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映画『カート』でおばさん労組員を支えた労務士

登録:2014-11-26 20:49 修正:2014-11-27 07:04
キム・ジェグァン労務士//ハンギョレ新聞社

 「労務士先生、私、じきに辞めることになるかもしれません。でもね、やれるところまではやるつもりです。闘えるときに闘うのも悪くないと思います」

 キム・ジェグァン(45歳・写真)労務士は、2007年のホームエバーの非正規職のおばさん組合員の言葉が忘れられないと言った。当時、イーランドが運営していたホームエバーは、スーパーのレジなど非正規職労働者たちを大量解雇した。労働者たちはストライキで対抗した。キム労務士は24日『ハンギョレ』とのインタビューで、7年前の闘いを昨日のことのように思い浮かべた。「じきに辞めることになるかもしれないけれども、それでも明日は出てきますということじゃないですか。組合員たちの自我がそれだけ大きくなったんです。涙が出そうでした」。

 ホームエバーの非正規職解雇とこれに対抗した労働者たちの戦いを扱った映画『カート』には、労組委員長カン・ドンジュン役のキム・ガンウがストの正当性について労務士と対話するシーンが出てくる。映画ではわずか4~5秒に過ぎない。しかし、映画の中の労務士は、現実にはなんと512日間続いた長期ストをおばさん組合員たちと共にした。キム労務士がその主人公だ。

 キム労務士は“会社側の事件”は引き受けない、“労組側の事件”だけを代理する、という原則の下に「労務法人フィル」を運営している。公益弁護士にたとえて言えば公益労務士だ。

 2007年、おばさん組合員たちがソウル城山(ソンサン)洞のホームエバー・ワールドカップモール店を占拠した。「皆さんの権利はこうこうであり、これこれこういうのは不当だと話すと、おばさんたちの目の色が変わるのを感じました。占拠した売り場の内側には入ることもなかったし、品物一つ手を触れませんでした。飲み水一本も、外で買って飲んでおられました。正しいことをしていると信じ、そうであれば警察が連行するはずはないと思っていました」。当時、会社側は労働者の権利には無関心でありながら、マニキュアの色にまで干渉するほど細かく気を遣った。「組合員教育に行くと20~30代の組合員たちが集まってマニキュアを塗りながら笑い転げているんです。 『そんなに彼女たちはマニキュアが塗りたいのかな』と思うくらい。 聞いてみたら、服装の規定にマニキュアの色まで決められているというんです」。ホームエバーはレジ担当者たちに赤い口紅だけを付けさせた。『カート』でも、仕事を終えたレジ担当員がティッシュで唇を拭う場面が出てくる。

 同じイーランド系列でホームエバーと同様に非正規職解雇に遭ったニューコア労組に対する“教育”もキム労務士が担当した。スト労働者たちと会うことを遮断する警察を避けて、警察バスの下を這ったときは、背中が真っ黒になった。

 キム労務士は、2007年のストは正規職と非正規職の団結という経験も残したと語った。「労組幹部たちが裁判を受けるとき、判事がびっくりしました。この人たちはいわゆる活動家などではありませんでした。大企業に就職して、ただおとなしくしていれば昇進して楽に生きられた筈の正規職です。正規職が既得権を放棄して非正規職と、人間と人間として団結した経験が、それ以後あったでしょうか」

文・写真 チン・ミョンソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/665899.html 韓国語原文入力:2014/11/24 21:45
訳A.K(1590字)

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