国連総会は、人工知能(AI)が標的を把握するのにとどまらず致命的な攻撃を加える選択まで下す「自律型致死兵器システム」(Lethal Autonomous Weapon Systems=LAWS)の脅威に国際社会が積極的に対応しなければならないという決議案を可決した。AIの軍事利用を規制する国際社会の動きが本格化するかに注目が集まっている。
国連総会は22日、自律型致死兵器システムが国際社会にもたらす脅威と憂慮に早急に対応しなければならないという内容を骨子とする決議案を、152カ国の圧倒的な賛成で可決した。反対した国はロシア、インド、ベラルーシなど4カ国で、中国、イスラエル、イランなど11カ国は棄権した。この決議により、アントニオ・グテーレス事務総長は来年9月に開かれる総会までに、同兵器システムがもたらす人道的・法的・安全保障的・技術的・倫理的問題に対して加盟国の意見を集め、報告書を提出することになる。
国連総会で150カ国を超える圧倒的多数がこの決議案に賛成したのは、昨年2月末に始まったウクライナ戦争をきっかけに、AI技術開発に一歩遅れている発展途上国がこの技術による戦争拡大の危険性に共感しはじめたためとみられる。実際、ウクライナ戦争では無人機(ドローン)を活用して相手の中心部を攻撃する作戦が頻繁に行われている。この過程でAIは、体温や映像分析を通じて人間などの標的を感知しているものとみられる。だが、これにとどまらずAIが自ら人間を殺傷する決定まで下す自律型致死兵器システムが使われているかは確認されていない。
このような懸念に加え、これまで技術開発を優先視し規制には消極的だった米国が、AIを軍事的に利用するにあたって国際的規範を作らなければならないとし、2月に積極的に議論を主導しはじめた。米国務省は当時発表した「政治宣言」の草案で「AIの軍事利用は、倫理的かつ責任あるものでなければならず、国際安全保障を強化するためのものでなければならない」とし、AIの能力は国際法、特に国際人権法の規範に沿うこと▽核兵器の使用に関する主権決定の通知と実行に必要不可欠なすべての動きに人間による統制と介入を維持すること▽AI能力の発展には高位当局者の監督が保障されることなどの内容が盛り込まれた12の原則を公開した。
グテーレス事務総長は来年までに報告書を完成させ、これを土台に自律型致死兵器システムを禁止しうる条約の制定に乗り出す方針だという。しかし、この日確認されたように、ロシア(反対)・中国(棄権)などの立場が微妙に異なり、意味ある合意が得られるかどうかは明らかではない。