韓国は、35年にわたる日帝強占期が終わり、1945年に光復(植民地からの解放)を迎えました。1948年に政府を樹立しました。1950年、北朝鮮の金日成(キム・イルソン)がソ連製の戦車を押し立てて侵略してきました。3年間の戦争で、何百万人もの人々が命を落としました。同族相争う許しがたい蛮行でした。
分断と戦争の影響は甚大でした。韓国では、親日派が反共を大義名分にして再び勢力を得ました。反独裁の民主化運動家たちにアカのレッテルを貼りました。北朝鮮は、南労党出身者を「米帝のスパイ」だとして処刑しました。金日成、金正日(キム・ジョンイル)、金正恩(キム・ジョンウン)の世襲王朝国家を作りました。
しかし韓国の大統領たちは、いつの日にか南北統一を実現しなければならないということを分かっていました。1972年に7・4南北共同声明、1985年に南北離散家族訪問が実現しました。盧泰愚(ノ・テウ)大統領時代には中国およびソ連と国交を樹立し、南北が同時に国連に加盟しました。金泳三(キム・ヨンサム)大統領は南北首脳会談に合意しましたが、金日成主席の死去により実現できませんでした。
金大中(キム・デジュン)大統領と盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は南北首脳会談を行いました。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は南北首脳会談も行い、朝米首脳会談の仲介もしました。朝米首脳会談は2019年にハノイで決裂しました。朝米首脳会談の決裂以降、北朝鮮は核兵器とミサイルの開発を加速しました。
その間に、南と北の格差はますます広がりました。南の文化が北へ流れ込みました。金正恩国務委員長は体制崩壊の脅威を感じました。ハリネズミのように丸まりました。憲法を改正し、南北は「敵対的二国家」であると宣言するとともに、非武装地帯(DMZ)内にある軍事境界線(MDL)を要塞化しつつあります。北朝鮮は、自身が軍事境界線とみなす境界線の北側に地雷を埋設し、鉄条網を設置しています。北朝鮮が自分たちの土地に地雷や鉄条網を設置するのをとやかく言うのは困難です。
ところが、9月21日に西部戦線の非武装地帯で北朝鮮が設置した地雷が爆発し、韓国軍の幹部3人が負傷しました。なぜこのようなことが起きたのでしょうか。北朝鮮の軍事境界線と韓国の軍事境界線が一致していないからです。軍事境界線は、1953年の停戦協定時には200~300メートル間隔で杭(くい)が打たれていましたが、風化してほとんど消失してしまっています。ハンギョレのクォン・ヒョクチョル記者が詳しく説明しています。
「杭が倒れてしまってからは、北朝鮮軍の軍事境界線も韓国軍と違いが生じてしまった。韓国軍と国連軍司令部はGPS衛星航法システムを使用しているが、北朝鮮はロシアの衛星航法システム(GLONASS)を使用しているため、衛星航法装置の座標によっても軍事境界線を確認することが難しくなった」
キム・ヨジョン北朝鮮労働党総務部長が今回の事件について9月30日に談話を発表しています。「わが軍人たちは、一度たりとも国境線を越えたことがない」というのです。そのように主張することはできます。しかし、談話のタイトルは「挑発の張本人たちは自作の茶番劇の代償を覚悟しなければならない」です。「今回の事件は挑発の時期と手口において、10年あまり前に世間を騒がせた『木箱地雷事件』を彷彿(ほうふつ)とさせる明白な自作劇」だと述べています。キム・ヨジョン部長は滅茶苦茶なことを言っています。自作劇ですって? 一体どこに向かってこのような暴言を吐いているのでしょうか。怒りが込み上げてきます。
この事態をどうすべきでしょうか。常識的に考えれば、韓国と北朝鮮、そして国連軍司令部が軍事会談を行い、軍事境界線を明確に整理したうえで、非武装地帯内での軍事的衝突の可能性を下げることこそ、根本的な解決策であるはずです。しかし、北朝鮮は会談そのものを拒否しています。
カン・シンチョル国防部長官は10月7日の国会での国政監査で、「国連軍司令部と共同調査をおこなって確実にしたうえで、必要な措置を講じていく予定」だと述べています。「必要な措置」には多くの意味が込められています。言葉よりも行動が重要です。
私は、韓国政府と国連軍司令部の軍事境界線を一致させたうえで北朝鮮に通知するとともに、軍事境界線の南側の地雷と鉄条網をすべて除去すべきだと考えます。地雷および鉄条網の撤去過程で北朝鮮軍が攻撃してきたら、攻撃の原点に反撃して真っ向から立ち向かうべきです。軍事的衝突や局地戦まで覚悟したうえで強く出るべきです。地雷の爆発について、明確な謝罪を引き出すべきです。北朝鮮を軍事会談のテーブルに着かせ、軍事境界線を明確に設定すべきです。非武装地帯内への地雷および鉄条網の設置の禁止が合意できれば、なお良いでしょう。
しかしそのさなか、保守野党「国民の力」は北朝鮮ではなく、むしろ李在明(イ・ジェミョン)政権の方をはるかに激しく攻撃しています。野党の役割は政府与党の過ちを批判し、代案を提示することですが、国民の力の振る舞いはその水準をはるかに超えています。
