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[コラム] 朴槿恵パラドックスと51%主権

登録:2014-11-13 00:49 修正:2014-11-13 06:43
オ・テギュ論説委員室長//ハンギョレ新聞社

『中央日報』のペ・ミョンボク論説委員は今年初め、朴槿恵(パク・クネ)政権1年を迎えて開かれたある外交安保政策評価セミナーに参加して、「東アジア パラドックス」(経済的には相互依存性が大きいが、政治・軍事的には葛藤が存在する状況を意味する)だけでなく「朴槿恵パラドックス」も存在するようだと発言した。 朴政権の外交・安保政策に対する専門家たちの評価は低いのに比べて、一般国民の評価は高いという矛盾した状態を指して使った造語だ。

 朝鮮半島信頼プロセス、東北アジア平和協力構想、ユーラシア イニシアチブの3点セットで構成された朴槿恵政権の外交安保政策に対し、専門家たちの間ではすでに昨年末から批判と失望の声が本格的に噴出し始めた。 「看板はもっともらしいが売る商品がない」(ソン・ミンスン元外交通商部長官)であるとか、「1階のない2階建ての家を作るようなもの」(チョン・セヒョン元統一部長官)という痛烈な批判はそうした認識の反映だ。これまで専門家たちのこうした声が市民権を得れなかったのは、一般国民との認識の差があまりに大きかったためだ。

 しかし最近になり、アジア パラドックスはそのままの状態だが、朴槿恵パラドックスは悪い意味で解消される兆しを見せている。朴政権の外交安保政策に対する一般国民の認識が次第に専門家側に近寄っているいるためだ。

 イ・サンイル セヌリ党国会議員が3日、国会対政府質問の時に公開した外交・国防・統一の各部と国会出入り記者111人を対象にしたアンケート調査は示唆に富んでいる。 この調査で記者たちは、朴政権の外交・安保・統一政策に対して54.3%(58人)が否定的に評価し、肯定評価は22.5%(25人)に過ぎなかった。 記者たちが専門家と一般国民を媒介する役割という点を考えれば、このような雰囲気が近い将来に国民の間で広まるだろうといっても間違った推測ではないだろう。

 南北関係が悪化する中で、北朝鮮と米国、北朝鮮と日本、中国と日本がそれぞれの実利次元で活発に関係改善を試みていることも、朴政権の外交安保担当者を一層窮地に追い詰めることになるだろう。 だが主権の真髄である戦時作戦統制権(戦作権)を事実上永久的に米国に捧げた行為と較べれば、私はこれらの問題はそれほどの問題ではないと考える。

 次の二つの事例は戦作権の喪失が国民の生命と国家の威厳にどれほど決定的な害悪を及ぼすかをよく示している。

 一つは壬辰倭乱(日本では文禄慶長の役)の時のことだ。 壬辰倭乱を専攻した史学者ハン・ミョンギ明知大学教授の言葉によれば、壬辰倭乱の末期である1596年頃、慶尚道の海岸に駐留中だった倭軍(豊臣軍)が近隣の朝鮮人の村を襲撃し乱暴を働いたが、朝鮮軍は見ていながら制裁できなかった。 作戦権を握っていた明軍指揮部の沈惟敬(シム・ユギョン)が倭軍に身分を保障する証書を発行し、朝鮮軍が倭軍を攻撃できないようにしたためだ。

 もう一つは、ソン・ミンスン元外交通商部長官が1990年代末にジュネーブで開かれた韓朝米中4か国協議代表団の一員として参加した時に体験したエピソードだ。 当時、北朝鮮代表は会談の席に韓国の代表が座ることは認めたが、対話中は目も合わせずに米国代表だけを相手にしたという。作戦権もない国と平和体制の構築や軍事的緊張緩和のような話をすることはできないという意味で意識的に無視したのだ。

 “安保保守”は戦作権の移管はすなわち韓米同盟の破棄であり「100%自主論」であるかのように追い立てている。 だが、実状はまったくそうではない。 現実世界では同盟とは言っても100%の同盟、自主と言っても100%の自主は存在しえない。保守と進歩などとは関わりなく、自主と同盟の適切な配合を通じて国の安全と繁栄を図ることが現実的で賢明な方策だ。 ただし、その配合において、51%の権利を誰が行使するかは大変に重要だ。 それにより主権国であるか否かが分かれるためだ。 甲と乙が合作会社を作り、互いに経営の主導権を行使するために51%の株式を確保しようと努めるのと同じ論理だ。

 51%の主権行使まで放棄して、朝鮮半島と北東アジア平和の主役を自認することが、もう一つの「朴槿恵パラドックス」であることを、ご本人はご存じかどうか分からない。

オ・テギュ論説委員室長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/664173.html 韓国語原文入力:2014/11/12 23:32
訳J.S(1891字)

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