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[寄稿]地政学の反乱と朝鮮半島

登録:2015-05-04 08:15 修正:2015-05-22 08:46

 21世紀に入り世界は、グローバル化と地域経済ブロック化を通じ新しい世紀を飾るかに見えた。「地政学の世紀」が終わり「地経学の世紀」が近づくかのようだった。ところが、地政学の反乱であるのか、米国の「アジア回帰」が始まり、新たな地政学の危機が迫りつつある。

 第1次オバマ政権がスタートした後、アジアを歴訪したヒラリー・クリントン米国務長官は、中米関係を「同舟共済」(同じ船に乗って渡る関係)と述べた。発言の背景は米国発の経済危機にあった。中国は協力した。中米はバラ色の関係を映し出していた。その前のブッシュ政権時代、中米は最上の蜜月を謳歌していた。背景は9・11テロだった。危機が中米の友好関係の空間を広めた。中国主導の6カ国協議がされた背景でもある。

 危機が去るとすぐ、葛藤のリレーが繰り広げられた。結局、中米関係は同舟共済でなく「呉越同舟」と呼ぶほうが相応しいようだ。敵対関係にある呉越両国の人々は、同じ船で強烈な風浪に会い共に協力したが、危機が去ると元通りになった。

 オバマ大統領が打ち出したアジア再均衡戦略とアジア回帰戦略は、事実上、中国の浮上という力学構図変化に対応するためだ。米国はアジア太平洋地域の海洋勢力を中心に新たな版を組み立てている。別の見方をすれば、1950年代のジョン・ダラス米国務長官が打ち出した共産圏封鎖海洋ライン(島鎖線=Island chain)を再現している。だからなのか。経済協力の名前を帯びた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも地政学の色彩が重なる。米国が新しい地政学的危機を呼び込んだことだけは明らかだ。

 近代史以後の歴史を見ると、北東アジアで地政学が強調されより被害を受けたのは朝鮮半島だった。北東アジアの重要な戦争のほとんどが朝鮮半島問題から始まった。北東アジアの地政学ゲームの軸が朝鮮半島だったことになる。さらに別の見方をすれば、今日の地政学危機も北朝鮮の核ゲームが作りだしたものだ。

 その地政学が再び北東アジアを強打しようとしている。今回のその危機を朝鮮半島は避けることができるだろうか。今問題になっている地上配備型迎撃システムの高高度防衛ミサイル(THAAD)をめぐる論争は、韓国が体験する地政学的葛藤を早めるものと考えられる。ユン・ビョンセ外交部長官は、韓国の境遇を大国からラブコールを受ける“祝福”される状況と言った。皮肉にも北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記も似たような発言をしている。北朝鮮が地政学的劣勢を地政学的優勢に転換させ、大国を思うままに操っているというのだ。これは偶然だろうか。

 今まで朝鮮半島の地政学は「鯨の喧嘩で海老の背が裂ける」(強者の喧嘩に挟まれ弱者が被害にあうという意)という諺に集約された。しかし変わっていることがある。それは「海老の反乱」だ。韓国はすでに先進国の敷居を踏もうとしている。韓国のアジアインフラ投資銀行の参加は「海老が米中二つの鯨を飼い慣らした」とも比喩される。明らかなことは、韓国は少なくとも中級の鯨になっているということだ。北朝鮮も自らを「軍事強国、思想強国」という。単なる海老ではないだろう。しかし、分裂状態の韓国、北朝鮮が対決するなら話は違う。祝福ではなく再び災難になることにもなる。

 1880年代の清国駐日公使・黄遵憲(ファン・チュンセン)は『朝鮮策略』で、ロシアの南下を防ぐための「親中国、結日本、連米国」(親中・結日・聯米)策略を出した。朝鮮半島で以夷制夷(夷を以って夷を制す)地政学ゲームが始まった背景といえる。ゲームの結果は惨憺たるものだった。教訓は自明だった。

 不幸にも今の朝鮮半島は南北に分裂し、相手を敵国に設定して以夷制夷のゲームを行っている。鯨を呼んで戦わせるようなものと言えるだろうか。韓国と北朝鮮自ら“海老”の役割を果たすことになるのではないだろうか。

金景一北京大教授//ハンギョレ新聞社

 黄遵憲は朝鮮策略で、朝鮮が西洋文物を受け入れ自強を企てることを望んだ。だが、朝鮮は以夷制夷にばかり関心をもった。朝鮮が滅びたのは、自強の試みの欠如が大きく影響した。

 新しい地政学の危機は、すでに韓国で熱を帯びた論争を巻き起こしている。以夷制夷のパターンの連続とでも言おうか。大国の歩みに一喜一憂する姿に危機が垣間見える。韓国が進まなけれならない道は、北朝鮮との和解・協力を通して朝鮮半島の自強を企てることにありはしまいか。

金景一(チン・ジンイ)北京大教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-05-03 18:45

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/689557.html 訳Y.B

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