ハワイ駐留の米太平洋司令部の反応は釈然としないものだった。司令部作戦局長を担うモンゴメリー海軍少将は「6カ月ごとに状況変化を分析し作戦設計を変えているが、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)射出試験は一つの要因にすぎない」とこともなげに語った。意外である。韓国では北朝鮮のSLBM試験発射で大騷ぎになっていたが、北朝鮮が狙いを定める当の米国は、むしろ平静だった。
先週、ハワイ米太平洋司令部の高位級将軍らと関連専門家たちと会った席で、もっとも気がかりだったのは、彼らが北朝鮮の核問題をどう見ているかにあった。
端的に言えば、彼らにとり北朝鮮の核問題は主な関心事ではなかった。太平洋司令部の主関心事は、軍備を拡張させている中国をどう牽制するかにあった。それは北朝鮮の核問題を事実上放置している米政府の影響のためかもしれないし、軍事的に北朝鮮の核能力を特に評価していないためでもある。おそらくその二つが複合的に作用しているように思えた。
米政府は北朝鮮の非核化を主張するだけで、非核化を貫徹するための実質的な措置は取らないでいる。北朝鮮が核開発能力を徐々に強化させていくのを、ただ目を開いて見守ってきた。事実上放置してきたのだ。その本心はどこにあるのか。北朝鮮の核問題を解決せず、潜在的な脅威のまま残し、これを軍事・外交的に活用しようというのだろうか。その可能性は十分ある。
米国が北朝鮮の核問題を事実上放置しているのは、その核兵器の攻撃能力が、まだ自分たちの統制範囲にあるという自信からくるのだろう。バージニア級最新鋭原子力潜水艦ミシシッピ号(7800トン級)を記者たちに隅々まで公開した海軍関係者は、こうした原潜2隻で北朝鮮の潜水艦は十分に対応できると話した。ミシシッピ号は24機の魚雷と12機のトマホーク・ミサイル発射装置を装着している。
もう一つ、北朝鮮が米国を核兵器で攻撃するといくら威嚇しても、実際に攻撃することはないという確信のためだ。カール・バーカー米国戦略国際問題研究所太平洋フォーラム・プログラム責任者は、北朝鮮が核を発射すれば、そのまま北朝鮮の終末になると言い切った。東西文化センターのデニー・ロイ教授も、北朝鮮が米国を攻撃するのは、いかなるシナリオでも北朝鮮体制が自滅するのと同じだとし、自ら命を絶つことはないと考えると語った。つまり、北朝鮮の核が実際に使用される可能性はないと見ているのだ。
問題はここにある。米国が北朝鮮の核問題を事実上放置する間、北朝鮮の核開発能力は次第に強化され、核の威嚇レベルだけが高まる状況になる。こうした状況で起きることはなにか。
米国は北朝鮮の核脅威をより際立たせ、これを防御するための先端兵器体系をより一層強化するよう韓国政府を圧迫するだろう。最近訪韓したジョン・ケリー米国務長官が地上配備型迎撃システムの高高度防衛ミサイル(THAAD)の朝鮮半島配備を公論化させたのも、その延長線上にあるとみることができる。
韓国にしても、ますます強化される北朝鮮の核脅威を無視することはできない。いくら北朝鮮の核が実際に使われる可能性が低いといっても、頭上にある核を放っておくわけにはいかない。これを口実に、北朝鮮の脅威に対応できるさらに高度化された兵器を導入し、兵器システムを先端化させるほかはない。すでにそうした道に進んでいるのが現実だ。
北朝鮮は米国が自らの核能力を本当に脅威と受け止める時まで、核兵器能力を高めていくことだろう。自らの生存がはっきり保障されない限り、北朝鮮は核兵器開発を決して中断することはできない境遇にある。
結局、現在の北朝鮮の核をめぐる状況は、南と北にとり最悪のシナリオだ。北朝鮮は核開発に引き続き莫大な財源を注ぎ込まなければならず、韓国はこれを防御するため、いつ終わるとも知れない先端兵器競争の中に引き込まれるほかはない。
米国はどうか。北朝鮮の核脅威から安保を守るという名分で、韓国に最先端兵器を売れる時間を稼ぎ、安全保障の代価として中国を牽制する同盟強化を要求している。米国としては決して損しないカードとなる。北朝鮮の核が米国に“祝福”となるこの逆説を、いつまで手離しで見守らなければならないのだろうか。
韓国語原文入力:2015-05-27 19:04