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フォトショップを知らなければ“デジタル文盲”

登録:2015-05-18 23:26 修正:2015-05-19 06:27
北朝鮮の朝鮮中央テレビが今月9日に報道した写真の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射地点のすぐそばにタグボートと見える船舶が捉えられた。この船舶がタグボートならば、北朝鮮が戦略潜水艦ではなく海底バージ船からSLBM水中発射実験をしたという疑惑提起が可能だ=連合ニュース

 北朝鮮が今月9日に公開した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)実験写真を巡り、情報当局の分析が交錯している。 実際に潜水艦から水中発射実験をしたのか、水中のバージ船を通じてのものかという問題だ。初めて報道した労働新聞の写真にはなかった発射現場の船舶が、後日に出た朝鮮中央テレビの報道の動画では現れた。

 情報が命である軍事分野では、写真のような証拠を基に相手の戦力を分析し評価する能力が極めて重要だ。 壬辰倭乱(文禄・慶長の役)での儒達山(ユダルサン)露積峰(ノジョクポン)や烏山(オサン)洗馬台(セマデ)の話のように、偽装と欺瞞は古からの情報戦術だ。 デジタル環境はサイバー空間を新たな戦場に拡張し、情報戦にも新しい姿を追加した。

2008年7月9日、イラン革命守備隊が公開した長距離弾道ミサイル発射実験の写真をそのまま載せたニューヨーク・タイムズ //ハンギョレ新聞社

 2008年7月9日、イランは長距離弾道ミサイル発射実験の写真を公開した。AFP通信は、イラン革命守備隊の広報機関である『セファニュース』から写真を提供され配布し、ニューヨーク・タイムズ、BBCなど世界の主要言論はこれを報道した。 だが、4機のミサイルが同時に発射成功した姿が写真に写っているが、これはねつ造された画像であることが明らかになった。 3機だけが発射に成功し、1機はミサイルと発射の火炎をそれぞれ“フォトショップ”で合成していたことが確認された。 コピーしてペーストしたことが明確なお粗末なフォトショップだが、当時世界有数の報道機関はこれを感知できなかった。意図的に公開する兵器実験写真とそのねつ造の可能性に対する理解と注意が不足していた。

 2013年2月14日、韓国国防部は北朝鮮が第3回核実験を強行すると、これに対する対応措置を発動した。「北朝鮮全域を打撃できる巡航・弾道ミサイルを実戦配備した」として、艦上発射写真をマスコミに公開した。撮影の時点に関するマスコミの質問に対して、当時国防部は「ミサイルの写真撮影時点は多くの情報を与えることになるので明らかにできない」と拒否した。 だが翌日、ハンギョレは写真は4年前の2009年5月22日に撮影されたものと報道し、国防部側は「どうして我々が非公開にしている内容を知ったんだ」と驚いて見せた。 取材の経緯は極めて単純だった。 国防部が提供した画像ファイルには撮影時点をはじめ様々な撮影情報が入っていたため容易に確認が可能だった。

2013年2月14日、国防部が北朝鮮の第3回核実験に対する対応措置として公開した写真。国防部は「北朝鮮全域を打撃できる巡航弾道ミサイルを実戦配備した」と艦上発射写真を公開したが、撮影時点の公表は拒否した。だが撮影時点は当該画像の撮影情報に入っていた //ハンギョレ新聞社

 「メディアはメッセージだ」と主張したマーシャル・マクルーハン(Marshall McLuhan)は、1962年に『グーテンベルクの銀河系』を出し、ラジオやテレビのような電子媒体の登場で“グーテンベルクの銀河”に象徴される文字中心文化の終焉を宣言した。デジタル時代は文字より写真のようなイメージが支配する世の中だ。 専門装備で高解像度写真や高画質動画を作っても伝送費用が高く稀にしか流通しなかった時代は終わった。誰もがデジタルイメージを享有し、便利なツールを利用して直接作り流通させられる。

 ハンガリー出身でドイツでバウハウスの教授を務め、現代写真芸術に大きな影響を及ぼしたモホリ=ナジ・ラースロー(Laszlo Moholy-Nagy)は、1930年代に「未来では文を読めない人でなく、写真を読めない人が文盲になるだろう」と予想した。

 日常で支配的であり依存性の高い技術は、その活用能力の保有有無が大きな格差につながる。 かつては文を読み書きする能力が大切だったので文盲から脱することが優先的な教育目標だったが、情報化時代の文解力はイメージが支配するデジタル・コンテンツに対する理解と活用能力だ。 最初の頃、フォトショップは主にデザイナーやイラストレーターたちのツールだったが、今はワードプロセッサーのように普遍的なツールになった。誰もがフォトショップの専門家になる必要はないが、デジタル イメージがフォトショップを通じてたやすく多様に再創作されるということは知っていなければならない。 デジタル写真は表面に見えるイメージだけでなく、撮影位置の緯度・経度、撮影時点、レンズ情報など多様なメタデータを持っているということも常識になっている。

 グーテンベルクの銀河で制度教育を終えた世代は、デジタルの銀河で新たに習わなければ、生きながらにしてますます理解し難い世の中に出会うことになる。 デジタル イメージ文解力もその一つだ。

ク・ボンクォン 人とデジタル研究所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/691684.html 韓国語原文入力:2015-05-18 15:29
訳J.S(2342字)

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