「カン・クムボク、カン・スンボク、キム・ビョンチョル、イ・ヘオク…」
23日、水原(スウォン)地裁201号法廷。昨年6月に京畿道華城市(ファソンシ)のリチウム電池メーカー「アリセル」の工場で発生した火災で亡くなった23人の労働者の名が、一人ひとり読み上げられた。傍聴席に座っていた遺族の間からは、すすり泣きが漏れた。遺族側の法律代理人を務めるソン・イクチャン弁護士は、「無念の死が再発しないよう厳罰を求める」と述べた。「アリセル惨事」が発生して1年以上たったこの日、刑事14部(コ・グォンホン裁判長)の審理で事故責任者の刑事裁判の公判が行われ、結審した。検察は、アリセルのパク・スングァン代表に懲役20年、息子のパク・チュンオン総括本部長に懲役15年を求刑した。「重大災害処罰などに関する法律」施行から3年以上たっても実刑判決が5件にとどまっていることに照らせば、異例に重い処罰を裁判所に求めたのだ。
検察は「今回の事故は単なる事故ではなく、企業が利潤追求に血眼になって非熟練労働者の違法派遣を受け、最小限の安全対策や教育も施すことなく、納品日程に間に合わせるために無理に生産を強行したことで発生した人災」だとして、「23人の大切な命を失うなど、被害規模の面でも前例を見ない事件だ」と述べた。続けて「重大災害処罰法の立法趣旨に合った企業活動をするよう警戒心を高める観点からも、厳罰は避けられない」と述べた。
検察は、アリセルが損害賠償金の支払いを回避するために、軍への二次電池の納品日程に間に合わせようとして無理に生産量を増やしたことが事故の原因だと判断した。アリセルは実際に、事故の約1カ月前から未熟練の違法派遣労働者をそれまでの2倍ほどに増やし、一日の生産量も約2倍に増やしていた。違法派遣労働者は、火災時の避難経路などの十分な安全教育も施されずに作業に投入されていた。遺族は、避難経路だけでも事前に正確に教えられていたなら、死者の数を減らすことができたはずだと主張してきた。
検察は、特にパク代表について「経営責任者でありながら犯行を否認しており、刑事責任を免れるために他人に責任を転嫁している」と強調した。パク代表がアリセルの実質的な経営責任者は自身ではなく息子のパク本部長だと主張してきたことに、真っ向から反論したのだ。
パク代表側は最終弁論で「アリセルの実質的な経営責任者は息子であるパク・チュンオン総括本部長であり、惨事は原因不明の事故だった」として容疑を否定した。被害者と遺族の代理人を務める民主社会のための弁護士会法律支援団は、「被告人たちは遺族に謝罪しておらず、最低限の謝罪文も出さないなど、真の反省の兆しをまったく示していない」として、「厳しい処罰」を求めた。
パク代表らアリセルの7人の関係者は、昨年6月24日午前10時30分ごろに発生した、23人の労働者が死亡し9人が負傷したアリセル工場火災で、有害・危険要因点検をおこなっていなかった、重大災害発生対策マニュアルを備えていなかったなど、安全保健確保義務を果たしていなかった疑いなどで起訴された。判決公判は9月23日。