チョ・ヒヨン ソウル市教育長当選者
候補登録時には4%台の支持率
討論会で具体的公約を出して好評
コ・スンドク実娘フェイスブックが広がり急変
保守2陣営候補 内輪もめ
チョ候補の息子も加わり逆転
「(チョ・ヒヨンは) 9回裏2アウトの敗色濃厚な状況で登板した4番打者」というキム・サンゴン前京畿道(キョンギド)教育長の‘予言’は的中した。 誰も予想できなかったがチョ・ヒヨン(56)ソウル市教育長候補は奇跡のような逆転劇を生み出して‘進歩ソウル市教育長’の夢を現実にした。
チョ候補は公式候補として登録した先月15日に公表された<中央日報>世論調査で4.1%の支持率を得るに終わった。 選挙運動終盤の5月29日世論調査でも17.4%で1位より10%以上の遅れをとった。 そのようなチョ候補が‘大逆転劇’の主人公になったのだ。
社会学者であり聖公会(ソンゴンフェ)大教授であるチョ候補が、民主・進歩指向市民社会団体の推戴を受けて‘単一候補’に選出されたのは3月16日だ。 その時でも彼は進歩学界と市民社会運動側では有名人だが、一般有権者には見慣れない人物に近かった。 ‘低い認知度’は選挙運動序盤に多くの人々が彼の当選可能性を高く見なかった核心理由だ。 だが、チョ候補に対する学界と市民社会の支持は確実だった。 ハン・インソプ ソウル大教授は「チョ・ヒヨンは真正で熱情的で、その一方であたたかく穏やかで謙虚だ」として「2時間会議すれば他の人は上の空で臨むのに、彼だけは一人熱心に傾聴してメモをとっている」と話した。 権威と偽計でない友達のような疎通のリーダーシップを持った人物という評価だ。 大学時期、緊急措置違反の疑いで拘束された彼は、再審で無罪判決を受けた時、補償金5000万ウォン全額をアジア市民運動家のための基金に拠出した。
彼はすでに‘民主進歩単一候補’だったが、参与政府教育副総理出身のユン・トコン氏が一歩遅れて競選に飛び込んだために基盤が揺れた。 やはり‘低い認知度’が口実になった。 セウォル号惨事で候補を知らせる機会も不足した。 先月15日の支持率はこれをそのまま反映したものだ。 紆余曲折の末、ユン・トコン候補が辞退して民主進歩単一候補の席を守ったが、放送出演などで有権者の間に認知度が高いコ・スンドク候補とは比較にならないほどの遅れをとった。 5月20日の放送3社世論調査でもチョ候補の支持率は10.2%で3位であった。
先月22日に公式選挙運動が始まって、ソウル市教育長候補らも有権者の関心を集め始めた。 チョ候補は教育市民団体の候補招請公約討論会に最も具体的な公約を出して高い評価を受けた。 候補討論会などで革新学校、親環境無償給食、自立型私立高などの政策競争で先んじた。 しかし支持率順位は微動だにしなかった。
選挙を10日後に控えてチョ候補はコ候補の子供のアメリカ永住権疑惑を提起した。 反転のためのそれなりの賭けに出たわけだが、これに対しては進歩改革陣営でも評価が交錯した。 反響も大きくなかった。 親環境無償給食を巡ってソウル市長候補らの間に論議が広がったが、これさえ教育長候補らの間に差別性を表わすのには限界があった。
しかし学生・労働団体・教育界などの支持宣言が相次ぎ、徐々にチョ候補の性格と政策などが知らされるや5月29日<朝鮮日報>世論調査で支持率が17.4%に上がった。 初めてムン・ヨンニン候補(16.7%)を抜いたが、コ・スンドク候補(28.9%)には相変らず12%の遅れをとっていた。
先週末ソウルの世論を劇的に揺るがした予想外の事態が起きた。 コ候補の実娘が、コ候補には‘教育長の資格がない’というフェイスブック文を上げると、激烈な連鎖反応と共にソウル市教育長選挙が今回の6・4地方選挙の最大関心事に浮上した。 翌日ムン・ヨンニン候補はコ候補とその娘を‘背倫’という極言を使って非難し‘逆風’を自ら招来した。 コ候補は‘妻の実家に子供を奪われた父親’としてムン候補側の‘工作政治’と正面対立した。
保守候補らのこのような様子は、チョ候補の対応をむしろ引き立させた。 チョ候補は二候補の極言攻防から一歩身を引いて‘政策競争’を訴えて自身の公約を知らせることに力を注いだ。 それに先立ちチョ候補の次男が父親の普段の顔を知らせる文をオンラインに上げたこともチョ候補に対する有権者の関心と好感を高める契機になった。 チョ候補の出馬を力の限り止めようとした中学教師の妻キム・ウイスク氏も選挙運動期間にチョ候補の脇を守った。
セウォル号惨事で家族に対する関心が高まる渦中に、コ候補の家族史が赤裸々に露出したことを契機に、教育長候補らの性格が隅々まであきらかになったことが有権者の選択に大きな影響を及ぼしたと分析される。 チョ候補は5日0時40分、ソウル新門路(シンムンロ)の選挙事務室で行った記者会見で「私たちの教育をセウォル号以後、根本的に変化させろとの要求として受け入れる」と当選の所感を明らかにした。
イ・スボム、チョン・ジョンユン記者 kjlsb@hani.co.kr