政治は誰の手腕が優れているかの競争です。競争相手より少しでも上手くやれば、選挙で勝てます。逆に、誰がましかの競争でもあります。手腕が劣っていても、競争相手の方が劣っていれば選挙で勝てます。
政治のこのような属性を李在明(イ・ジェミョン)大統領も分かっているようです。2025年5月の国民の力の大統領候補交代騒動を見て、「政治は私たちがうまくやったからといってうまくいくものではなく、じっとしていれば相手がこける。そうなれば私たちが勝つのだ」という金泳三(キム・ヨンサム)元大統領の言葉を紹介しています。
近ごろの李在明大統領の職務評価は悪くありません。7月10日に発表された韓国ギャラップの定例世論調査では、大統領の職務を支持するは53%、支持しないは35%で、前の週とほぼ同じでした。3大メガプロジェクトは「地域の均衡発展に役立つだろう」という肯定的な回答は57%、「地域間格差がさらに拡大するだろう」という否定的な回答は26%でした。
しかし、政府の不動産政策は危険な水準に近づいています。賃貸価格の上昇は深刻です。民主党は民生を無視し、党の主導権争いに没頭しています。
にもかかわらず政党支持率は民主党42%、国民の力24%と、大きな差があります。民主党の支持率は6・3地方選挙直後の41%から下がっていません。国民の力の支持率は選挙直後に29%に上昇して以降、27%、26%、24%と下り坂です。ソウル市長選挙の勝利で得た支持をすっかり失ってしまったのです。国民の力の支持率は今後さらに下がると思われます。理由は2つあります。
1つ目、尹錫悦(ユン・ソクヨル)効果です。
尹錫悦前大統領は複数の事件で裁判にかけられています。国民が忘れかけると、尹錫悦前大統領の顔がテレビに映ります。尹錫悦前大統領の顔が見えるたびに、国民の力の支持率は下がらざるを得ないのです。
最高裁判所は7月9日、高位公職者犯罪捜査処による逮捕を尹錫悦前大統領が妨害した事件について、懲役7年の原審判決を確定しました。同じ日、パク・チョンジュン元警護処長、キム・ソンフン元次長、イ・グァンウ元警護本部長ら、逮捕を妨害した警護処の幹部も、特殊公務執行妨害事件の一審で全員が実刑を言い渡され、法廷で拘束されました。
みなさんは、尹錫悦大統領の逮捕を阻止すると言って2025年1月6日に漢南洞(ハンナムドン)の公館前に集まった国民の力の44人の議員を覚えていますか。最高裁が最終的に逮捕妨害を有罪と認めたのですから、彼らは今からでも国民に謝罪することこそ正しいと私は思います。にもかかわらず、すっとぼけて沈黙しています。まったく、恥というものをまったく知らないようです。
2つ目、チャン・ドンヒョク効果です。
保守の最も大切な価値は責任です。責任を取らなければ保守ではありません。チャン・ドンヒョク代表は6・3選挙で敗北したにもかかわらず、責任を取っていません。
保守の最も大切な態度は品格です。品格なき保守は保守ではありません。チャン・ドンヒョク代表は7月7日のソウル松坡区(ソンパグ)のオリンピック公園での「開票所封鎖デモ」で「ジェミョンよ、高校生ではなく俺と戦おう」と記したプラカードを掲げました。現職大統領の名を呼び捨てにし、ため口で嘲笑したのです。次は罵詈雑言(ばりぞうごん)を記したプラカードを掲げそうです。
チャン・ドンヒョク代表は7月10日、ニューデイリーTVのユーチューブチャンネルに出演し、次のように語りました。
「引き算政治はするなと言うが、私たちの側に対して銃を撃つ人間は最大のマイナスだ。それ以上の引き算はない。代表に辞任せよと言うことこそ引き算政治だ。明白なその行為は、戦争で味方に向かって銃を撃つこと、そして敵を助けることだ。」
「ハン・ドンフン議員は犯罪行為で除名されたのであって、その行為で除名されたわけではない」
チャン・ドンヒョク代表の発言は実に驚くべきものです。与野を問わず、政党において指導部辞任要求は日常茶飯事です。帝王的な総裁たちが支配していた時代にも、指導部に対する辞任要求が懲戒されることはありませんでした。ハン・ドンフン議員の掲示板問題が犯罪行為なら、懲戒するのではなく捜査機関に告発して刑事責任を問うべきです。
保守系メディアの忍耐も徐々に限界に達しつつあるようです。7月7日付け朝鮮日報のキム・デジュンのコラムの見出しは「国民の力、党代表の信任投票へ行こう」でした。7月7日の社説の見出しは「国民の力の懲戒、1カ月前の国民の選択に逆らおうとしている」でした。7月11日の社説の見出しは「チャン代表は釜山北甲(プサン・プク・カプ:選挙区名)の有権者の選択を軽視するのか」でした。
7月7日付け文化日報の社説の見出しも「数十人の議員が懲戒対象とは…チャン、せめて信任投票を」でした。7月9日付け東亜日報は「チャン・ドンヒョク、『口封じ法』に反対する資格あるのか」という見出しのキム・スンドクのコラムを掲載しました。
しかし、このような忠告や叱責はすべて「馬の耳に念仏」です。チャン・ドンヒョク代表に辞任する考えはまったくないようです。新聞もまったく読んでいないようだと言われています。
