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[寄稿] 日本における政治文化の変容

登録:2015-07-20 06:33 修正:2015-08-17 06:59

 安保法制をめぐる議論を契機に、日本における政治文化の分極化が明らかになっている。1つの流れは、反知性主義である。もう1つは、民主化を進める市民文化である。

 反知性主義は、ナショナリズムを掲げる運動やメディアの一部だけでなく、政治の世界に浸潤している。そもそも安保法制自体が反知性主義の産物ということもできる。多くの憲法学者は内閣法制局長官経験者が安保法制を違憲と断じているが、政府はこれに対してまともに反論できていない。日本の自衛隊は自国を守るために武器を保持することを許されているのであり、他国を防衛する集団的自衛権の行使は憲法上ありえないのである。国会における法案審議では、安倍首相や中谷防衛大臣は質問に答えず、議論をはぐらかすことの連続であった。集団的自衛権を行使すれば、自衛隊員のリスクは高まるし、相手方からは日本国内でテロを仕掛けられるかもしれない。しかし、政府は自衛隊員に危険は及ばないとか、国民の安全は高まると、妄想とも思える主張をしている。このように、日本の政治指導者は、論理や客観的な事実認識を放棄するという点で、反知性主義に染まっている。

 文化の世界では、反知性主義をむき出しにした作家や政治家が差別や偏見を煽っている。先日自民党の文化芸術懇話会という会合で、講師として招かれた百田尚樹という小説家は、中央政府に批判的な沖縄の2つの地方紙をつぶせと言い、自民党の議員はスポンサーに圧力をかけてテレビの報道を統制しようと気勢を上げた。しかも、政治家や保守的なジャーナリストはそのような妄言を言論の自由と正当化した。デマを飛ばして他人を貶めたり、自由を否定したりする議論が、言論の自由の下でまかり通っているのが今の日本である。そうした風潮の中で、韓国に対する蔑視を煽る言説が続いていることについて、私は日本人の一人として申し訳なく思うし、そのことに憤っている。

 反知性主義は政党を劣化させている。自民党はかつての視野の広さやバランス感覚を失っている。安倍政権が安保法制を推進することについて、党内から批判の声がほとんど出てこない。安倍首相が失敗した時に、事態を収拾する次のリーダーが不在である。これは自民党にとっても、日本にとっても危機である。

 他方、安保法制に反対する運動を契機に、新しい市民文化が現れ、広がっていることも確かである。2011年の福島第一原発の大事故を契機に、脱原発を求める市民運動が広がった。自民党政権の復活によってこの運動は縮小したが、持続していた。そうした運動に加えて学生を中心とした新しい運動が世論を作り出している。学生はラインやメールで組織を広げ、数千さらには数万の市民を国会議事堂の周辺に集めることに成功している。こうした学生を見て、学者も沈黙を保つことを恥じ、安保法制反対や、戦後70年談話において侵略への反省と謝罪を明らかにすることを求めることなど、政治的発言をするようになった。安保法制の強行採決を契機に、安倍内閣の支持率は低下し、50%前後を保っていたものが40%を切る水準まで低下し、多くの調査では不支持が支持を上回るようになった。

 また、2020年の東京オリンピックのために新しい国立競技場を作る件では、総工費2500億円の計画が一旦決定され、事業の発注も行われたが、国民からの余りに強い批判の前に、安倍首相は計画の白紙撤回を余儀なくされた。この件は、税金の使い道に関わる問題であり、国民は具体的な怒りを抱いたのである。世論が無力でないことは、この一件で証明された。

山口二郎・法政大学法学科教授 //ハンギョレ新聞社

 

 東アジアでは、韓国や台湾で学生の運動から始まって民主化を求める運動が行われた。日本はアジアにおける民主主義の先駆者という自己規定を持っており、隣国の運動を好意的に見ているつもりだった。しかし、日本の民主主義は政党や議会における形式的なものにとどまっていたのだ。1960年には、安倍晋三の祖父、岸信介首相が進める日米安全保障条約に反対する大規模な抗議運動が起こった。しかし、その後は運動の文化は消滅した。市民が重要な政策について自分の意見を表明するために日常的に街頭に出て声を上げるという習慣が身についたのは、2011年の脱原発運動以後の話である。むしろ、韓国などの民主化運動の後を日本が追いかけ、新しい政治文化を作ろうとしているというべきである。

 今、戦後70年の夏、日本の民主政治は大きな分岐点に差し掛かっている。自己中心主義と思考停止の中で戦後民主主義の築いた平和と安定を壊すのか、新しい市民文化が民主主義を成熟させるのか。8月に戦争と平和を考える中で、日本国民が正しい選択をすることを願う。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-07-19 18:40

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/700847.html

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