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またもや内乱特検を拒否したチェ権限代行…最大野党、権限代行の弾劾は見送り

登録:2025-02-01 07:16 修正:2025-02-01 08:58
国会で可決した法案に7回目の拒否権 
民主党「内乱同調者であることを認めたも同然」
チェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官が1月31日午後、鍾路区の政府ソウル庁舎で開かれた国務会議で議事棒を叩いている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 チェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官は1月31日、2回目の「内乱特検法」にも再議要求権(拒否権)を行使した。チェ代行が国会で可決された法案に拒否権を行使したのは今回が7回目。歴代大統領権限代行の中で最も多くの拒否権を行使したことになる。与党「国民の力」は、チェ代行が正しい決定をしたとし、国会で内乱特検法の再表決が行われた場合、可決に必要な賛成票を確保できず廃棄されるだろうと自信を覗かせている。最大野党「共に民主党」はチェ代行による拒否権の行使を強く批判しながらも、政治的逆風などを懸念し、直ちにチェ代行の弾劾を訴追することは見送った。

 チェ権限代行は同日、政府ソウル庁舎で国務会議を開き、「憲法秩序と国益の守護、当面の危機対応の切迫さと国民の考えなどを総合的に考え、今回の特検法案については再議要請をせざるを得ない」と述べた。

 チェ代行は「以前に政府に移送されてきた特検法案に比べ、一部の違憲的な要素は補完された」としながらも、「以前の特検法案と同じように、与野党合意なしに野党単独で国会本会議で議決されたことを残念に思う」と述べた。野党が与党の要求を受け入れ、2度目の特検法を大幅に修正したにもかかわらず、依然として「与野党合意」がなされなかったという点を問題視し、「国会で大乗的に議論してほしい」と再びボールを国会に返したのだ。

■「尹大統領の裁判が進行中…特検の必要性を判断しがたい」というチェ代行

 それとともに「様々なことを考慮したが、現時点で特別検察官制度を必ず導入すべきなのかについて、明快な答えを出すことができなかった」とも述べた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が拘束起訴され裁判手続きが進められているのに、特検を行う必要があるとはみられないということだ。

 さらに「現在、非常戒厳関連の捜査が進展し、現職の大統領を含む軍と警察の主要人物がほぼ拘束起訴され、裁判手続きが始まった。今後の司法手続きがどう進むのかを見守らなければならない現時点で、『別途の』特別検察官を導入する必要性を判断しがたいという意見が多かった」と語った。

 また「前回の特検法案に比べ一部補完されたが、依然として内容的に違憲的要素があり『国家機密流出の可能性』もあるとみられており、憲法秩序と国益の面で否定的な影響を及ぼす懸念がある」とも述べた。特に「分断国家という特殊性を反映して捜索および検証まで制限する強い保護規定を置いている『位置と場所に関する国家秘密』は、一度流出すれば回復が不可能だ」とし、「検察がすでに内乱既遂(実行に移して結果が発生したこと)の容疑で起訴したという点を考えると、追加的措置で得られる実益だけでなく、それにともなう否定的な影響も共にバランスよく比較してみる必要がある」と強調した。

 さらに「正常な軍事作戦まで捜査対象になった場合、北朝鮮の挑発に備えた軍事態勢が萎縮する恐れがあり、軍の士気にも否定的な影響を及ぼす可能性がある」とし、「彼らの名誉と士気に否定的な影響を与えうる状況が再び発生すれば、国軍統帥権者である大統領に代わって国政を運営中の権限代行の責務を果たせない」とも述べた。

■6票→1票→?…内乱特検法の廃棄手順という与党

 与党はチェ代行の拒否権行使について「法的・政治的正当性をすべて備えた決定であり、大韓民国の法治と憲政秩序を守るための決断」(キム・デシク院内報道担当)だと評価した。同党も「尹大統領の起訴」で特検法の必要性が消えたと主張している。クォン・ヨンセ非常対策委員長は同日に開かれた最高委員会議で、「100日間で112億ウォン(約11億9300万円)もかけて特検を実施し、さらに何を明らかにするというのか理解しがたい」とし、「早期大統領選挙のための『内乱特検ショー』を行うという狙いであり、前例のない国力の無駄遣いだ」と述べた。

 与党内部では、チェ代行の拒否権行使によって内乱特検法が国会に戻り再表決が行われるとしても、可決される可能性は低いとみられている。第1次内乱特検法は、昨年12月12日の国会本会議で、在席議員283人のうち賛成195票、反対86票、棄権2票で可決された。チェ代行の拒否権行使で8日に行われた再表決では賛成198票、反対101票で否決された。内乱特検法を共同発議した野党6党が192人であることを考えると、「国民の力」から少なくとも6票の賛成票が出たわけだ。

 その後、与党の主張を反映し、外患容疑と内乱宣伝・扇動容疑などを削除した2回目の内乱特検法案は17日の表決で在席議員274人中賛成188票、反対86票で可決され、むしろ賛成票が減った。当時、アン・チョルス議員だけが、与党で唯一賛成票を投じたという。

 しかし、今回は与党が独自の特検法を発議したうえ、与党の支持率が戒厳令以前に回復し、再表決の際に与党内から賛成票が出る可能性は少なくなった状況だ。実際、2回目の内乱特検法の表決当時、賛成票を投じたアン議員は「再議決すれば反対する」という立場を表明した。内乱特検に賛成すると明らかにしたある与党議員もハンギョレに「尹大統領を起訴するための特検だったが、(すでに)起訴されたではないか。民主党も特検について前向きに考えてみなければならない」と反対の意を表わした。

■革新・進歩「ただちにチェ代行の弾劾進めるべき」…民主、ひとまず「警告」だけ

 野党からはチェ権限代行に対し「特検の刃が尹大統領を越えて自分を狙うことを恐れているのか」、「大統領ごっこをもうやめろ」などの批判が相次いだ。民主党のノ・ジョンミョン院内報道担当は「内乱特検法を拒否したことで、自ら内乱加担または同調勢力であることを認めた格好だ。国民の力が主張してきた通り、特検を拒否する者が犯人だ」と批判した。

 祖国革新党と進歩党はチェ代行を直ちに弾劾しようと主張したが、民主党指導部は依然としてチェ代行の弾劾に慎重なアプローチが必要だとみている。チェ代行弾劾の実益がないだけでなく、政治的逆風の可能性もあるためだ。民主党指導部の主要関係者は、「今のところは、チェ代行に厳重警告をするのが最善だ。特検法の再議決過程で与党内の合理的な議員の参加を期待している」と述べた。

チャン・ナレ、シン・ミンジョン、オム・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1180248.html韓国語原文入力:2025-01-31 23:00
訳H.J

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