尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の内乱容疑の刑事裁判に証人として出廷した軍の幹部が、「私は人に忠誠を尽くさず、組織に忠誠を尽くしてきた」として、「国民に愛されながら23年間軍生活を送ってきた私が、(非常戒厳が宣布された)12月4日に下された任務をどうして遂行できるものか」と述べた。尹前大統領が(検事時代に)国家情報院のコメント事件を捜査する過程で困難に直面していた頃、2013年10月の国会法制司法委員会の国政監査で「人には忠誠を尽くさない」と述べた発言になぞらえて、不当な指示には従えなかったとの立場を明らかにしたのだ。尹前大統領はこの日の公判に被告人として出廷していた。
ソウル中央地裁刑事25部(チ・グィヨン裁判長)は21日、尹前大統領の内乱容疑の刑事裁判の第2回公判をおこなった。午後には証人として特殊戦司令部第1特戦大隊のキム・ヒョンギ大隊長が出廷した。キム大隊長は公判で、非常戒厳時にイ・サンヒョン前特殊戦司令部空輸第1旅団長に、国会議員たちを本会議場から引きずり出せと指示されたこと、「大統領がドアを壊してでも引きずり出せと言っている」と言われたことを証言した。証人尋問の最後には発言の機会を得て、不当な指示に従えなかった当時の状況について証言した。
キム大隊長は「23年間軍生活を送ってきたが、過去も今も変わらないことの一つは、国と国民を守ること」だとし、「私は人には忠誠を尽くさない。組織に忠誠を尽くし、その組織は私に国と国民を守れという任務を与えた」と述べた。続いてキム大隊長は「ある人は私に抗命だと言う」として、「抗命はその通りだ。しかし、上級者の命令に下級者が服従するのは、国が国民を守れという任務を与えた時に限られる」と述べた。
キム大隊長は「私の部下たちは何もしなかったし、そのおかげで何も起きておらず、民主主義が守れた」と述べた。この日の公判を取材していた記者たちに対しては、「軍が二度と政治的に利用されないよう、私の後ろにいらっしゃる方々は鋭く非難、叱責しつつ監視してほしい」と要請した。
一方、キム大隊長はこの日の公判で、イ前旅団長からの指示は遂行しなかったと述べた。同氏は「正当な指示なのかについて正しい判断ができなかったため、(それを指揮下の兵力に)伝えなかった」と証言した。キム大隊長は、尹前大統領側に「夜間に国会に一般市民が同意を得ることなく入るのは違法ではないか」と問われ、「入るだけの理由があるから入ったはず」だと答えた。
特殊戦司令部第1特戦大隊のキム・ヒョンギ大隊長による公判での最後の陳述の全文
私は2003年に二等兵として入隊しました。2004年度に副士官に任官し、2006年度に将校になりました。いつのまにか私も43歳。軍生活23年目になりました。23年間の軍生活の間、過去も今も変わらないことが一つあります。国と国民を守ることです。私は人には忠誠を尽くしません。組織に忠誠を尽くしてきました。その組織は私に国と国民を守れという任務を与えました。
ある人は私に抗命だと言います。なぜなら、我が組織は徹底して上命下服を基盤に運営される組織だからです。抗命はその通りです。しかし、上級者の命令に下級者が服従するのは、国と国民を守る任務に限られます。私はこの23年間、国民に愛されながら軍生活を送ってきました。その私が、昨年12月4日に下された任務をどうして遂行できましょうか。
いっそ私を抗命罪で処罰してください。そうすれば、私の部下は抗命でも内乱でもなくなります。私の部下には何の過ちもありません。あの日、あの場で、彼らが何もしなかったからこそ何も起きず、そのおかげで民主主義が守れました。
最後に、我が軍が二度と政治的な手段として利用されることのないよう、私の後ろに座っていらっしゃる方々は徹底して、鋭く、あるいは叱責と非難を通じて、我が軍を監視してください。そうすることでようやく、二度とこのようなことが起きなくなるでしょう。申し訳ありません。