尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領就任後、韓国の民主主義が急激に後退しているという内容の国際研究報告書が出た。スウェーデンのヨーテボリ大学に本拠を置くV-Dem(民主主義の多様性)研究所は7日に公開した年次報告書「民主主義レポート2024」で、「これまで回復傾向を示してきた韓国の民主主義指標が再び下落傾向に転じた」と分析した。
同報告書によると、韓国は法治、抑制と均衡、市民の自由などで構成された「自由民主主義指数」で0.60点を取り、179カ国中47位を記録した。2019年の0.78点(18位)、2020~2021年の0.79点(17位)、2022年の0.73点(28位)から点数と順位ともに大幅に下がった。この指数は0に近いほど「閉鎖的な独裁国家」、1に近いほど「自由な民主主義国家」に分類される。V-Dem研究所は、世界から4200人以上の専門家が参加し、世界各国の選挙公正性、市民と言論の自由、司法府独立、性平等などに対するデータを収集して、これをもとに集計した選挙・自由・参加・熟議・平等民主主義指数を毎年発表する。
研究所はこの指標の下落傾向が明確な国家を「独裁化」(Autocratization)が進んでいる国とするが、韓国は独裁化が進んでいる42カ国に分類された。
報告書は「世界でも珍しく、民主主義が回復中の事例として紹介された韓国が(文在寅政権)以前の水準に戻った」と述べた。さらに「朴槿恵(パク・クネ)大統領の腐敗スキャンダルと大規模な(弾劾)デモ以後、人権活動家出身の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を経て韓国の民主主義は前進したが、右翼保守の尹錫悦大統領が執権してから、前任政権の努力は事実上台無になった」と付け加えた。
報告書は「尹錫悦大統領が前政権の人々を処罰するために強圧的な措置を取り、ジェンダー平等を攻撃したことで、韓国の自由民主主義指数は下落傾向に転じた」と評した。尹錫悦政府が文在寅政権とその政策を攻撃・非難することに集中し、前政権関係者を処罰するために警察、検察、監査院などを動員していることをその根拠に挙げた。また、報告書は尹大統領が進める女性家族部の廃止を、ジェンダー平等に対する攻撃と捉えた。さらに、このような後退の背景には批判的なマスコミに対する政府の検閲、メディアの自己検閲、記者に対する弾圧など言論と表現の自由が萎縮したのが影響を及ぼしたと指摘した。
韓国のように独裁化の類型に属する国としては、香港やポーランド、ハンガリーなどがある。自由民主主義の最上位グループ(32カ国)のうち、独裁化国家に分類されたのは韓国だけだった。独裁化国家は2003年の11カ国から2023年の42カ国へと20年間で4倍近く増えており、民主主義の後退が世界的な現象であることを示した。