16日に公開された韓国監査院による「東海深海ガス田事業に関する公益監査請求」の監査結果は、成功の可能性が検証されていない「シロナガスクジラプロジェクト」事業を、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が各省庁の意見を無視して強行していたことを赤裸々に示している。2024年6月当時、政権の支持率が20%台に落ち、政治的危機に陥っていた尹前大統領が、局面を転換するために「シロナガスクジラ」事業を無理に推進したと評価される。
2024年6月3日午前、尹錫悦大統領(当時)は予告もなくソウル龍山の大統領室庁舎内のブリーフィングルームに現れ、「最大140億バレルの石油とガスが東海(浦項の迎日湾沖)に埋蔵されている可能性が非常に高いという結果が出た。有数の研究機関と専門家による検証も経た」と国政ブリーフィングのかたちでガス田事業を発表した。国政ブリーフィングに同席したアン・ドックン産業通商資源部(産業部)長官(当時)は、「現在の価値に換算すれば、最大埋蔵量はサムスン電子の時価総額の5倍に達する」と述べ、雰囲気を盛り上げた。
しかし監査院の監査結果によると、尹前大統領の述べた「最大140億バレル」は、シロナガスクジラをはじめとする7つの有望構造(石油が存在すると推定される地質構造)において、最も楽観的な確率で石油・ガスが発見されたケースを想定した数値だった。監査院は、すべての構造で探査に成功する確率は0.000218%に過ぎないと指摘。当時、産業部は大統領室に対し、ボーリングによる確認もなしに探査資源量を公開して過度な期待を抱かせるだけになることを懸念し、資源量ではなく有望構造の面積を表示しようと提案したが、受け入れられなかった。
「有数の研究機関などの検証を経た」という尹前大統領の発言とは裏腹に、十分な検証もなしにボーリングを推進していたことも明らかになった。監査院の指摘によると、韓国石油公社は、十分な検証もなしに分析手法の適切さを確認したのみで、アクトジオ社による評価の結果にもとづいてボーリングを推進していた。アクトジオは2023年に石油公社と契約を締結した際、税を滞納していたため、専門性や信頼性をめぐって批判にさらされていた。
このような中、2024年下半期にシロナガスクジラ構造に対する最初のボーリングだけで1263億ウォンが投じられた一方、現在に至るも同事業の予算は編成されていない。
現職大統領が失敗の可能性のある事業を自ら発表するのは極めて異例。当時は4月の総選挙の敗北後で国政支持率が21%と就任後最低水準を記録しており、野党に「(大統領夫人の)キム・ゴンヒ特検法」などで激しく圧力をかけられるなど、政治的危機に追い込まれていた尹前大統領は、突破口を切実に求めていた。
今回の監査は、昨年10月にキム・ジョングァン産業部長官が監査院に公益監査を請求したことを受けて実施された。監査院は、韓国石油公社が当時、指名競争入札の条件を満たしていなかったにもかかわらず、市場調査も行わずにアクトジオなどの一部の企業を任意に選定して落札者を決定したため、国家契約法違反に当たると判断し、担当者の懲戒を求めた。ただし監査院は、産業部によるガス田事業に関する大統領室への報告や大統領室の国政ブリーフィングでの発表については「関連する規定がない」として、法・規定違反の有無は判断せず、特に措置も取っていない。