尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は18日、大統領室の参謀たちに「国民は常に無条件に正しい。いかなる批判にも弁解してはならない」とし、「暮らしの現場にもっと入っていって支えなければならない」と注文した。「理念論争をやめ、ひたすら国民の暮らしの問題のみに集中しなければならない」との趣旨の要請も最近おこなったという。11日のソウル江西(カンソ)区長補欠選挙で与党が惨敗した主な原因は尹大統領の独断的な国政運営だとの批判があふれる中、「国民の暮らし」と「コミュニケーション」を強調しつつ、低姿勢を示している格好だ。
尹大統領はこの日午前、大統領室の参謀陣とおこなった非公開会議で「国民は常に無条件に正しい」としつつ、暮らしの現場に入っていくことを強調した。キム・ウンへ広報首席がブリーフィングで伝えた。大統領室の複数の関係者によると、数日前には参謀陣に「理念論争を通じて自由と連帯を正すことも重要だが、最も重要なのは国民の暮らし」だとし、「暮らしの問題のみに集中しなければならない」と強調したという。
江西区長選挙後、尹大統領は「国民とのコミュニケーション、現場とのコミュニケーション、政府与党のコミュニケーションをさらに強化してほしい」(16日)と述べるなど、「国民の暮らし」と「コミュニケーション」をとみに強調している。大統領室は、国民が直接参加する「民生現場タウンホールミーティング」など、これまでと異なるコミュニケーション策も講じている。国民が実生活で体感できる生活密着型の政策も検討中だという。
尹大統領は「国民の暮らし」を糸口として、垂直的かつ一方的な関係だと批判される与党との意思疎通にも積極的になっている。尹大統領はこの日、大統領室で与党「国民の力」のキム・ギヒョン代表、ユン・ジェオク院内代表、新たに任命されたイ・マンヒ事務総長、ユ・ウィドン政策委議長の党4役との顔合わせ兼昼食会を行い、党・大統領室・政府が参加する高位政府与党会議を定例化し、毎週1回おこなうことを約束した。キム・ウンヘ首席は「与党と大統領室は、今きびしい状況にある国民、青年が非常に多く、国民の暮らしをよりきめ細かく支えるために、政府与党のコミュニケーションをより緊密にすべきだということでコンセンサスを得た」と語った。イ・マンヒ事務総長は「党が暮らしに関する懸案を処理するうえで主導的役割を果たすと(尹大統領に)申し上げた」と語った。尹大統領は前日の国民統合委員会の晩さんでも与党指導部と会っている。連日の会合を通じて「キム・ギヒョン第2期」を後押ししたかたちだ。
尹大統領のこのような態度は、江西区長補選での敗北で予想より民意が大きく離れていっていることを確認したことが影響しているとみられる。尹大統領が変わらなければ来年の総選挙での国民の力の勝利を断言するのは難しい、というのが政界の大方の見方だ。総選挙で国民の力が敗北し、第22代国会でも少数与党となれば、尹大統領は国政運営の動力を大きく失うことになる。
そのためか、尹大統領は17日に行われた大統領直属の国民統合委員会の晩さんで、「私と内閣で振り返りをおこなって、おおいに反省もしたい」と、就任後、事実上初めて公式の席で「反省」を口にしてもいる。大統領室の関係者は「政治では『民意は天意だ』、『国民は王だ』と常に胸に刻み、たてまつる時期がある」とし、この発言が江西区長選挙と無関係ではないことをほのめかした。
しかし尹大統領は就任100日の記者会見(昨年8月17日)以降、一度も記者会見をおこなっておらず、共に民主党のイ・ジェミョン代表ら野党とのコミュニケーションも拒否してきた。「週1回の高位政府与党協議」も3月のキム・ギヒョン代表の就任直後に約束しているが、きちんと守られていない。「理念論争」は批判勢力に「共産全体主義集団」とのレッテルを貼るなど、尹大統領が先頭に立っておこなってきたことだ。そのため、尹大統領が国政運営の基調を根本的に変えられるのかは懐疑的だとする見方が依然として残っている。尹大統領が国政運営に対する省察と変化について、国民に自ら語るべきだとする声も、与党の内外からあがっている。