チャン・ドンヒョク代表が信じているのは別のものです。国民の力の強硬な責任党員です。国民の力の強硬な責任党員は、民主党の強硬な権利党員と敵対的な相互共存関係を結んでいます。競争相手を強く批判しつつ、その敵意と憎悪を基盤として耐える戦術です。敵意と憎悪が深まれば深まるほど両極端の勢力の立場は強固になる、というのが政治の二極化の逆説です。
国民の力の慶尚道選出のある議員は、チャン・ドンヒョク代表を次のように描写しています。
「今、残っているのは悪だけだ。こんなことを言ってはならないが、誰かの言う通り、いっそのこと死体なら問題ないのに、ゾンビになって歩き回るから問題だ。毒気が満ちている。『不正選挙再選挙、当日投票手開票』。よく聞かされたので、私も覚えてしまった。今はそこに閉じ込められているのだ」
チャン・ドンヒョク代表は7月12日に釜山で「6・3参政権剥奪事態」現場懇談会を開催します。釜山鎮区中央大路(プサンジング・チュンアンデロ)の西面(ソミョン)ハート広場の集会現場も訪ねます。今週中に光州(クァンジュ)を訪れ、大邱(テグ)で地方巡回スケジュールを締めくくる予定です。どのようなプラカードを掲げて登場するのか、何を言うのかが心配です。
チャン・ドンヒョク代表は結局どうなるのでしょうか。キム・ジョンイン元国民の力非常対策委員長は7月10日にCBSラジオの番組「パク・チェホンの一戦勝負」に出演し、次のように語りました。
「チャン・ドンヒョク代表は議員総会で解任が決議されても絶対に辞めないと言っているが、そんな状況にまで至れば政治家として非常に悲劇的な状況に直面せざるを得ないだろう。結局、党員や議員の力によって解任される、そのような状況が訪れるだろう」
しかし、キム・ジョンイン元委員長の見方のように、チャン・ドンヒョク代表が党員によって追い出される可能性は、当面はそれほど高くないように思われます。
チャン・ドンヒョク代表は昨年8月の党大会での決選投票で、50.27%の票を得て勝利しました。一般国民に対する世論調査ではキム・ムンス候補に大きく引き離されていましたが、80%が反映された党員選挙人団投票で52.88%の票を得て勝利したのです。当時、チャン・ドンヒョク候補を支持した責任党員たちは、ほとんどが残っています。イ・マンヒ総会長の指示で国民の力に入党した新天地の5万人の信者も、かなりの数が残っていると考えるべきです。
このような状況で全党員投票が行われれば、チャン・ドンヒョク代表が再任される可能性があります。さらには、来年8月までの代表任期を終えて再任に挑戦すれば、またも代表に選出される可能性もあります。では、国民の力はどうなるのでしょうか。支持率は上がるのでしょうか。そんなはずありませんよね。国民の力の支持率は急落するでしょう。合理的な保守傾向の党員たちの離党ラッシュが始まるでしょう。議員も集団離党するでしょう。
国会議員にとっての最優先の目標は、次の総選挙で当選することです。チャン・ドンヒョク代表体制の国民の力に残っていれば落選は確実ですが、議員たちが黙っているはずはありません。結局、国民の力は群小政党に転落し、最後は消えてしまうでしょう。
実際にそのような前例がありました。1985年2月12日の第12代総選挙を前に金泳三、金大中(キム・デジュン)の両氏はイ・ミヌ総裁を押し立てて新韓民主党(新民党)を結党しました。新民党は旋風を巻き起こし、「官製野党」の民韓党と国民党を抑えて野党第一党となりました。
しかし、1986年12月にイ・ミヌ総裁は突如として、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権の議員内閣制改憲を条件付きで受け入れる「イ・ミヌ構想」を発表しました。これに反発した金泳三の上道洞(サンドドン)系と金大中の東橋洞(トンギョドン)系の議員が大量離党し、統一民主党を結成しました。新民党は10議席あまりに縮小し、1988年の総選挙で当選者を1人も出せず、登録が取り消されました。
国民の力が再生の機会をつかむ可能性がまったくないわけではありません。今のように支持率が下がり続ければ、シン・ドンウク、キム・ジェウォンの両最高委員が態度を変える可能性があります。最高委員が辞任すれば、チャン・ドンヒョク代表は職を辞さなければなりません。党員投票で不信任になっても同様です。
そうなれば、国民の力は非常対策委員会体制に移行します。2028年の総選挙を前にソウル市のオ・セフン市長、ハン・ドンフン議員、イ・ジュンソク議員、アン・チョルス議員、ユ・スンミン元議員らの連帯が実現しえます。総選挙は大統領選挙とは異なり、一種の集団指導体制が可能です。
国民の力が2028年の総選挙で競争力を保つ唯一の方法です。もちろん、どれもチャン・ドンヒョク代表が辞任してはじめて可能になるシナリオです。チャン・ドンヒョク代表の辞任が保守を救う唯一の道だということです。みなさんはどうお考えですか。