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[ハンギョレ21 第989号] 左翼事犯 申告し、愛国民族愛認証を受けよう!

登録:2013-12-02 21:07 修正:2013-12-03 07:35
ソウル地下鉄2号線江辺(カンビョン)駅内に設置されたスパイ・左翼事犯などに対する申告電話番号を知らせる大型広告看板の前を市民が通り過ぎている。ハンギョレ カン・ジェフン

 今春、30代の会社員キム・ジョンミン(仮名)氏は忙しい時間を割いて‘身上はたき’に没頭した。 国際ハッカー集団として知られた‘アノニマス’が公開した北韓の対南宣伝サイト‘我が民族どうし’会員情報をインターネットの検索窓に一つ一つ入れて個人ソーシャルネットワークサービス(SNS)アカウントを探した。 ‘社会的に赤い’と思われる文が残されたアカウントについては国家情報院ホームページに入り、スパイ・左翼事犯として申告した。 誰かとやりとりした対話から推察したのだが、アカウントの主人が北に行ってきたような感じがしたと書き込んだ。 ‘赤い’の基準は曖昧だ。 "‘これは政府が何かを止めさせようとする陰謀’ ‘はやく統一しなければならない’ ‘米軍を撤収させなければならない’と主張する、事実抜きで扇動する人々が問題だ。 表現の自由は尊重されなければならない。 それでも度が過ぎたケースが多い。"

"国家情報院は素晴らしい所"

 インターネット コミュニティ‘日刊ベスト貯蔵所’(イルベ)会員だという彼にとって、このような人々は大韓民国の安定を脅かす存在だ。 「我が国は主な敵である北韓と対峙している状況だ。 スパイや武装共産軍はあまりいないだろう。 この頃、誰が銃を持って降りてくるというのか。 従北勢力が問題だ。 国家がすることに対して何でも嫌で反対することを民主主義だということは誤りだ。」 ‘我が民族どうし’会員を申告した後、国家情報院から‘絶対時計’を受け取った。 絶対時計とは、国家情報院が優秀申告者や一般人に記念品として支給する腕時計で、前面には‘NIS’、裏面には‘大韓民国国家情報院’という文面が刻印されている。 絶対時計を受け取った一部のネチズンは、認証写真をコミュニティ サイト掲示板などに上げたりもする。 「マスコミで国家情報院が素晴らしい所として表現されているじゃないですか。 年齢が少し高ければ、そこが安全企画部であり恐ろしい機関だが、ティーンエージャーにはすばらしいところであるわけだ。 ‘大韓民国国家情報院’とクッキリ書かれた時計を持って、ちょっと誇らしげにしたりする。」 絶対時計の他にもマウス、ツメ切りセット、ボールペンなどが記念品として支給される。

 国家情報院は今年1月から10月までに申告されたスパイなど国家安保関連申告件数が4万7千件余りだと明らかにした。 政府がスタートして1年にも満たない期間の申告件数が盧武鉉政府期間全体での申告件数の8倍を越える。 李明博政府の時、申告件数全体の半分も追い抜いた。 朴槿恵(パク・クネ)政府の公安・従北追い込みがスパイ申告の急増を通じても確認されるわけだ。 キム氏の申告もその内の一つだ。 国家情報院が<月刊朝鮮> 2013年3月号に提供した資料を見れば、2003年から2008年までは一年に1千件内外だった申告件数は、2009年の3560件を皮切りに2010年1万2158件、2011年2万9683件、2012年4万712件に増えた。 法務部が国会に提出した資料を見れば、国家保安法違反容疑で立件された人々は、2013年1月から9月までで79人で、この内 国家情報院が検察に送検した数は15人だ。 立件者79人のうち起訴された人は34人だ。 急激に増加したスパイ申告件数に比べて起訴者数は2008年の27人と比較して大きく増えていない。

