途方もない速度で発展する人工知能(AI)は、意図せず人間の雇用を奪う「悪役」に転落するのだろうか。幸い、労働市場における「費用対効果」は人間の方が当面はAIより優位だとみる研究結果が発表された。
米国のCNNは22日(現地時間)、米マサチューセッツ工科大学(MIT)科学・AI研究チームの研究結果をもとに、AI革命の労働市場への影響は懸念されたよりはるかに及ぶのが遅れる可能性が高い、との見通しを示した。研究チームの分析によると、現在賃金を受け取っている「人間労働者」の業務のうち、費用面で「AIを使った方が効率的」な業務は、AIが代替しうる業務の23%のみだった。AIによる業務の自動化のコストを計算してみたところ、まだ8割は「人間労働者」を使った方が安いということだ。研究チームは今回の調査で、特にAIが雇用を奪うことが強く懸念されるコンピュータイメージに関する領域において、業務がすでにAIに「さらされ」たり、雇用を失うリスクに直面したりしていることが確認されている仕事のみを分析対象とした。
もちろん、AIは急速に発展しているだけに、時間がたてばAIの費用対効果が人間を上回るケースは増えざるを得ない。ただしCNNは「今回の調査結果は、AIが人間労働者の雇用を奪うとしても、それはゆっくり進むだろうということを示唆するもの」と解説した。
特に2022年末に登場したオープンAI(OpenAI)社の対話型AI「ChatGPT」が旋風を巻き起こしているのに伴い、人間の労働市場が蚕食されるとの懸念が本格的に拡大している。ニュース制作、裁判所や弁護士の業務、選挙の宣伝代行などの一部の専門領域では、このような懸念が現実のものとなっている。しかし今回の研究の責任者、ニール・トンプソン氏は「現在のところ、多くのケースで人間が働いた方がはるかにコストパフォーマンスがよく、経済的に魅力的な方法」だとし、「AIは人間の業務を代替する高い潜在力を持つが、直ちにそのようにはならないだろう」と語った。そして、「AIシステムを現実の業務に具現化する際に、経済性を考慮することは本当に重要な問題」だと指摘した。
国際通貨基金(IMF)はすでに、AIの登場で全世界の雇用の40%ほどが影響を受ける恐れがあり、ついには不平等を深化させる、との憂慮を示している。しかしトンプソン氏は「AIは現在、優れた能力を示しながら、直ちに全ての場所に導入されているわけではないことには理由がある。その裏には『経済性』がある」とし、「こうした事実は、以前に我々が他の(革新的な)技術で(労働者の雇用が完全に破壊されなかったのを)見たのと非常に似ている」と解説した。