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韓国、週52時間守れば連続徹夜も容認…「11時間の休息を保障せよ」

登録:2023-12-26 08:43 修正:2023-12-26 11:24
最高裁、延長労働の週単位計算提示
学生団体が2020年2月、宅配労働者の過労死対策を要求し、宅配の段ボールを抱えてデモ行進をしている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 週52時間さえ超えなければ一日最長21.5時間の労働も違法ではないとした最高裁の判断により、交代制で働く製造業の生産職などの長時間集中労働で「突発過労」が誘発される恐れがある。労働の専門家は「11時間連続休息制」の導入など、一日の労働時間を制限する法改正が必要だと主張する。

 ハンギョレの取材に応じた専門家たちは25日、今回の最高裁の判断により、週当たりの労働日数は少ないものの、一日のうちに長時間集中的に働く人々の労働時間を事業主が従来より簡単に増やせるようになったと指摘した。これまで労働現場では、雇用労働部長官から特別延長労働の認可を受けるなどして週の最長労働時間を52時間から64時間に増やしてから、この限度内で一日の労働時間を延長していた。しかし最高裁の判断によって、政府の認可などを得なくても週52時間の範囲内で一日の労働時間を最長21.5時間(休憩時間を除く)に増やす道が開かれたわけだ。

 働く市民研究所のキム・ジョンジン所長はハンギョレに「(最高裁の判断が現場に適用されれば)製造業の生産、警備業、病院などの24時間交代制勤務をする労働者の一日の労働時間が不安定なものになりうる」と懸念を示した。仕事内容によって一日の労働時間が増えたり減ったりといった状況が深刻化する恐れがあるというのだ。例えば製造業の下請け企業では、昼夜2交代制で一日10時間、週5日働くケースが多い。一日8時間に加えてさらに2時間働くというやり方だ。これは、労働部の指針に則って一日8時間を超過した労働時間の合計が1週間当たり12時間以下になるようにするためだ。しかし最高裁の計算式に従うと、週5日のうち2日は一日15時間(一日8時間+7時間の延長労働)働き、残りの3日は7.3時間働くというやり方が可能になる。1週間の総労働時間が52時間を超えないため、違法とはならないからだ。キム・ジョンジン所長は「国際労働機関(ILO)が重視する労働条件は規則的な労働時間。仕事が集中する時期に労働時間が飛躍的に増えれば過労死の原因となりうる」と語った。

 政府は労働時間の急増など、発症前の短期間に業務負担が増え、脳血管・心臓血管に影響を及ぼした場合などを「突発過労」の認定要件の一つとしている。最高裁の判断に従えば、一日21.5時間を2日連続でおこなって残りは休むという極端な労働が可能になることから、過労による労災が増える恐れがある。パワハラ119の労務士、パク・ソンウさんも「法的には延長労働時間違反ではないのに過労労災と認められる例が増える恐れがある」と述べた。

 今回の最高裁の判断は、一日の延長労働時間を規制できていない労働基準法の弱点をあらわにした。「一日8時間」を法定労働時間と定めてはいるものの、一日の延長労働の限度は明示していないのだ。そのため、法を改正し「11時間連続休息制」などを導入すべきだとの声は強い。勤務日の間に少なくとも11時間は休めるようにし、一日の延長労働の上限を13時間までに制限しようというものだ。欧州連合(EU)は労働時間指針で、一日11時間連続休息の原則を規定している。政府は今年3月、延長労働時間の管理単位の拡大を前提として、11時間連続休息制の導入に言及している。

 労働部は、最高裁の判断に合わせて延長労働時間の計算指針(行政解釈)を変更するかどうかを検討している。労働部の関係者は「(最高裁の判決と)行政解釈が一致していない状況なので、変更するかどうかを検討中」だとし、「労働者には不利になりうるため、非常に苦心している」と語った。

キム・ヘジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1121761.html韓国語原文入力:2023-12-25 20:30
訳D.K

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