本文に移動

憲法に反す「覆面デモ禁止」法案を韓国与党が発議   

登録:2015-11-26 01:14 修正:2015-11-26 08:08
11月25日漫画 //ハンギョレ新聞社

朴大統領の「覆面デモ禁止」発言に基づき 
与党「不法デモのみ覆面禁止」 
警察の恣意的判断に委ねられる

 チョン・ガプユン議員など、セヌリ党議員32人が集会における覆面着用の禁止を骨子とした「集会および示威に関する法律」(集示法)改正案を25日に発議した。朴槿恵(パク・クネ)大統領が閣議で「覆面デモを禁止すべきだ」と発言した翌日のことだ。

 2006年と2009年にも同様の集示法改正案、いわゆる覆面禁止法が発議されているが、憲法に保障された集会の自由と表現の自由などが侵害される恐れがあるとの理由で可決されなかった。

 現行憲法(第21条1項)は、集会の自由を保障する。 2003年10月、憲法裁判所は、集会の自由の内容を次のように具体化した。「主催者は集会の対象、目的、場所と時間について、参加者は参加の形態と程度、服装を自由に決定することができる」。集会の自由に「服装の自由」が含まれていることを明らかにしたのだ。特に服やマスク、フードなどの着用が個人の表現の自由の問題であることから、違憲をめぐる議はさらに複雑化する。チョ・グク・ソウル大学教授はSNSに「このような法案によると、反戦デモで骸骨のマスクを使ったり、批判の対象とする著名な人物を表現するマスクを使うことなども、処罰されることになる」と指摘した。

 セヌリ党は、違憲性をめぐる論議を意識して覆面禁止法を不法・暴力デモにのみ適用するという立場だ。チョン・ガプユン議員は「憲法が保障する集会・デモの権利は平和的意思表示を前提とする。平和的デモでは覆面着用を可能にし、不法・暴力デモでは、これを禁止するようにした」と述べた。

カトリック農民会など農民団体が開いた集会に参加した農民が25日午後、ソウル鍾路区の青雲孝子洞住民センター前で手にプラカードを持って大統領との面談を要求している=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 しかし、不法・暴力デモの判断が主観的にならざるを得ないことに問題がある。民主社会のための弁護士会のパク・チュミン弁護士は「現場に出動した警察が自らの裁量で違法・暴力デモかどうかを判断すると思われるが、非常に恣意的に決定される恐れがある」と指摘した。平和的なデモも政治的見解に基づいて覆面着用を口実に集会の自由が制限される可能性があり、同性愛者などの社会的少数者の権利も制限されることもあり得るということだ。

 セヌリ党は、特に外国の事例を挙げて覆面禁止法の必要性を強調している。チョン・ガプユン議員が国会の立法調査処から提出を受けた「マスクの着用禁止の外国の事例報告書」によると、ドイツ、オーストリア、フランス、スイス、米国の一部の州の先進国に分類される5カ国が集会の際に覆面の着用を禁止している。他にも、スウェーデン、ノルウェー、カナダなどが似たような制度を設けていることが分かった。

 注目すべきは、これらの国が概ね政治的自由度が高い国であるということだ。国境なき記者団が発表した2014年の世界の言論自由指数によると、米国(46位)とフランス(39位)を除いた他の国では、全180カ国のうち、上位20位以内に位置していた。韓国は57位だった。社会がまず幅広い自由を保障し、それに伴う責任を問うているのだ。ホン・ソンス淑明女子大学教授はSNSで「覆面着用を禁止する国は、表現(デモ)の自由レベルが韓国よりもはるかに高い。大統領や首相の私邸、議会の壁にすぐ前でデモすることも可能なため、車壁を設置する韓国と単純に比較することはできない」と反論した。覆面禁止法が米国のク―・クラックス・クラン(KKK)やヨーロッパのネオナチなどの人種差別主義者の覆面デモを防ぐために作られたことも考慮する必要があるものと指摘されている。

チェ・ヒョンジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-11-25 19:31

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/719077.html 訳H.J

関連記事