民主党の大統領選での勝利の歴史は、国民統合と外延拡大の歴史でした。統合し拡大した時に勝利し、分裂し排除した時に敗北してきました。
1987年の大統領選は、金泳三(キム・ヨンサム)と金大中(キム・デジュン)の「両金」候補の単一化失敗により敗れました。釜山(プサン)・慶尚南道は金泳三を、湖南(ホナム=全羅道)は金大中を支持しました。
1997年の大統領選は、金大中・キム・ジョンピル連合で勝利しました。地域連合であり、イデオロギー連合でもありました。2002年の大統領選は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)とチョン・モンジュン候補の単一化により勝利しました。
2017年の大統領選は、朴槿恵(パク・クネ)の国政壟断の影響と多者構図により容易に勝利しました。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は鮮明な改革路線を堅持しました。次の大統領選では破れました。
2025年の大統領選も、尹錫悦(ユン・ソクヨル)の非常戒厳と弾劾で容易に勝ちました。次の大統領選はどうなるでしょうか。統合し拡大すれば民主党が再び政権を握るでしょう。分裂し排除すれば政権は奪われるでしょう。
李在明(イ・ジェミョン)大統領は昨年の就任宣誓後、共存、和解、連帯、統合を誓いました。言うは易し、行うは難しです。
李在明大統領はこの1年間、国民統合と外延拡大に努めてきました。まだ良い評価は得られていません。2つの理由があります。
1つ目、人を見る目が足りないからです。李在明大統領が価値観や路線の異なる人々を幅広く起用しているのは良いことです。しかし、資質や態度に問題のある人物が何人か混じってしまっています。部分的な人事の失敗のせいで、統合と拡大路線全体が批判されています。
2つ目、政治的リーダーシップが不足しているからです。李在明大統領と民主党の支持層は、李在明大統領の中道実用主義に賛成し、野党との共存に同意する「柔軟支持層」、そして民主党の伝統的な改革路線にこだわり、野党を徹底して排撃すべきだと主張する「強硬支持層」で構成されています。李在明大統領が国民統合と外延拡大を図るには、強硬支持層を説得して軟化させなければなりません。それができていません。
民主党代表を選出する8月17日の全国党大会を前に、ソン・ヨンギル、チョン・チョンレ、キム・ミンソクの各候補(記号順)の競争が急速に泥仕合になりつつあります。元大統領との関係をめぐって繰り広げられる、いわゆる正統論争、新天地介入問題など、泥まみれです。価値観と理念、路線と政策は見えません。
それでも、その3人のうちの1人は民主党の代表になります。誰がなるのでしょうか。世論調査によると、キム・ミンソク候補とチョン・チョンレ候補の2人をソン・ヨンギル候補が追う「2強1中」構図です。序盤はキム・ミンソク候補がリードしていましたが、近ごろはチョン・チョンレ候補が逆転する流れになっています。
韓国社会世論研究所(KSOI)が7月8日に発表した適合度調査では、キム・ミンソク候補が27.4%、チョン・チョンレ候補が21.5%でした。2週間後の7月22日に発表された適合度調査では、チョン候補が25.7%、キム候補が21.5%でした(以下、詳細は中央選挙世論調査審議委員会のウェブサイトを参照)。誤差範囲内で追いつ追われつしています。
ニューストマトがメディアトマトに委託して7月22日に発表した世論調査では、チョン候補が33.7%、キム候補が22.0%で、チョン候補がキム候補を誤差範囲外でリードしています。しかし、民主党支持層と無党派層はチョン候補35.0%、キム候補32.9%で、誤差範囲内です。
世論調査によると、国民の力の支持層は相対的にチョン・チョンレ候補寄りです。なぜでしょうか。敵の敵は味方だからです。国民の力のチャン・ドンヒョク代表と敵対的共存関係にあるからです。国民の力の重鎮、クォン・ヨンセ議員は「私たちの支持者は、やはり李在明大統領と対立する人物がなった方が良いと思っているので、チョン・チョンレ候補を支持しているようだ」と述べています。
現場を取材している政治部の記者に「民主党の代表は誰がなったら良いと思うか」と問うと、多くは「3人とも違うと思う」と答えます。記者たちが3人を嫌うのはなぜでしょうか。
キム・ミンソク前首相は、李在明大統領の成功のためにはチョン・チョンレ前代表ではなく自分が民主党代表になるべきだと主張しています。いわゆる「明ピック」だということです。しかし、具体的にどのような民主党を作っていくのか、ビジョンや政策がよく見えません。ソン・ヨンギル議員も似たようなものです。
チョン・チョンレ前代表はこのかん、「内乱清算」と「検察改革」ばかりを叫んできました。政権与党の代表として、国政や民生に関する業績はあまりありません。自身がリードしている最近の世論調査結果を共有しつつ、「民主党の核心支持基盤である湖南(ホナム=全羅道)地域では私がリードしている」、「40~50代でもチョン・チョンレの流れが固まりつつある」と気炎を上げています。国民の統合や外延の拡大には関心がないようです。
