本文に移動

尹大統領夫人聴取、「呼び出し」強調した検察総長には事後報告…実質聴取は10時間

登録:2024-07-22 07:51 修正:2024-07-22 08:53
実質的な聴取は10時間…十分な調査か疑問 
総長には「捜査指揮権はない」という名目 
ソウル中央地検と衝突の可能性も
尹錫悦大統領と夫人のキム・ゴンヒ女史がトルクメニスタン・カザフスタン・ウズベキスタンの中央アジア3カ国の国賓訪問を終えて先月16日早朝、京畿道城南のソウル空港に到着し、専用機の空軍1号機から降りている/聯合ニュース

 ソウル中央地検が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史に対し検察庁舎ではなく第三の場所で「非公開出張聴取」を行った。イ・ウォンソク検察総長には事後報告したことで、最高検察庁が露骨に不快感を示すなど、波紋が広がっている。これに先立ち、イ総長は「聖域のない捜査」を強調し、検察庁舎にキム女史を呼び出して事情聴取するという意向を繰り返し表明している。キム女史の聴取時間も事件ごとに5時間前後にすぎず、十分な調査が行われたのか疑問だとも指摘されている。

■憲政史上初めての大統領夫人への事情聴取、検察総長は知らなかった

 20日午後1時30分、ソウル中央地検の捜査チームがキム女史を聴取した場所は、ソウル市瑞草洞(ソチョドン)にあるソウル中央地検庁舎や別の検察庁ではなく、第三の場所だった。検察側からは、チェ・ジェフン反腐敗捜査第2部長、キム・スンホ刑事第1部長と各副検事らが参加した。

 検察は午後1時30分から午後6時30分までの約5時間、ドイツモーターズ株価操作事件について聴取し、約1時間30分の夕食時間を挟んだ後、午後8時から翌午前1時20分までの約5時間20分間、ブランドバッグ受け取り疑惑事件について聴取した。両事件とも同程度の時間の聴取が進められたわけだ。

 ソウル中央地検がイ総長にキム女史から事情を聴いていることを報告したのは、聴取開始から10時間近く経過したこの日の午後11時20分ごろだったという。イ総長は報告を受けた後、周囲に不快な心境を明らかにしたという。ある最高検察庁幹部はハンギョレに「総長が何度も(キム女史の調査に関して)例外や聖域、特別恩恵はないと述べたように、聴取の方法と時期は重要な検討事項だ」とし、「聴取の最終段階で聴取方法などについて報告されたため、正常な手続きなどを経て(報告が)なされたとはみなせない。イ総長はこれを深刻に考えている」と述べた。

 いっぽうソウル中央地検は、文在寅(ムン・ジェイン)政権のときにチュ・ミエ法務部長官が尹錫悦検察総長(当時)をドイツモーターズ株価操作事件の捜査から排除してからは、検察総長にはこの事件の捜査指揮権はないため、報告できなかったという立場だ。ソウル中央地検の関係者は「(キム女史の)弁護人側は、ブランドバッグ事件については、書面聴取だけを受けるという立場だった。ブランドバッグ事件について対面聴取が可能かどうか不確かな状況だったため、総長に事前に報告できなかった」とし、「ドイツモーターズ事件の対面聴取が終わった後、キム女史側を説得し、ブランドバッグ事件まで聴取することになり、これを受けてイ総長に報告した」と述べた。ドイツモーターズ株価操作疑惑事件だけを聴取して終わりうる状況だったため、イ総長に報告できなかったということだ。

 また、ソウル中央地検も検察庁舎で聴取することを望んだが、警護などを懸念するキム女史側の立場を考慮しない場合、聴取自体が不発となる可能性に対する懸念が強かったという。しかし、第三の場所での聴取が特別待遇であることが明らかなだけに、キム女史への聴取方法をめぐる論議は続くものとみられる。最高検察庁とソウル中央地検が衝突する可能性も排除しがたい。

■聴取を控えて70ページの書面の陳述書を提出

 聴取時間も物議となるものとみられる。食事時間などを除くと、両事件の聴取にかけた時間は約10時間20分。陳述調書の確認に要する時間まで考慮すれば、十分な聴取を行うには不十分な時間だ。

 特に調査の分量が多いはずのドイツモーターズ株価操作事件の聴取がたった5時間だったことから、釈明中心の聴取が行われたのではないかとする懸念も出ている。ただし検察側は、キム女史が聴取に先んじて、今月中旬に70ページほどの書面答弁書を提出し、これをもとに十分な聴取を進めたという。

 これに先立ち検察は、キム女史に2021年12月と昨年上半期の2度にわたり書面の質問書を送った。キム女史側は2021年12月ごろ、10ページほどの分量の最初の書面答弁書を提出したが、2番目の質問書には返事をしなかった。その後、聴取を控えた今月中旬に70ページの分量の2番目の書面答弁書を提出したという。検察はこの答弁書をもとに、キム女史がドイツモーターズの株式を購入・売却した経緯と、ブラックパールインベストのイ・ジョンホ前代表に口座を任せた理由などを追及したことがわかった。

 ブランドバッグ受け取り疑惑について、キム女史は「包装紙の中に入っていた中身が何かを確認した後、返すよう指示した」という趣旨の陳述を貫いたという。また、チェ牧師の「キム・チャンジュン元アメリカ下院議員の国立墓地への安置の請託」については、「報告を受けていない」と今回の聴取で明らかにした。

 検察は両事件ともに速度を上げて近いうちに結論を出すとする立場だ。ドイツモーターズ株価操作事件は、9月12日に控訴審判決が予定されており、検察はその後にキム女史の処分を決めるのではないかとみられていた。しかし、検察はキム女史に対する対面聴取を終えたため、控訴審判決と関係なく処分を決める計画であることがわかった。

チョン・ヘミン記者、ペ・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1150039.html韓国語原文入力:2024-07-22 00:30
訳M.S

関連記事