文在寅(ムン・ジェイン)政権の大統領府による「蔚山(ウルサン)市長選挙介入疑惑」で起訴されたペク・ウォヌ元大統領府民情秘書官、ソン・チョルホ前蔚山市長、共に民主党のファン・ウンハ議員らに、裁判所は実刑を言い渡した。大統領府の関係者が「大統領の友人」の当選のために組織的に選挙に介入したことを司法が認めたもので、波紋が予想される。
ソウル中央地裁刑事合議21-3部(キム・ミギョン裁判長)は29日、公職選挙法違反容疑で起訴されたペク元秘書官に懲役2年、パク・ヒョンチョル元大統領府反腐敗秘書官に懲役1年、執行猶予2年を言い渡した。同じ容疑で起訴されたソン・チョルホ前蔚山市長には懲役3年を、公職選挙法違反および職権乱用権利行使妨害容疑で起訴されたファン議員には懲役3年、議員職喪失刑を言い渡した。ソン・ビョンギ元蔚山市経済副市長にも懲役3年を言い渡した。いずれも法廷での拘束は免れた。
蔚山市長選挙介入疑惑は、2018年の地方選挙を前に大統領府が文前大統領の長年の友人として知られていた民主党のソン・チョルホ候補(当時)の当選を助けるために、組織的に介入したというもの。
検察は、ソン前市長らが2017年9月、蔚山地方警察庁長だったファン議員に当時のキム・ギヒョン蔚山市長(現国民の力党代表)に関する捜査を依頼し、続いて大統領府にも捜査を依頼したと判断した。ペク元秘書官やパク元秘書官らについては、このような捜査依頼が実行されるよう警察に情報を送り、捜査の進行状況について報告を受けていたとも判断したが、裁判所はすべて有罪と認めた。ファン議員がキム前市長の周辺の捜査に消極的な警察官に対して不当な人事をおこなったとされる容疑も有罪と認めた。
裁判所は「被告らは公権力の頂点にあるという地位を悪用して、特定の人物や特定の政党の政治的利益のために警察の捜査機能や大統領秘書室の監察機能を不当に利用した」とし、「警察と大統領秘書室を自分たちの政治的利益のために私的に利用したため、厳しく処罰する公益上の必要性が非常に高い」と述べた。
ただし、ソン前市長の党内のライバルに対して党内選挙を降りる見返りとして公職を提案した疑いで起訴された民主党のハン・ビョンド議員には、無罪が言い渡された。キム・ギヒョン元市長の目玉公約だった労災母病院の予備妥当性調査での脱落発表の時期を調整した容疑でそれぞれ起訴されたチャン・ファンソク元均衡発展秘書官室先任行政官とイ・ジンソク元社会政策秘書官も無罪だった。
ソン前市長は「(検察の)一方的な主張ばかりをそのまま受け入れた」として控訴する考えを明らかにした。ファン議員も「委託捜査であれ下命捜査であれ、明確に存在しない内容であり、警察は極めて正常な捜査をおこなったに過ぎない」として無罪を主張した。
国民の力のキム・ギヒョン代表はこの日、国会で記者団に対し「背後に隠されている胴体を捜し出さなければならない」とし、「文前大統領、イム・ジョンソク、チョ・グクのような人々に対する捜査が再開されなければならない」と語った。
ファン議員には議員職喪失刑が言い渡されたが、任期が6カ月あまりしか残っていないため、その前に刑が確定する可能性はほとんどない。ソン前市長も、2020年1月の起訴から裁判が3年9カ月間続いたことから、昨年6月に任期を無事に終えている。