26日、仁川空港出入国管理所長はM氏を難民認定審査に付託しないことを決めた。「入営事実の通知に関する陳述に一貫性がなく、迫害と主張する内容も自国内の法律上の争いによる個人的な問題と見られる。 入隊を拒否して逃げたにも関わらず、合法的に発行されたパスポートとビザを所持しているし、自国の空港を問題なく通過した点が疑わしい」という理由だった。
■ 無法監禁施設の送還待機室
帰国できないM氏は戦うことにした。 戦いが終えられるまで、彼が留まらなければならない所は送還待機室(正式名称は出国待機室)だった。
送還待機室は入国できない者が留まる所だ。 大韓民国領土ではない。 国境内に入れなかった人々に韓国政府は責任を負わない。 民間業者である航空会社の役割だ。 2012年2月、仁川空港出入国管理事務所は関連機関らと会議を開いて「送還待機室は仁川空港航空会社運営協議会が運営・管理し、仁川空港出入国管理事務所は賃貸料だけを負担する」と決めた。
仁川空港の3階にある送還待機室は広さ330平方メートル。ここにはシャワー室、椅子、公衆電話、飲料カウンター、トイレ、テレビがある。 しかしまともなベッドや寝具はない。 一日二日留まって去る人が大多数であるためだ。
鉄門で堅く閉ざされており、出入りも自由でない。 公衆電話でのみ外部との疎通が可能だ。 さらに大きな問題は毎食チキンバーガーとコーラしか出てこない食事だ。 2011年に送還待機室に留まったことのあるエチオピア難民K氏も、約70日間にわたってチキンバーガーとコーラしか食べられなかったという。 なぜなのか。 外国人であるため韓国料理は食べられないと思い、ハンバーガーにメニューが決まり、ムスリムがいるからと鶏肉に限定されたというのが法務部と出入国管理本部側の説明だった。 法務部関係者は「現在はチキンバーガーだけでなくビーフバーガーも選択できる。本人が費用を負担すれば他のメニューも可能だ」と付け加えた。
最も深刻な問題は送還待機室は法的根拠のない“無法施設”だという点だ。 出入国管理法56条は、入国を拒否された者を最長48時間、一時保護できるよう規定している。 一時保護は外国人保護施設で行わなければならない。 ところがこの施設は、仁川空港国際業務団地にあり空港から遠い。 行き来するのに時間がかかり保安維持も難しい。 出入国管理事務所はわずらわしい外国人保護施設の代わりに出入国管理法が規定したまた別の手続き、送還指示書を活用してきた。 航空会社に文書を送りさえすれば、航空会社が自分たちの費用で適当に解決するため手軽なためだ。 政府から責任を渡された航空会社は、送還待機室という正体不明の民間拘禁施設にこれらの人々を閉じ込めてきた。