裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の拘束取り消し決定に続いて、検察が即時抗告を放棄したことで、尹大統領が52日ぶりに釈放されたが、拘束状態で裁判を受ける可能性は依然として残っている。憲法裁判所が来週中にも尹大統領の罷免を決定すれば、内乱・外患罪を除く刑事上の不訴追特権が消えるため、「再拘束は時間の問題」だとの分析も示されている。
尹大統領が再拘束される可能性があるシナリオは、大きく分けて3つある。その3つとは、裁判所の職権による拘束▽罷免後、別の犯罪容疑での拘束▽特検捜査などを通じた同一犯罪(内乱首謀容疑)による再拘束だ。
まず、裁判所による職権での拘束が取り沙汰されている。裁判所は、裁判の過程で拘束理由が発生すれば、職権で逮捕状を発行できる。内乱を首謀した疑いで起訴された尹大統領の場合、拘束期間を過ぎて起訴されたとの理由で釈放されたが、犯罪事実は重大で、証拠隠滅の恐れがあるため、拘束理由は解消されていない。また、キム・ヨンヒョン前国防部長官ら共犯者全員が拘束収監されている中、内乱を首謀した疑いが持たれている尹大統領のみが不拘束状態で裁判に臨むのは公平ではないため、拘束理由が十分にあると判断される余地もある。
刑事法を専門とするソウル大学法学専門大学院のハン・インソプ元教授は8日のフェイスブックへの投稿で、「結んだ者が解くのではなく、解いた者(裁判所)が結べば済むこと。裁判所の決定によって手続き上の欠陥(拘束期間算定の誤り)は解消されたので、今度は改めて拘束するかどうかの判断を経て、(裁判所の)職権で法廷拘束すればよい」とし、「時間をかける必要もない。(尹大統領は)外であらゆる手を使って証拠隠滅を試みるだろうし、重要任務従事者は全員拘束起訴されているのに、首謀者だけが外をほっつき歩くという事態はあってはならない。全国民の法感情上の大混乱を防ぐためには、直ちに職権裁判を開始すべきだ」と述べた。ハン教授によると、実際に拘束手続が違法だったため拘束が取り消され、同日に改めて拘束令状が発行された例が存在する。ハン教授は「珍しいケースだが、数十年の歴史で初めて拘束期間の時分秒に至るまでの算定の基準を創案した裁判所なら、そのような珍しいことができないはずがない」と述べた。
早ければ来週中に予想される憲法裁による尹大統領の弾劾審判の判決は、尹大統領を拘束するかどうかを見極める分水嶺になり得る。憲法裁が弾劾訴追案を認容して尹大統領を罷免すれば、刑事上の不訴追特権がなくなり、検察や警察などが捜査中の候補公認介入疑惑▽逮捕状執行妨害疑惑などで身柄の確保が可能になる。大統領警護処を盾として拘束令状の執行を妨害することも、もはや不可能になる。共に民主党のチェ・ガンウク前議員はこの日、自身のユーチューブチャンネルで、「本来、ミョン・テギュン・ゲートなど拘束されるべき犯罪が多くあるため、時期の問題であって拘束は必ずされる。拘束は時間の問題」だと述べた。
野党の主導する特検も主要な変数だ。刑事訴訟法上、同一犯罪に対する再拘束は不可能だが、新たな証拠が発見された場合は例外として認められる。特検による捜査の結果によっては、罷免されるかどうかとは関係なしに、内乱首謀容疑で再拘束される可能性もあるわけだ。また12・3内乱と関連づけて、捜査が不十分な外患罪や職権乱用などの容疑での追加起訴や拘束も可能だ。
ただし、国会が特検法を可決しても、チェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官が拒否権を行使する可能性が高いことがネックになる。検事長を務めた経験を持つ民主党のヤン・ブナム議員はこの日、ユーチューブチャンネル「チャン・ユンソンの取材コンビニ」に出演し、「弾劾案が認容されて警察が内乱罪以外の犯罪を捜査し、尹錫悦を拘束するのが最善」だと語った。