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為替レートによって動く物価…ウォン高・低物価基調 長引く公算

登録:2013-11-03 23:57 修正:2013-11-04 07:06
先月31日ソウル中区(チュング)明洞(ミョンドン)の外換銀行本店ディーリングルームの電光掲示板にウォン-ドル為替レートが前取引より0.5ウォン上がった1060.7ウォンを表示している。 ニュース1

経常収支 黒字基調 持続
新興国通貨とは差別化された地位など
ウォン貨 強勢 当分続く見込み

 経済学教科書の原則的な説明に従えば、物価上昇は供給側の衝撃が問題になる場合を除けば、基本的に総需要の変化と関連した現象だ。 好況期に需要が増加し経済が潜在生産水準に到達することになればインフレーション圧力が高まる。 物価不安に対応するための中央銀行による緊縮は、需要を抑制しながら経済は不況に進入し、インフレーション圧力は再び低くなる。 すなわち好況期には高物価、不況期には低物価現象が現れるのが一般的だ。

 ところでこの間、わが国の経済で物価と景気の流れの関係はこれとは正反対の姿を見せてきた。 不況期に該当する2001,2003,2008年に物価上昇率が高く、好況期であった2000,2002年、そして4~5%台の堅調な成長勢を見せた2005~2007年の間には物価も安定していた。 若干の誇張を交えて言えば、スタグフレーション(低成長-高物価)とコルディラクス(高成長-低物価)がかわるがわる現れたわけだ。

 典型的な需要牽引型インフレーションと正反対のこのような特徴はなぜ現れるのだろうか? その理由は為替レートと物価の間の関係に求めることができる。 我が国の経済は好況期に輸出好調で経常収支が黒字を示し為替レートが下落する傾向があり、反対に不況期には輸出不振にともなう経常収支赤字で為替レートが上昇する傾向がある。 好況期の為替レート下落(ウォン高)は輸入物価の下落要因として作用して国内消費者物価を安定に導き、反対に不況期の為替レート上昇(ウォン安)は輸入物価の上昇要因として作用して国内消費者物価を不安定にさせる。

 まさにこのような要因により‘好況-為替レート安定-物価安定’、‘不況-為替レート上昇-物価不安’という現象が現れることになるわけだ。 要するに我が国の経済で為替レートの変動は消費者物価に大きな影響を及ぼす反面、国内需要は物価に制限的な影響を及ぼしたと見られる。

 消費者物価のこのような動きは高い輸出入依存度に起因する。 原油と天然ガスなどをはじめとする多くの原材料を輸入に依存している状況で、為替レートが輸出景気に左右される結果として発生する現象だ。 このような構造では不況期に物価不安が深刻化されるので庶民層が体感する物価負担は一層加重される傾向があり、これは政府の物価政策が景気状況により周期的な懸案として浮上する理由でもある。

 しかし最近になって景気の流れ、または成長率と物価の間のこのような関係は顕著に弱まった。 低成長局面が持続する中で消費者物価もほとんど1年連続で2%以下の低水準に留まっている。 我が国経済の高い対外依存度に変わりはないにもかかわらず物価と成長の間の関係がこのように‘教科書的な’姿に変化したのは、最近の為替レートの動きと密接に関連している。 ウォン-ドル為替レートは昨年下半期から最近まで粘り強い下落傾向を見せているが、このようなウォン高現象が輸入物価の下落を通じて国内物価安定に影響を及ぼしている。 ウォンの持続的堅調は一次的には経常収支黒字のおかげであり、また最近の国際金融市場不安にともなう新興国通貨の劣勢とは異なり韓国経済の良好な根本体力が浮上しながら資金流入要因として作用しているためだ。

 要するに最近の物価安定は他の新興国通貨と比較されるウォン貨(韓国ウォン)の差別化された動きに大きく起因している。 これを根拠にウォン貨が安全資産の地位を取得しているという主張も提起されているが、これはまだ性急に過ぎる主張だ。 相対的に小規模、高対外依存度、脆弱な内需などの韓国経済の特徴はウォン貨が安全資産にはなりにくくさせる要因と見える。

 しかし直ちにウォン貨が安全資産になりはしなくとも、最近のウォン高の主な要因、すなわち経常収支黒字基調および新興国通貨と差別化されたウォン貨の動きなどは、当分持続する可能性が高い。 まず今年末に予定されている国際収支統計基準変更で経常収支黒字幅は15%内外増えると推定されているが、これは単純な統計上の変更とは言え、外国人投資家にはウォン貨の差別的な魅力を浮上させる要因になるだろう。 更には主力輸出企業の高まった海外生産比重とそれによる部品および原材料輸出の拡大などにより経常収支の黒字が基調的に定着する可能性が提起されていて、世界景気の改善にともなう造船受注拡大などもウォン高要因として占われている。

 以上の要因によってウォン高基調が続くならば、この間我が国の経済に現れた成長と物価の間の典型的な関係も変化するだろう。 好況、不況を問わず低物価基調が維持されるだろうし、このような状況では低物価だけでなくウォン高負担などにより通貨政策当局も金利引き上げにより一層慎重になりうる。 これは現在低物価-低金利基調が思ったより長びく可能性があることを意味する。 また、日本で日本円が安全資産になる中で現れた日本円強勢現象が内需バブルの形成と崩壊をたどりながら長期デフレーションを惹起した要因中の一つとして作用したという点も教訓としなければならないだろう。

イム・イルソプ/ウリ金融経営研究所金融分析室長

https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/609666.html 韓国語原文入力:2013/11/03 21:04
訳J.S(2439字)

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