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[コラム] AIIBという大陸膨張、THAADという海洋封鎖

登録:2015-03-23 09:28 修正:2015-03-23 10:32

 中国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と米国の高高度防衛ミサイル(THAAD)問題を歴史的視点で省察してみたい。これは大陸勢力と海洋勢力の21世紀版激突であり、韓国は今、その衝突点に挟まれている。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)の概要 //ハンギョレ新聞社

 ユーラシアの歴史は遊牧勢力と定住勢力の争覇戦だ。草原の遊牧勢力と海岸の定住勢力の闘争史でもある。古代から中世まで大陸の草原を源とした匈奴、スキタイ、モンゴルなど遊牧勢力は、海岸の定住農耕勢力を蹂躪し続け、定住勢力へと変わっていく。中国の漢族も数千年に及ぶ西北のオランケ(蛮夷)との結合に他ならない。西側世界の大部分を構成するインドヨーロッパ語族にしても、黒海の北側沿岸から始まりヨーロッパやインドに散ったクルガンを源とする部族だった。

 遊牧勢力と定住勢力の争覇は、中国清王朝の康熙帝・乾隆帝の治世で、現在の新疆ウイグル地域のジュンガルの完全な征伐をして曲折を迎える。この征伐を通じユーラシア大陸中央の草原遊牧勢力は歴史の裏側へと入り込む。そこには銃砲という近代文明の力が作用した。

 草原の遊牧勢力に代表されるユーラシア大陸内部のエネルギーは大陸勢力に、定住勢力は海洋勢力へと転化した。大陸勢力の代表がロシアだ。ユーラシア大陸の覇権を巡り激突した19世紀の帝国主義覇権争覇の絶頂は、英国とロシアのグレートゲームだった。これは現代に入り米国とソ連の冷戦に変わった。

 地政学の父と呼ばれるハルフォード・マッキンダーは、ヨーロッパ文明はアジアの侵略に対抗した闘争の産物だと定義する。マッキンダーは「世界政治の中心軸地域はユーロ-アジアの広大な地域」とし、「古代には船では接近できず騎馬遊牧民により開かれた地域や、現在は鉄道網が張り巡らされる所だ」と指摘した。当時、英国などヨーロッパ列強が海路で勢力を拡張する速度に劣らぬほど、ロシアはユーラシア大陸内部で急速に領土を拡張させていた。ロシアを封じ込めるべきだとする地政学的戦略に基づく主張だった。

 マッキンダーが述べた通り、英国と米国につながる西欧海洋勢力はロシアとソ連を封じ込めることに成功した。米国のズビグネフ・ブレジンスキーも『巨大なチェス盤』で米国の戦略はユーラシア大陸内部を掌握する覇権勢力を許さないことだと強調した。こうした西欧海洋勢力の拡大はユーラシア大陸内部の有機性が徹底的に抑圧される過程でもある。特にユーラシア大陸海岸と内陸部は徹底的に分離された。マッキンダーが忠告した中心軸地域と周辺地域を絶縁させる戦略の結果だ。

チョン・ウイギル先任ム記者//ハンギョレ新聞社

 マッキンダーが唯一発表した論文『歴史の地理的中心軸』(1904年)は意味深長な言葉で締めくくられる。彼は中国がロシア領土を蚕食する憂慮を提起し、これは中国を圧倒的な地政学的覇権勢力に浮上させると暗示した。ソ連に代わる中国はすでに彼らの経済力と影響力をユーラシア大陸内部に投射している。

 中国の「一帶一路」政策は海上および陸上のシルクロードを復元し、分離されたユーラシア大陸内部と海岸の有機性を回復することを意味する。ケント・コールダー ジョンズ・ホプキンス大教授が語る「新大陸主義」とも言えよう。

 習近平体制発足以来、中国はアジアインフラ投資銀行で初めての果実を得ようとする。米国のヨーロッパ同盟国らと日本までこの銀行への参加を急いでいる。これに対し米国は伝統的な大陸封鎖政策の強化で対抗している。オバマ政権の「アジア回帰政策」はユーラシア大陸の太平洋沿岸封鎖に軍事力を強化することでもあり、朝鮮半島のTHAAD配備はその一環だ。自らばら撒いた金融危機から真っ先に脱出して力を回復する米国、ユーラシアに力を注ぐ中国の間のグレートゲームの出発点に朝鮮半島が位置している。

チョン・ウイギル先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.03.22 18:45

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/683372.html 訳Y.B

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