チョン・ドンヨン統一部長官は10月7日の国政監査で、今回の事件について「地雷攻撃と特定することはできない」と述べました。北朝鮮が軍事境界線(MDL)以南であると判断した地域に、南側に危害を加える目的で意図的に地雷を埋設したと断定することはできないという趣旨です。
チョン・ドンヨン長官の発言はその通りです。北朝鮮による地雷敷設は、韓国と北朝鮮の軍事境界線が異なるために起きた事件だとするのが常識的な見方です。北朝鮮が軍事境界線の南側であることを知りながら、韓国軍を攻撃するために地雷を設置したとは考えがたいことです。朝鮮半島の平和を管理すべき統一部長官として、極めて穏当かつ慎重な判断です。
北朝鮮は厚かましくも、チョン・ドンヨン長官の発言にかみついてきました。キム・ヨジョン部長は「事故か挑発か、無駄な争いばかりが繰り広げられている。韓国の官僚のチョン・ドンヨンも、今回の『地雷爆発事件』をわが共和国の故意の攻撃とは断定しがたいと自ら告白した」と談話を発表しました。暴言です。
しかし、国民の力はそんな北朝鮮を非難するよりも、李在明政権とチョン・ドンヨン長官を批判することに熱をあげています。パク・ソンフン首席報道担当は10日、「チョン・ドンヨン長官は、自身の振る舞いが国家安全保障に及ぼした害悪を直視し、自ら去就を決断せよ。国民の不安をあおる長官に、その地位にいる資格はない。大統領はチョン長官を直ちに更迭せよ」と論評しました。
国民の力よりも深刻なのは、いくつかの保守系新聞です。朝鮮日報は10月10日付の1面トップに、「北に利用される『チョン・ドンヨンの口』」という記事を掲載しました。東亜日報は社説で、チョン・ドンヨン長官とイ・ジョンソク国家情報院長の交代を要求しました。
東亜日報によるイ・ジョンソク国情院長の交代要求は、その日の1面トップ記事を根拠としたものです。東亜日報はその日、東亜日報の質問に対してホワイトハウスの高官が「韓国には数十年にわたって続いてきた韓米同盟の基準を順守することを期待する。特に情報および防諜に関して」と答えたと報じています。
韓国と米国の情報当局は過去に何度も対立していますが、情報協力の大枠が揺らいだことはありません。同盟国同士の情報協力はそもそも、うまくいくときもあればいかないときもあるのが正常です。東亜日報の報道どおり、ホワイトハウス当局者がそのような発言をしたからといって、それが1面トップで大々的に報じるべきことなのか、またそれを根拠に韓国の国情院長の交代を要求するのが穏当なのか。私にとっては同意しがたいものです。
トランプ政権が韓米関係についてたびたび不満を表明するのは、一種の飼い慣らしです。韓国政府の外交・安保分野を親米派で固め、米国の利益を最大化しようとしているのです。にもかかわらず韓国のいくつかの保守系新聞は、そのような意図を持つ米国の主張を針小棒大に取り上げ、拡大再生産しています。
朝鮮日報は10月8日付の1面トップに「米、国情院長の『北朝鮮監視機関』訪問を拒否」という記事を掲載しました。東亜日報は同日の1面トップに「米、『北朝鮮ハッキング対応』韓米日会議から国情院外し」という記事を掲載しました。文化日報は同日1面に「米CIA高官訪韓団、昨年イ・ジョンソク面談実現せず」という記事を掲載しました。
国情院は朝鮮日報の報道について「虚偽であり事実ではない。悪意ある虚偽・歪曲報道に対し、法的措置を含む必要な手段を検討し、強力に対応する」と表明しました。東亜日報の報道には「数カ国前に一部誤解があったが、すでに過ぎたこと」だと語りました。文化日報の報道については「まったく事実ではないフェイクニュース」だと述べました。
ちょうどその時、国会外交統一委員会のチョン・チョンレ議員が米国のビザ発給保留により国政監査の場所を変更するという出来事が起こりました。米国が韓国の国会議員のビザを発給しなかったのは横暴です。米国の方を批判すべきです。
にもかかわらず、国民の力のパク・ソンフン首席報道担当は10日、「同盟の根幹である『安全保障上の信頼』が崩れた」として、「大韓民国の外交・安保ラインが親中・親北朝鮮の色を濃く漂わせ、韓米同盟の情報と機密を揺るがしているのだから、同盟国である米国が防衛線を張るのは当然」だと述べ、米国の側に立っています。国民の力はどの国の政党なのでしょうか。
国民の力といくつかの保守系新聞のこのような認識と態度は、韓国の既得権勢力の事大主義の遺伝子から発しているのです。韓国の既得権勢力には事大主義の伝統がありました。朝鮮時代には中国に仕え、日帝強占期には親日派でした。解放後の分断体制では反共の外皮をかぶり、親米事大主義によって既得権を維持しました。
韓国の保守派の中には、時折「韓国は米国の51番目の州になることも可能だ」といった妄言を吐く人がいます。チョン・ドンヨン統一部長官とイ・ジョンソク国情院長を追い出そうという分断既得権勢力の陰謀に、絶対に屈してはならない理由はここにあります。みなさんはどうお考えですか。