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新卒を採用しても、企業の期待水準が上がったため、若手たちは二重苦を抱えている。中国語・中国文学を専攻したDさん(24)は、最近ある大企業のインターン募集(戦略室の業務補助)を見て驚いた。漢語水平考試(HSK、中国語検定試験)6級という要件があったからだ。Dさんは「国家情報院の語学特技者採用基準よりも高い」とし、応募者に求める能力が高くなったと語った。
ソフトウェア開発者として1年間働いた後、新しい仕事を探している28歳のEさんも「2024年には少なくとも20%は書類選考を通っていたが、ここ5カ月間約20社に応募したのに、まだ連絡が1件もない」とし、「業務能力を高めるためにAI関連の教育コースを履修することにした」と語った。就職コンサルタントのユン・スンギュ氏は「新入社員の面接で経験者向けの内容が質問される傾向にある」とし、「企業は単純作業を超えてAIを活用した問題解決の経験や能力を求めている」と話した。
■生産ラインへのAI導入と共に、下請けの従業員200人が工場を去る
このような状況は若年層に限られた問題ではない。主要企業はすでに2〜3年前から生成AIを適用できる業務を発掘し、自動化を進めるための専門部署を運営してきた。半導体の重要部品である積層セラミックコンデンサ(MLCC、電子機器内で電流の流れを安定させる装置)を製造するある企業は、2019年から既存の設備にAIを導入し、工程の自動化を推進してきた。従来は下請け業者の数百人の従業員が顕微鏡で製品を検査していた工程に、AIを導入したのだ。不良品の写真データをAIに学習させると同時に、足りないデータも補完し、不良検出率を向上させた。
このようにAIが生産ラインに導入される中、近年この業務に従事していた下請け社員約200人が工場を去った。工程の自動化に関わった同社の幹部Fさんは、「AIを導入した結果、外観検査機を管理する担当者が5台につき1人から15台に1人程度に減少した」とし、「基板工程の最終段階で目視検査が欠かせなかった工程でも、AIで不良品検出の精度を上げた結果、目視検査の回数を減らすことで、人員を大幅に削減した」と説明した。管理職のFさん自身も技術の進歩のスピードに不安を感じているという。「今後5年でエージェンティックAI(Agentic AI:自ら目標を設定し実行する自律型AI)とフィジカルAIが連携し、製造現場に必要な人が現在の半分近くにまで減るかもしれない」と話した。
労働法の枠組みの外にいるフリーランサーも、AIの煽りを受けている。8年目のフリーランス映像編集者(34歳)は「AIが登場する前は、2~3週間かけて1分の動画を作ると、1件あたり200万~300万ウォン(約21万~32万)をもらっていた」とし、「20年目のベテラン編集者が手掛けてきたような作品を、経歴1~2年目の者がAIを使ってそれなりに仕上げられるから、報酬がどんどん下がっている」と語った。
■労働市場の不平等な構造がさらに深刻化する懸念も
専門家たちは、AIがもたらす影響が既存の労働市場における不平等な構造をさらに深刻化させる恐れがあると警告している。韓国労働研究院の調査でも、所得が低いほど、企業規模が小さいほど、AIによる失業リスクがより顕著にあらわれた。研究院は「中小企業の労働者は、企業の競争力低下による倒産などの短期的な失業リスクだけでなく、AI活用能力を身につける機会すら得られず、長期的には労働市場から淘汰される可能性があるという二重の不安を大企業の従業員よりも強く感じている」と分析した。「働く市民研究所」のキム・ジョンジン所長も「AIによる自動化は全体の職務ではなく、一部の業務単位で行われている」と指摘し、「その結果、労働基準法の保護を受けられない、あるいは労働組合のないフリーランスや下請け労働者が最初に置き換えられる危険にさらされている」と指摘した。
根本的に、企業がAIの活用を拡大するとともに新規採用の扉を閉ざす状況が、将来的に人的資本の損失につながるのではないかという懸念の声もあがっている。韓国労働研究院のチョ・ソンジェ上級研究員は「個別企業単位では若者を採用せず、既存の従業員にAIを活用させて生産性を高めるのが合理的な選択かもしれないが、これは国家的には大きな人的資本の損失につながる」と語った。いわゆる「キャリアラダー」が崩壊し、長期的に組織でコア(中核)の役割を担う人材の育成が十分に進まなくなるということだ。
<大統領直轄の国家AI戦略委員会は2月25日、「AI 3大強国」への飛躍を実行する計画を盛り込んだ「大韓民国AI行動計画」を議決した。 李在明(イ・ジェミョン)政権は「迫りくる巨大な車輪(Rad)からは逃れられない」という判断のもと、「AI高速道路」の整備を加速させている。しかし、新技術が疾走する中で、市民はシートベルトもないままに変化の渦に投げ込まれる。ある人は新産業の流れに無事に乗れたとしても、むしろはるかに多くの人々は車輪の下に敷かれた生活が脅かされている。AI技術の普及により、雇用や創作のエコシステム、教育現場の亀裂はすでに始まっているが、それを支える制度やセーフティネットはなかなか追いついていない。ハンギョレは4回にわたり、AI時代がもたらした変化とその裏側の影を指摘し、市民の生活を守る制度的な代替案と国家の役割を問う。>