 インターネットでは自身と考えが異なるネチズンに向かって国家情報院申告で‘威嚇’する文を探してみることができる。 あるネチズンは去る10月、ポータルサイトに残した文で "私も愛国保守なのに、誰かが国家情報院に申告した。 申告が処理されるか気になる" と吐露した。 イム・スンス(38)氏はこの頃、監視を受けて生きているという感じを拭えない。 慶煕(キョンヒ)大で今年の1学期から教養授業‘資本主義早わかり’を講義してきた彼は、去る9月に学校の大学生委員会から自身が国家情報院に申告されたという便りを伝え聞いた。 この学校の1年生といわれる申告者は、教養授業の一部を開設する大学生委員会や学校行政室などに電子メールを送り、申告の事実を知らせた。 反資本主義および反米思想を持っていて、民主労働党で幹部として仕事した経験があるということがイム氏を申告した理由であった。 彼は2011年末、民主労働党が国民参与党などと合党した時に脱党し、以後は党籍がない状態だ。 "申告者が学校機関に堂々と知らせたのは、政府機関である国家情報院も‘言葉’と‘文’だけで人を逮捕するから、自分も当然に‘言葉’と‘文’を理由に申告できるのではないかで感じているようだ。" 酔って大統領をののしって、誰かの申告で捜査機関に知らされて処罰まで受けたという‘マッコリ保安法’の亡霊が依然として飛び交っているということだ。

"左翼事犯はあっても右翼事犯はないのか"

 国家情報院が申告を促す対象は、司法的有無罪を別にして非常に広範囲だ。 会社員キム・ウンジュ(34・仮名)氏は去る10月、地下鉄で気にかかる放送を聞いた。 ‘国家情報院はスパイ、左翼事犯、国際犯罪、テロ、産業スパイ、サイバー安保脅威 申告・相談のための111コールセンターを運営しています。’ キム氏は「‘左翼事犯’という単語が気になる。 左翼事犯はあるのに右翼師範はないということなのかという疑問も抱いた」と話した。 現在、ソウル地下鉄1・2・3・4号線の電車では一日1300回、5・6・7・8号線では一日1500回、国鉄では一日1700回ほど、このような放送が流されている。 2000年代に広報放送では使われなかった‘左翼事犯’という単語が、ウォン・セフン前国家情報院長就任以後の2010年2月に復活した。 ‘111コールセンター’ホームページにも左翼事犯という用語が使われているが、左翼事犯の疑心類型を見れば△ツイッター・フェイスブック・me2day等を通して北韓体制を称賛したり暴力革命を宣伝・扇動する不純内容を伝播する人△北韓が運営するサイトまたは海外親北韓サイトに許可なく会員加入する人△大学卒業後にも学生会活動に関与して共産主義理論や主体思想などの意識化教育を指導する人△反米・反政府現場周辺でデマをまき散らしたり暴力行使を誘導する人なども含まれる。

 2010年シン・某氏は「左翼事犯という用語が国民のレッド コンプレックスを刺激して、地下鉄放送により思想と良心の自由を侵害されている気がする」として、国家人権委員会に陳情を出した。 翌年6月、人権委は全院委員会を開き該当陳情が人権侵害に該当しないという決定を下した。 人権委は決定文を通じて「‘左翼事犯’用語を使った広報放送は、思想転向制度のように思想を変えなくてはいけないという圧力行使ではなく、このような放送を聞いて、市民が左派思想を持ったという理由だけで法的処罰を受けるかもしれないと誤解する可能性もきわめて低い」と説明した。 当時、非公開で進行された全員委の会議録を見れば、ヒョン・ビョンチョル委員長を除く人権委員10人中4人が‘左翼事犯’用語の使用に問題があると指摘した。 彼らは少数意見を通じて "深刻な理念対立の影響で多様な思想的価値を受け入れられない現実で、このような用語使用は左派的価値観を持つことに対して犯罪視する偏向的認識を与える恐れがあるので、偏見と差別を助長する用語に代えて価値中立的で明確な用語を使うよう勧告しなければならない」と明らかにした。 論争過程である委員は「交通で事犯がたくさん起きるから交通事犯と言うように、左側の考えを有している方々の中でこのようなこと(法律違反)が起きるので左翼事犯で表示したのではないか」という常識外の発言もした。

少数意見 "偏見助長用語の代わりに明確な用語を使うべき"

 ハン・サンヒ建国(コングク)大法学専門大学院教授は「‘左翼事犯’という曖昧な単語は、国家が公式に使う用語ではない。 特に犯罪人を集団化する場合、非常に狭い概念を使うべきなのに、このような用語使用は国民を分裂させること」と説明した。

パク・ヒョンジョン記者 saram@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/613590.html 韓国語原文入力:2013/12/02 17:48
訳J.S(3663字)

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