北朝鮮官営メディアが金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と娘のジュエさんが温室農場の竣工式典に出席した内容を報道し、ジュエさんについて「向導の偉大な方」という表現を初めて使った。向導とは「進む方向を示す」という意味で、ジュエさんに指導者と同じ呼称を使ったことから、後継構図と関連し注目を集めている。
労働新聞などは16日付で、金正恩委員長が15日に温室農場の竣工式と空輸部隊の訓練を娘のジュエさんとともに視察したと報道した。金委員長が後継者候補とされる娘とともに、民生問題(人民の暮らしの問題)と安全保障の両方に気を配る姿を強調しようとしたものとみられる。
労働新聞は、金委員長が娘のジュエさんとともに平壌(ピョンヤン)近くに作られた江東総合温室の竣工および操業式典に出席し、建設に参加した将兵たちの努力を称えたと報じた。これは咸鏡北道の中平温室農場(2019年完工)、咸鏡南道の延浦温室農場(2022年完工)に次ぐ3番目の現代式温室農場で、人民軍江東飛行場の跡地に建設された。北朝鮮当局は、大規模な温室農場を建設した理由として、「住民に四季折々の新鮮な野菜を保障する措置」だと説明している。
金委員長は、航空陸戦兵部隊(空輸部隊)の訓練も指導したが、これにも娘のジュエさんを同行させた。朝鮮中央通信は、金委員長の娘のジュエさんが監視警戒所で双眼鏡で訓練を眺めている姿や、親子が兵士たちのすぐそばで射撃訓練を見守る姿などを報道した。金委員長は今月4日から14日にかけて行われた韓米合同演習「自由の盾」(フリーダムシールド・FS)に対抗し、連日軍事訓練を視察しているが、最近の一連の訓練視察現場に娘のジュエさんを連れて行ったのは今回が初めて。
特に労働新聞と朝鮮中央通信はこの日、「進む方向を示す」という意味の「向導」という言葉を「向導者金正恩」、「党中央の向導」と共に「向導の偉大な方々が」(The great persons of guidance)という複数形でも使った。これは、ジュエさんも金委員長と同じく「向導」という表現したものといえる。
労働新聞は「歓迎曲が鳴り響く中で、敬愛する金正恩同志が愛するお子様と共に竣工および操業式場に到着するや、暴風のような『万歳!』の歓喜の声が天と地を揺らした」とし、「向導の偉大な方々が党と政府、軍部の幹部らと共に江東総合温室を視察した」と報道した。
労働新聞が金委員長とジュエさんに対して「向導の偉大な方々」という表現を使ったのは今回が初めてだと、専門家たちは指摘する。世宗研究所のチョン・ソンジャン朝鮮半島戦略センター長は、ジュエさんに対するこのような呼称が「キム・ジュエが金正恩に続き北朝鮮の次期指導者になることを強く示唆するもの」だと語った。北朝鮮の「朝鮮言葉大辞典」によると、「向導者」とは「革命闘争で人民大衆が進む前途を照らし、彼らを勝利の道に導く領導者」を意味する。ジュエさんに対する北朝鮮の労働新聞または朝鮮中央テレビの報道は今回で26回目だ。
チョン・センター長は「現在、キム・ジュエの後継体系構築は基本的に『内政と後継授業』の段階にあるとみられるが、金正恩の公開的な性格によって、かつて金正恩後継体系の構築過程での『対内的公式化』と『対外的公式化』の段階で見られた現象まで現れている」とし、「キム・ジュエはまだ後継者の『内政と後継授業』の段階にあるが、将来彼女を自分の後継者として前面に出そうとする金正恩の意志がそれだけ強いことを示唆する」と分析した。