ハングル文化愛(ブックカフェ)「ドナドナ」のホ・ビョンドゥ代表がハンギョレに寄稿した「韓国の漢字教育拡大、まずその効果を証明せよ」を読んだ。この寄稿の筆者は、記事の冒頭から、漢字教育の拡大を求める主張を「過去への郷愁」に依拠したものだと一蹴した。続いて、最近は社会的な議題として取り上げられていない小学校教科書での漢字併記、漢字の級数制度の拡充、漢文教育の強化が「奇跡的な解決策であるかのように持ち出される」と表現し、漢字教育を主張する人たちをおとしめた。さらに、賛否が対立する構図のなかで、漢字教育を「過去の権威を暗記する力」として歪曲した。また、漢字語の授業の中心を国語の授業に置きながらも、漢文教科をめぐる議論を授業時間数の奪い合いという枠組みに押し込めた。
しかし、漢字教育の拡大には効果の証明を要求しながらも、漢字教育の制限には同じ基準を適用しなかった。ハングル表記と文脈だけで漢字語を習得させてきた現在の国語教育に対する省察もなかった。漢字語を国語の授業で教えるべきだと主張しながらも、どのような方法でどの程度まで教えるか、達成基準をどう設けるか、教師の能力をどう高めるかについての案は提示しなかった。
このように偏見と事実の歪曲が入り交じった一方的な主張は、私たちの教育の役には立たない。バランスの取れた議論のために、冷静に「読解力の向上」という根本的な目的に立ち返ってみよう。こんにち、読解力低下の原因として、デジタルメディアへの過度な依存や、ショート動画などの短尺コンテンツの普及、読書経験の不足、語彙力の不足など、複数の要因が挙げられている。それだけに、語彙の意味を正確に理解できるよう支援する教育が並行して行われなければならない。漢字情報を活用する教育は、その重要な柱の一つだ。
漢字語はいまも新たな言葉が生み出されている韓国語だ。「陰圧隔離病室」「炭素中立(カーボンニュートラル)」「仮想資産」などがそうであり、2024年に「文化財」を「国家遺産」に変更した政策用語もそうだ。これは、漢字語には新しい単語を作り出し、複雑な意味を簡潔に表現できるという長所があるからだ。漢字語教育は国語の授業だけに限定されるものではない。韓国語の抽象語・専門概念語・学習語の相当部分を占める漢字語は、歴史・数学・科学・英語など、数多くの教科で広く用いられている。生徒たちが成人後に接することになる各種の文書や書籍にも引き続き登場する。したがって、生徒たちがさまざまな分野の漢字語を理解し、活用できるよう支援する教育が必要だ。
漢字語教育において、漢字の併記を完全に排除することも理にかなっていない。頭音法則(漢字語の語頭に来る一部の音が変化する規則)や「サイシオッ」(合成語の構成要素の間に挿入され、発音に影響を与えるハングル文字)は語種によって適用の可否が異なるが、すでに現行の国語教科書の一部では、漢字を併記することで理解しやすく示している。作家のハン・ガンさんは、小説『別れを告げない』の目次では「キョルジョン」に「結晶」を、『ギリシャ語の時間』では「サンガ」と「ウィサ」にそれぞれ「喪家」と「擬似」という漢字を併記した。国語辞典でも、漢字語の見出し語に漢字を明記して意味を解説している。文脈から文章中の単語の意味を推測できるとすれば、漢字語を構成する漢字についての知識は、その単語を構成する意味要素を確認し、同じ漢字が用いられた他の語彙と結びつけるうえで役立つ。この二つの方法を併用すれば、生徒は語彙の意味をより深く理解することができる。
漢文という教科は、こうした教育課題を支える役割を果たすことができる。数学がさまざまな科学科目を理解するための基礎であり、道具となるように、漢文教科における漢字(語彙)教育は、韓国語の語彙体系における漢字語の理解力を高めるための基礎であり、道具となる。ここでは、漢字教育の目的は単なる暗記ではなく、単語の意味要素を考察し、関連する語彙を結びつけ、見慣れない言葉の意味を推論する能力を養うことにある。公教育におけるバランスの取れた漢字教育は、学校外での暗記学習への依存を減らし、私教育の格差を縮小させる。また、興味と有用性を高めた漢字教育は、生徒たちの学習負担を軽減しつつ、学習能力全般の向上につながり得る。
煽情的な世論戦よりも、生産的な議論が必要だ。教科の境界を越えてともに知恵を出し合い、読解力向上のための合理的かつ具体的な漢字語教育策を模索していこう。
イ・グクジン | 江原大学漢文教育科准教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )