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「検察も証拠を隠匿し妹に虚偽陳述を誘導」

登録:2014-03-13 10:02 修正:2014-09-05 16:01
国家情報院の証拠ねつ造が明らかになった‘ソウル市公務員スパイ事件’の主人公ユ・ウソン氏が12日昼、ソウル瑞草区(ソチョグ)瑞草洞(ソチョドン)で記者会見に参加した後‘証拠ねつ造事件’の参考人身分で検察の調査を受けるために歩いて向かっている。 キム・ソングァン、パク・ジョンシク記者 anaki@hani.co.kr

 ユ・ウソン氏の妹が陳述を翻意するや "そんなことをしてはいけない" と制止し、ユ氏のノートパソコンから無罪を立証する証拠写真を発見しても隠して‘ソウル市公務員スパイ証拠ねつ造事件’で中国公文書の偽造を主導した国家情報院に劣らず、検察も虚偽陳述を誘導したり検察に不利な証拠は隠すなど捜査・裁判の過程を通して証拠ねつ造・隠匿に加担していたことが明らかになっている。 また、検察は国家情報院が中国で非公式・非正常な方法で文書を入手した事実を知っていながら、合法的に得たかのように裁判所に嘘をつきもした。

■ "ありのままに話しなさい" と言いながら…

 12日<ハンギョレ>の取材結果を総合すれば、国家情報院による調査で‘兄さんはスパイ’と話したユ・ウソン(34)氏の妹ユ・カリョ(27)氏は、以後の検察調査で 「国家情報院でした話は虚偽陳述だった」と話したが、検事がそれを無視して国家情報院の調査内容に合わせて陳述を誘導した情況が明らかになった。

 ユ・カリョ氏は昨年5月20日と27日、ユ・ウソン氏の1審裁判に証人として出席し、検察の調査過程について証言した。 ユ・カリョ氏の証言を見れば、その年の3月に検察調査でイ・某検事が "国家情報院には知らせないからありのままに話してみなさい" と繰り返し薦め、ユ氏は "国家情報院でこれまでした話は全て虚偽陳述であり偽りだ" と打ち明けた。 ユ氏は国家情報院で‘兄さんが北韓に密入国したし、兄さんに頼まれて自分が北韓の保衛部に脱北者名簿が入ったUSBを伝達した’という趣旨で話したが、それを全面的に覆したのだ。

 ユ・カリョ氏は 「陳述を翻意するとカン・某捜査官は驚いた顔で外に出て行きまた入って来たし、イ検事もやはり慌てた顔で私に‘そんな風に述べてはいけない。 そうすれば助けようとしても助けられなくなる’と話した」と明らかにした。 これについてユ・カリョシは、いわゆる‘国家情報院の大きい叔父さん’(捜査官)と口裏を合わせた通り‘兄さんはスパイ’という趣旨に再び陳述を変えたと話した。 検事が国家情報院の調査内容どおりに陳述を継ぎ合わせようとしたと見ることができる。

■被告人に有利な証拠は隠す

 検察は1審裁判の時、ユ・ウソン氏に有利な証拠を発見しておきながら、それを隠した。 検察はユ氏が2012年1月22~23日に中国で通話していた記録をその年の12月に確保した。 それでも翌年2月にユ氏を起訴する際に、1月23日に北韓へ入国したと公訴事実に書いた。

 ユ氏がその期間に中国で撮った写真もノートパソコンに保存されていた。 無罪推定を可能にする資料であった。 捜査初期に国家情報院はユ氏のノートパソコンを押収してハードディスクをコピーして行った。 ユ氏は国家情報院の調査で "ノートパソコンにその期間に中国で撮った写真が何枚かある。 それを見なさい" と訴えたが、起訴・裁判過程でも検察はこれを証拠として出さなかった。 その上、ユ氏が後からノートパソコンを確認した時にはデータが全て削除されていた。 ユ氏は国家情報院が資料を消したのではないかと疑っている。 ユ氏はやっとの思いでノートパソコンの内容を復旧し、中国で撮った写真2~3枚を復活させ1審裁判末に証拠として出した。

