法務部が「大統領府の選挙介入・下命捜査疑惑」事件の起訴状を公開しないことにした。法務部が国会の要請にもかかわらず起訴状を公開しないのは極めて異例だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の長年の知人とされるソン・チョルホ蔚山(ウルサン)市長を含め、大統領府と与党関係者など13人の選挙介入行為が具体的に露呈するのを防ぐための決定という批判の声があがっている。
4日午後6時半、法務部は「国会の『蔚山市長在宅起訴事件』の起訴状提出要請に対して、起訴状の原文は提出しないが、公訴事実の要旨などに関する資料だけを提出した」と発表した。法務部は「被告人の公正な裁判を受ける権利、事件関係者の名誉およびプライバシー、捜査進行中の被疑者についての被疑事実の公表の可能性などを総合的に考慮した」とし、「今後、他の事件においても同様の基準に従う」と明らかにした。
同日、法務部が国会に提出した「公訴事実の要旨」は、先立って検察が公開した報道資料と内容はほぼ同じだ。検察は先月29日、「選挙介入・下命捜査」疑惑でソン市長とペク・ウォヌ前大統領府民情秘書官、ハン・ビョンド前政務首席、パク・ヒョンチョル前反腐敗秘書官、ファン・ウンハ元蔚山警察庁長、ソン・ビョンキ前蔚山市経済副市長など13人を裁判に渡し、彼らの容疑と具体的な犯罪事実を書いた約60ページの起訴状を裁判所と法務部に提出した。法務部はこれをほとんど省略して内容を要約し、国会に提出した。
起訴状は、検察が被疑者を起訴し罪名や犯罪事実などをまとめ裁判所に提出する文書だ。刑事事件の公開禁止等に関する規定は、起訴後「被告人、罪名、公訴事実の要旨、公訴提起の日時、公訴提起の方法(拘束など)、捜査の経緯、捜査状況などを公開することができる」と規定している。政治家など公人の場合「国民の知る権利」を理由に国会を通じて起訴状が公開されてきた。朴槿恵(パク・クネ)、李明博(イ・ミョンバク)元大統領やチョ・グク前法務部長官、チョン・ギョンシム氏などの起訴状もこのような手続きを経て公開された。
国会法制司法委員会所属の議員室らは、起訴当日である先月29日から法務部に選挙介入疑惑事件の起訴状公開を要請したが、法務部はこの日まで6日間起訴状を公開せず「決裁が進行中」という回答ばかり繰り返し、結局チュ・ミエ長官の直接指示により起訴状の非公開が決定された。
これまで起訴状の非公開は主に検察の要請によって行われたことから、今回の決定は異例といえる。検察は共犯の露出など今後の捜査に影響を及ぼす可能性がある場合、捜査が終わるまで起訴状を公開しなかった。昨年のチョ・グク前法務部長官の5親等の甥や加湿器殺菌剤事件などでも、検察の要請で起訴状が一定期間公開されなかった。
チュ長官が大統領府と与党関係者の具体的な選挙介入疑惑が公開されないようにするために「非公開の判断」を下したのではないかという指摘もある。起訴状の全文を公開していた慣例を、今回の事件を基点に覆したためだ。次長検事出身のキム・ジョンミン弁護士は、「最近チョ前長官、ユ・ジェス副市長などの起訴状もすべて公開された。今回の起訴状を公開しないのは、選挙不正事件についての全容が明らかにされるからではないかと疑われる」とし、「検察も起訴状公開を念頭に置いて書きたい話を書いたであろう」と話した。
法務部が2カ月後に迫った4・15総選挙を念頭に置いて、起訴状を非公開することに決定したという分析も提起されている。通常、今回の事件のように被疑者が在宅起訴中の事件の場合、裁判が始まるまで2~3カ月かかる。約2カ月後の総選挙が終わるまで政府・与党に不利な内容が書かれた公訴事実の内容を隠すために、前例のない起訴状の非公開決定をしたということだ。
今回の起訴状の非公開決定が「国会での証言・鑑定などに関する法律」(国会証言鑑定法)違反の余地があるという指摘も出ている。国会証言鑑定法第4条(公務上の秘密に関する証言・書類などの提出)は「国家機関が書類などの提出を要求された場合、証言する事実や提出する書類などの内容が職務上秘密に属するという理由で証言や書類などの提出を拒否することはできない」とされている。法務部は起訴状の非公開を決定するにあたり「事件関係者の名誉およびプライバシーの保護」という異例の理由を挙げた。
ある部長検事出身の弁護士は「政権に不利な内容が書かれた起訴状が公開される状況になって急に『事件関係者のプライバシー』を取り上げるのは、時期と理由いずれも極めて不自然だ」とし、「現在、検察捜査が進行中のサムソン関連捜査やセウォル号の捜査などでも『事件関係者のプライバシー』などを理由に起訴状の内容を非公開としなければならなくなるが、これが国民にとって利益なのか疑わしい」と指摘した。