世間の大部分が '乙' なのに…
強者が弱者を踏みにじる
社会システムに対する不満表出
"財閥改革など巨大談論ではなく
身近な話なので他人事とは思えなかった"
"世の中のすべての '乙' たちは胸の中に怒りや挫折のようなものを持っている。 ところがそれを表現することも出来なかった。 そうすれば切られてしまうから、被害を受けるから。"
ある製薬会社の営業社員パク・某(34)氏の呼び掛けには‘甲の横暴’に皆で怒る庶民の心が溶けている。 多くの市民は‘南陽乳業営業社員の悪口・押し込み販売波紋’であらわれた‘甲の横暴’に怒り、問題の営業社員もやはり自分たちと変わりない '乙' に過ぎないのに胸が痛むと語った。 市民の怒りの底辺に敷かれているのは乙の哀しい境遇に対する共感だった。
ホン・テファ映画産業労組組織局長はこれを‘食物連鎖論’で説明した。 「スーパー甲がいて、甲がいて、乙がいて…このような形態のようだ。 スーパー甲は甲を、甲は乙を固く締めつける方式で生き残るということだが、とても間違った方式ではないか。 映画界では投資社がスーパー甲、投資社にしばられざるを得ない甲が製作会社、そして残りの現場スタッフは全員が乙だ。 4大保険、標準賃金などを要求すれば製作会社は投資社を言い訳にする。」
ある映画製作社の幹部は「私たちの自画像のようで悲しい思いがする」と語った。 彼は「私たちの社会ではある人が甲であると同時に乙なのではないかと思う。 南陽乳業の営業社員も自身が乙の立場である時を考えずに行動したか、あるいは少なくともスーパー甲から甲の立場を守るために乙を脅したのだろう。 乙の時に被った悲しみを甲になった状況では他の乙で晴らしてみようとすることもありうる」と話した。
このような現実を強要する経済構造に対する批判的省察も共感を広げていた。 経済民主化や財閥改革のような巨大談論ではなく、市民がより一層共感できるという意見もあった。 会社員イ・ボラム(34)氏は「悪口を言った営業社員より、私たちの社会が動いているシステムに腹が立った。 代理店の社長も辛いだろうが、営業社員もさぞかし実績圧迫に苦しめられたために非人間的に営業したのだろうと思った」と話した。 銀行員チェ・某(46)氏は「経済民主化や財閥改革は自分とはちょっと縁遠い問題だと感じていた。 だが、誰でも職場生活をしていれば甲乙関係に接するので、他人事とは思えない。 こんなにまで公憤が起きたのはそのためのようだ」と話した。 小さなアクセサリー工場を営むキム・某(41)氏は「代理店が本社から商品を買うのではないか。 本当は代理店が甲なのに、どうして営業社員が滅びてしまえ等と言えるのか」と反問した。
共感を越えて甲が掌握した社会で抑えられてきた不満を爆発させる人も多かった。 ある会社の営業社員であるキム・某(37)氏は「‘本当に強い奴’が弱者を踏みにじれば、怒りを越えて諦めもする。 仕方ないから、手の打ちようもないことだからね。 だが、今はコメントのような意見表明が比較的容易になった。 それだけでなく、もうこれ以上我慢できない状況に達したこともある」と話した。
「人生は乙そのものだ」というある会社の営業社員チェ・某(36)氏は「会社では部下職員として、外では営業をしているので、どこにいても乙だ。 だが、本当に甲と言える人はどれくらいいるだろうか。 かくれていてよく見えない本物の甲の更に猛烈な横暴はあまり感じられなくとも、このように直接的に目に見える不満が初めて提起されたようだ」と話した。
共感に始まった怒りではなくとも甲の横暴という非常識な状況に拒否感を感じる市民も少なくなかった。 4才の娘をもつ主婦チン・某(33)氏は「娘が南陽乳業の乳製品が好きだったが、この事件を見てからその製品に手が伸びなくなりました。 子供たちの食べ物を作るところで営業していながら、どうして悪口まで言ってさもしく汚い商売ができるのか、本当に非常識だ。 うちの子に食べさせるものは、きれいで優しい人々が作ったものにしたい」と話した。 大学生チョン・某(26)氏も 「他のものはともかく、南陽乳業の商品は食べたいと思わない。 自分のお金で食べ物を買うなら、このような問題のない会社のもにする」と話した。
一方では市民が群衆心理で過度に反応しているという意見もあった。 会社員ソ・某(32)氏は「より大きな本質的問題には無関心でいながら、ささいなことにはより強く反応しているようだ。 単純にこれまで積み重ねられてきた不満表出では何の問題も解決されないと思う」と話した。
24時チーム総合、ユ・ソンヒ記者 catalunia@hani.co.kr