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豪雨に見舞われても配送しろという国…宅配運転手には作業中止権がない=韓国

登録:2024-07-11 19:45 修正:2024-07-12 11:22
慶尚北道慶山市「豪雨の中で行方不明」配送労働者など 
気象悪化の度に安全が脅かされるが 
作業中止権が保障されず無理な配送
豪雨に見舞われた10日、大邱市東区琴江洞が琴湖江の氾濫で浸水し孤立した中、村の住民たちが荷物をまとめて冠水した道路を避難している/聯合ニュース

「雨があまりに強く配送できそうにない」

 9日午前5時12分頃、慶尚北道慶山市(キョンサンシ)で行方不明になった40代女性Aさんは、事故前に同僚に残したこの言葉を最後に行方がわからなくなった。警察ではAさんが急流に巻き込まれ行方不明になったと見ている。降り続く豪雨で配送労働者の安全が脅かされる中で、気象悪化時には労働者の判断により業務を中断できる「作業中止権」が保障されるべきという指摘が出ている。

 作業中止権は産業安全保健法上保障される権利であり、労働者は労働災害が発生する急迫した危険がある場合、作業を中止し待避することができる。しかし、宅配運転手など配送労働者の場合、大部分が事業主の業務指示を受けているにもかかわらず特殊雇用形態で契約しているので産業安全保健法の適用対象から除外されてきた。

宅配業者は豪雨時の作業中止を別途規定していない

10日の豪雨で、全羅北道群山市聖山面(クンサンシ・ソンサンミョン)のあるマンションの裏で山崩れが発生し、流された土砂と樹木に覆われている/聯合ニュース

 しかし、気象状況の影響を強く受ける業務の特性上、配送業務中に危険な状況はよく発生する。2011年7月にも豪雨の中で配送業務をしていた郵便配達員が死亡し、2016年6月にも同じ死亡事故が起きた。事故が続くと、郵便局は2018年「郵便物利用制限および郵便業務一時停止に関する告示」を制定し、危険度により総括郵便局長が集配業務を停止できるようにした。

 反面、民間領域である宅配や配達労働者には依然として作業を中断できる規定がない。宅配運転手たちは団体協約を通じて作業中止権を明文化すべきと主張してきたが、韓進宅配、CJ大韓通運など大部分の宅配企業は依然として豪雨時の作業中止に関して別途の規定がまったくなかったり、あっても暗黙的な内部指針程度にとどまる水準だ。

気象悪化時は物流量そのものを減らさなければならない

 宅配運転手として働くキム・ジンイルさん(49)は、「大雪が降ろうが、台風が来ようが、アイスボックスや生モノは無条件に当日配送しなければならないので、結局いくら危険でも(配送に)出ざるをえない」と話した。アイスボックスを当日配送できずに中身が傷んだ場合、宅配運転手が私費で損害を賠償しなければならない。

 根本的な問題解決のためには、気象悪化時の物流量そのものを減らすべきとの主張もある。宅配業者が「(気象悪化が激しい場合)必ず当日配送しなくとも良い」と案内しても、物流量が減らない以上は今日先送りすれば明日の配達量が増えるためだ。キム氏は「結局物流量が同じであれば、どうしても負担になることは同じだ」とし、「昨冬、大雪が降った時、同僚の一人は無理して配達し、結局滑落事故に遭った」と付け加えた。

9日午後、慶尚北道慶山市で消防救助隊が大雨で行方不明になった女性を捜索している/聯合ニュース

 韓国最大のオンライン小売企業「クーパン」の配送専門子会社(クーパンCLS)所属の配送運転手たちもやはり「豪雨や大雪、台風が来る時はロケット配送の物量に制限を設け、配達量を減らさなければならない」と声を上げている。現在、クーパンは気象悪化時にもロケット配送で受け付けられる物量を減らしていない。全国宅配労働組合クーパン本部準備委員長のカン・ミンウク氏は「クーパンの子会社であるCLSは、決められた配送量を時間内に終えられなければ、運転手に割り当てられた区域を回収し事実上解雇する構造」とし、「結局、なんとしても時間内に配送しようと思うので事故に遭う危険がより大きい」と話した。

コ・ギョンジュ記者、チョ・スンウ教育研修生 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1148540.html韓国語原文入力:2024-07-11 18:10
訳J.S

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