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[コラム]21世紀の覇権競争で起きている4つの変化

登録:2015-11-09 23:49 修正:2015-11-10 06:43

 冷戦後、列強の地政学的対決にも終末が訪れたようだ。 米国主導の下で多者間交渉と協力が国際秩序の主軸になると考えられた。 米国のイラク戦争はそのような期待を壊し始めた。 昨年から世界は再び危なっかしい地政学ゲームの時代に突入した。

 最初に、ロシアのクリミア半島併合とウクライナ内戦だ。“ポスト冷戦”、すなわち冷戦以後の時代の象徴であるロシア国境は再び膨張している。 歴史的にロシアは地政学的な安保の脆弱性を領土の膨張によって補完してきた。 辺境を広げて緩衝地帯を作った。 西側はこのようなロシアの宿命的膨張主義をコントロールできなかった。 ベルリンの壁崩壊の時の約束だったNATOの現状維持約束を破った。 ウクライナまでがヨーロッパ連合への加入を試み、ロシアはクリミア半島を併合し、ウクライナ東部を独立させる内戦で対応した。 ロシアはついでにシリア内戦にも介入した。 長年の夢である中東進出の橋頭堡を確保しようとしている。

 第二に、ロシアのシリア内戦介入は中東の地政学地図の激変を加速化している。米国のイラク戦争失敗は中東の巨大な勢力空白を生んだ。 その中にサウジアラビアを筆頭としたスンニ派アラブ国家、イランが主導するシーア派連帯、イスラム主義武装勢力の3者が混戦している。 米国など西側が後援するスンニ派国家、ロシアが加担したシーア派連帯、二つの陣営の間で勢力を広げたイスラム国(IS)等のイスラム主義武装勢力は中東の地図を描きなおしている。 シリアとイラクは事実上解体された。 イラクのシーア派勢力圏、イラクとシリアのスンニ派勢力圏、イラク北部のクルド族勢力圏、シリア東部のアラウィ派勢力圏に分けられている。 その波紋はイエメンのシーア派フーシ反乱軍勢力圏など、他の中東国家体制も崩している。 外では難民リスクを生んでいる。

 第三に、難民リスクなどはドイツが思うままにしているヨーロッパ地政学地図の脆弱性を誘う。ギリシャ負債危機で明らかになったヨーロッパでのドイツの圧倒的影響力は“ドイツのヨーロッパ”という憂慮をもたらした。 ドイツは自身の基準でヨーロッパを導こうとする。 ドイツのヘゲモニーに対する憂慮は、難民への対処を巡って英国のヨーロッパ連合脱退国民投票提案などヨーロッパ連合の危機としてあらわれる。ドイツ、フランス、英国は先を争うように中国に求愛している。 これは米国と西ヨーロッパ同盟の弛緩を生んでいる。

 第四に、米国主導同盟の弛緩はポスト冷戦時代の地政学的争いの核心である米中対決を激化させる。 最近、中国が領有権を主張する南シナ海人工島水域での米軍艦船の航海で、両国の地政学的競合は物理的衝突も辞さない段階に入り込んだ。 これは狭くは南シナ海、広くは太平洋の制海権、本質的にはユーラシア大陸の覇権を賭けた地政学的対決の始まりだ。

 この事件に前後して、競争的な英国、フランス、ドイツの中国首脳外交と大規模経済協力、ユーラシアを陸地と海と両側で連結しようとする中国の「一帯一路」政策は、ユーラシア大陸での米国の覇権を深刻に脅かす可能性を高めた。 米国は南シナ海での中国との対立を急いで選択した。 それは弛緩する同盟国に対する圧迫であり、実質的な中国封鎖政策だ。 また、環太平洋経済パートナーシップ協定(TPP)推進で中国の一帯一路政策に対抗している。

 イラク戦争の失敗により本格化したポスト冷戦時代の地政学的構造変化と対決は、南シナ海での熱戦の可能性を催促する。 中国の挑戦に対する米国の応戦は、先ずその地域同盟の再構築に現れている。 中国を仮想敵国とする日本の役割を拡大し、韓国をそれに一体化させようとしている。 今後米国がどのような政権になろうが、この傾向は強化されるだろう。

チョン・ウイギル国際部先任記者 //ハンギョレ新聞社

 バラク・オバマ米大統領は「朴槿恵(パク・クネ)大統領に唯一要請したことは、我々は中国が国際規範と法を遵守することを望むということだ。もし中国がそうでないならば韓国が声を上げなければならない」と二者択一を要求した。 ポスト冷戦の地政学ゲームで韓国は最初に明示的選択を強要されている。 韓国は米国と中国にとって自分たちの地政学ゲームを解く最初の弱い環になっている。

チョン・ウイギル国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/716597.html 韓国語原文入力:2015-11-09 18:57
訳J.S(1924字)

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