尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が29日、非常識な極右主張を展開する人物を統一部長官と国家公務員人材開発院長(次官級)に指名・内定したことは、大いに憂慮される。尹大統領は彼らを通じて南北関係をどうするというのか、公務員に何を伝えるというのか、疑問だらけだ。
ニューライト系のキム・ヨンホ統一部長官候補はこれまでのメディアへの寄稿とユーチューブで「金正恩(キム・ジョンウン)政権打倒」を主張し、2017年の憲法裁判所による朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾決定を「体制転覆勢力に赤いカーペットを敷いてやる結果」だと非難した人物だ。南北関係にとどまらず、物事を偏狭な極右的視点で裁断してきた。統一部長官はもちろん、高位の公職を担うには不適切な人物だ。彼はこのような極右主張を寄稿はもちろん、2018年7月から今まで2800本あまりにのぼる動画にしてユーチューブに投稿している。キム候補は30日にも「南北の合意を選別的に考慮していくことが必要だ」と述べている。このかん9・19軍事合意と朝鮮半島非核化共同宣言の廃棄の必要性を主張してきたが、今は国家政策として実現する段階へと向かおういうのだ。彼は「韓国も核拡散防止条約(NPT)から脱退し、独自の核武装に乗り出すべき時」だとも述べている。独自の核武装に明確に線を引いた今年4月の韓米首脳によるワシントン宣言とも相反し、尹錫悦政権の公式基調とも異なる。尹大統領も放棄した非現実的な核武装論を唱えてきた人物が統一部長官になれば、米国にも否定的なシグナルとして受け取られうる。南北交流・協力と対話の推進という統一部本来の責務からも、なお一層遠ざかるだろう。それによる南北の緊張の激化は、ただでさえ米中競争の波に飲まれている韓国経済にも打撃となる恐れがある。国会は人事聴聞会での徹底した検証を通じて不適格さを判別し、選り分けなければならない。与党も、キム候補を統一部長官の座にすえることが国益に合致するかどうかを熟考してほしい。
キム・チェファン国家公務員人材開発院長(次官級)は元英語講師で、事実上の職業は極右ユーチューバーだ。彼は自身の運営するユーチューブチャンネルで「文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は軍人たちにマスクを外させ、コロナ生体実験を指示」しただとか、「中国共産党が朴槿恵(パク・クネ)退陣デモに影響力を行使した」などの常識はずれの極右陰謀論を展開してきた人物だ。このような人物を5級以上の高位公務員教育を総括する機関の長に据えるなどというのは、大韓民国の公職社会全般を侮蔑するものだ。今からでも指名と内定を撤回すべきだ。尹大統領にはどうか、国の品格にふさわしい公職人事の品格を考えてもらいたい。