家らの歴史認識の欠如を批判した。

「南北関係改善に当為性があるが、現実的に内外環境は生易しくはない。大統領選候補や次期政府が朝鮮半島(南北)問題を対話で解決するという強いメッセージを発信し、いったん意志を明らかにする必要がある。このため、THAAD配備も少なくとも1~2年猶予し、まず北朝鮮の核交渉に集中してほしい。それだけでも進展すれば、中国も北朝鮮の核問題解決にさらに積極的に取り組むだろうし、トランプの米国も柔軟な姿勢に出るのではないだろうか」。彼は最近突発した“金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件”が朝鮮半島をめぐる「軍事力増強の基盤を育成する」の名分に悪用される可能性が高まったとし、南北の賢明な対処を求めた。

高麗大学政治外交学科と北朝鮮大学院大学北朝鮮学で修士を経て、米ジョージワシントン大学の客員研究員などを務めたチョン代表は、1999年に平和ネットワークを設立以来、韓米同盟と北朝鮮核問題の専門家として全部で15冊の本を書き上げた。

チョン代表は厳しい闘いを繰り広げている地域住民たちの(THAAD反対)闘争に感謝と連帯の意味を込めて、印税を星州(ソンジュ)と金泉(キムチョン)のTHAAD配備反対対策委員会などに寄付することにした。

文・写真/ハン・スンドン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/783626.html 韓国語原文入力:2017-02-21 21:24
訳M.C(2826字)

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