政治家たちの泥仕合は政治家だけに責任があるわけではありません。政治家は票になるなら何でもする人たちです。近ごろの民主党の真の問題は、党員と支持層の分裂かもしれません。
野党時代、民主党の支持層は固く団結していました。尹錫悦という巨大な敵が存在したからです。巨大な敵がいなくなった途端に分裂をはじめました。昨年8月のチョン・チョンレとパク・チャンデの代表選挙がきっかけでした。
その時に作られたチャットルームとコミュニティーは、今でもほぼそのまま残っています。あの時、チョン・チョンレ候補を支持した党員や支持者の多くは、今でもチョン・チョンレ候補を支持しています。彼らはキム・ミンソク候補とソン・ヨンギル候補を露骨に非難しています。
あの時、パク・チャンデ候補を支持していた党の主流派と支持者たちは、今はキム・ミンソク候補とソン・ヨンギル候補を支持しています。チョン・チョンレ候補を露骨に非難しています。
一体なぜ同じ仲間同士でこのように憎み合うのでしょうか。おそらく、尹錫悦と国民の力に代わる憎悪の対象が必要だったのでしょう。憎悪中毒になっているのです。
その間に、民主党を見つめる民意は少しずつ悪化し続けています。とりわけ、20~30代の有権者の離反は深刻です。
500人や1000人を対象とする世論調査で、年齢層ごとの数値を真に受けるのは危険です。サンプル数が非常に少ないからです。
毎週1000人に対して定期調査をおこなっている韓国ギャラップは、月末にそれをまとめた結果を発表します。サンプル数が4000人に増えるため、年齢層ごとの数値も信頼するに足ります。
7月24日に発表された韓国ギャラップの7月のまとめでは、李在明大統領の職務評価は「支持する」53%、「支持しない」36%でした。20代は支持37%、不支持41%でした。30代は支持44%、不支持42%でした。20代では特に男性が支持31%、不支持51%で、不支持の方がはるかに高い結果となっています。30代男性も支持40%、不支持44%で不支持が上回っています。
政党支持率は民主党42%、国民の力25%でした。20代は民主党23%、国民の力23%で同じで、30代は民主党31%、国民の力21%でした。20代男性は民主党18%、国民の力27%で、国民の力が上回っています。30代男性は民主党24%、国民の力23%でした。
主観的な政治的傾向の認識は中道が34%で最高でした。保守27%、進歩26%で両者はほぼ同じでした。しかし、20代は保守27%、進歩18%、30代は保守30%、進歩18%でした。20代は特に男性が保守34%、進歩13%、30代男性は保守33%、進歩14%と、保守が圧倒的に高い割合を占めています。
李在明大統領と民主党が20~30代の有権者に人気がないのはなぜでしょうか。李在明大統領と民主党政権は特に20~30代を差別してきたのでしょうか。そんなはずはありません。
国会議長を務めたウ・ウォンシク議員は最近、ハンギョレのインタビューでこう述べています。
「『若者が保守化している』というような診断は誤りだ。保守的な地域である大邱(テグ)でキム・ブギョム候補に投票した若者たちを、どう説明するつもりか。若者たちは未来に対する不安が非常に大きい。近ごろ韓国社会は二極化が深刻化しており、若者層ではその問題がより深刻だ。資産格差だけをみても、上位20%と下位20%との格差が最も大きいのは若者層だ。(若者の民主党からの離脱は)このことについて問題提起しているのだと思う。単に若者の声を聞くだけでなく、解決策を提示すべきだ」
私は、ウ・ウォンシク議員の分析は正しいと思います。所得の二極化、資産の二極化、首都圏への集中、地方の消滅、雇用不足、不公正など、韓国社会の問題で最も苦しみを感じている若者たちが、既得権世代であり政権勢力である民主党に向かって悲鳴をあげているのです。大統領府に青年秘書官を置き、民主党に青年最高委員を置くからといって、問題は簡単には解決できないということです。
8月17日の全国党大会以降、民主党は大丈夫でしょうか。今のように候補と党員と支持者の対立が激化していくと、大きな後遺症が残ることが予想されます。すぐに党が崩壊するわけではないでしょうが、内面化された憎悪の方が危険です。民主党内部の反目と嫉妬が深まれば深まるほど、2028年の総選挙と2030年の大統領選挙での勝利は難しくなります。
このところSNSでは、チョン・チョンレ候補とキム・ミンソク候補の支持者の激しい争いにうんざりして、しばらく活動を中止すると宣言する人々が現れています。民主党の党員と支持層の内部対立がそれほど深刻であることを示すものです。8月17日の全国党大会で新たに選出される民主党の指導部と李在明大統領は、そのことを深く心に刻みつけておくべきだと思います。みなさんはどうお考えですか。