 検察が‘ユ氏が北韓で撮ったもの’として裁判所に出した写真も位置情報が中国であることがわかった経緯がある。 ユ氏が中国にいたという事実が明確になるや、検察は裁判が終わる頃になって北韓に行ったという日を修正し起訴状を変更した。 被告人に有利な陳述と証拠であっても必ず裁判所に提出しなければならないのは検事の義務なのに、それを無視したわけだ。

 2002年最高裁は性暴行被害者の下着から被告人ものではない別の遺伝子が検出されたが、この鑑定結果を証拠として出さなかった検事の行為が違法だと見て、国家に賠償するよう判決した。 当時、最高裁は「検事は公判過程で被告人に決定的に有利な証拠を入手しておきながら、それを裁判所に提出せず隠したとして、そのような検事の行為はとうていその合理性を肯定できない水準に達しており違法だ」とした。

 ユ・ウソン氏は「妹が検事に自分はスパイでないと話したのに、検事は‘そんな風に言えば、助けてあげられない’として、再び虚偽の陳述を誘導し、自分が中国で撮った写真は裁判所に提出すらしなかった」と主張している。

■裁判所に嘘も

 ユ・ウソン氏が1審でスパイ容疑について無罪を宣告されると、検察は昨年11月1日控訴審裁判所にユ氏が2006年5月27日に正常な方法で中国から北韓に入ったという内容の出入境記録を提出した。 この日、裁判長が「(出入境記録を)公式的なルートで入手したのか、私的なルートで入手したのか」と尋ねると、検事は 「公式的なルートを通じて受け取った」と話した。 だが、すでに中国吉林省公安庁が最高検察庁の刑事司法共助要請に対して‘出入境記録を発行した前例がない’として拒否した後であった。

 検察は昨年12月3日に裁判所に出した意見書でも "最高検察庁が中国吉林省公安庁に出入境記録を要請する公文書を発送した後、(この公文書により)和龍市(ファリョンシ)公安局が提供した" と明らかにした。 吉林省公安庁が司法共助を拒否したにも関わらず、あたかも最高検察庁が吉林省公安庁に送った公文書により和龍市公安局が文書を公式に発行したかのように巧妙に話を作ったわけだ。 国家情報院・検察は証拠ねつ造疑惑に火が点いた後になってから公式手順を踏んだものではないと言葉を変えた。

 昨年11月6日の裁判でも検事は「外交チャンネルを通じて(和龍市)公安局がユ氏の)出入境記録を発行したのは事実という公文書を瀋陽総領事館を通じて受け取った」と話した。 だが、検察が和龍市公安局の発行事実確認書を受け取った日は11月27日だった。

■‘身内’を処罰できるか

 検察の証拠隠匿などの行為は検察であることを自ら放棄し刑事司法体系を崩壊させる行為だ。 また、国家保安法12条(誣告・ねつ造)は "刑事処分を受けさせる目的でこの法の罪に関して誣告または偽証をしたり証拠をねつ造・隠滅・隠匿した者" を処罰するよう定めている。 スパイ罪で他人に処罰を受けさせようと証拠をねつ造・隠滅・隠匿すればスパイ罪と同じ刑量の処罰を受ける。

 検事たちの証拠ねつ造・隠匿と関連した疑惑は、ソウル中央地検捜査チーム(チーム長ユン・ガプクン)が最終的に糾明しなければならない事案だ。 検察捜査は中国公文書偽造の経緯を明らかにし、そこに国家情報院が組織的に関与したかを把握した後、検事たちがそれにどれくらいかかわったのかを糾明する方向で進行されるものと見られる。 検察関係者は「身内を庇うようなことは無いと思う。天地神明に誓って許されない。 捜査と関連して(検察の)違法な事案が明らかになれば、むしろ一層苛酷に処罰する」と話した。

 だが、検事たちの関与事実が明らかになれば、検察には致命打になりかねないので、果たして検事たちを処罰できるかと疑う視線が多い。

イ・ギョンミ、キム・ウォンチョル、キム・ソンシク記者 kmlee@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/627960.html 韓国語原文入力:2014/03/13 08:35
訳J.S(3299字)

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