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「18世紀に作られた民主主義、再設計すべき…韓国は革新可能」

登録:2023-10-12 01:15 修正:2023-10-12 10:37
「多重危機時代:共存の道を探して」アジア未来フォーラム開幕 
マンスブリッジ氏、基調講演「民主主義の危機の根源」で強調
米国ハーバード・ケネディ・スクールのジェーン・マンスブリッジ教授が11日、ソウル中区の大韓商工会議所国際会議場で開催された第14回アジア未来フォーラムで「民主主義の危機の根源」をテーマに基調演説を行っている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 「ルームメイトの1人が食後の後片付けを担当し続け、残りは後片付けをしない(ただ乗り)と仮定してみよう。きれいな食器(自由使用財)は絶えず用意されるが、彼らがルームメートとして共に暮らすのは難しいだろう。このような時には、誰もが同意できるような強制的な作動システム(国の強制力、合法的正当性)を作らなければならない」

 2018年に政治学のノーベル賞と呼ばれるヨハン・スクデ政治学賞を受賞した米ハーバード大学ケネディ・スクールのジェーン・マンスブリッジ名誉教授は、政治的両極化を解消するためには、より多くの「自由使用財(Free use goods)」が必要だと主張する。自由使用財とは、誰もが無料で使える道路、港湾、安保、法、秩序などのことだ。同氏は「自由使用財」を必要とする人が増えれば増えるほど、租税徴収などの国の強制力が必要になり、それに「ただ乗り(Free Riding)」する者には罰金を科すなどの「合法的正当性」がなければならないと述べる。

 政治的両極化の原因と解決策を模索してきたマンスブリッジ教授は、11日にハンギョレ新聞社の主催で開かれた「第14回アジア未来フォーラム」の基調セッション1で、「民主主義の危機の根源」をテーマに発表した。同氏は卓越した学問的成果によって評価される学者だ。昨年に米国政治学会が授与するベンジャミン・E・リッピンコット賞を、2年前には国際政治学会が授与するカール・ドイッチュ賞などを受賞している。2012年に米国政治学会の会長を務めた同氏は、著書に『Beyond Adversary Democracy(敵対的民主主義を越えて)』などがある。

 マンスブリッジ教授は、「人類同士の相互依存性が(過去に比べ)強まっていることで、『自由使用財』に対するニーズ(要求)も高まっている。自然と『ただ乗り』を望む人が増え、それだけ国の規制がますます必要になっている」、「しかし18世紀から作られてきた民主主義メカニズムでは、今日必要とされるすべての規制を合法化(正当化)するには足りない。そのため、我々は『合法的正当性』をどのように拡大するかという問題を考えなければならない」と述べた。

 さらに、「我々は(18世紀に作られた)民主主義を再設計しなければならず、そのためにはひとまず国の規制の強化の必要性を認めなければならない」とし、「民主主義を再設計する際、政党の代表と市民はコミュニケーションを続けなければならない。市民と代表が双方向的なコミュニケーションを取るには多くのコストとエネルギーが必要だが、『合法的正当性』を確保するためにはこのような変化が必要だ。代表と市民が集まって多様な政治的テーマについて討論すれば、新たなアイデアが導き出せる」と語った。

 また、「韓国は18世紀の民主主義メカニズムを革新する国になりうると思う。なぜなら、韓国は世界的な力量を持つ強力な国でありながら規模が小さいため、十分に変化を起こせるからだ。企業家精神と創意性があり、教育水準が高く、非常に努力する国だ」とし、「このような総体的な思考と解決しようとする意志によって問題を解決できるだろう。韓国は世界が直面している問題を解決してくれるのではないかと思う」と述べた。

 続く討論で、パネラーたちはマンスブリッジ教授の見解に同意しつつも、韓国固有の政治的特性、歴史、社会的対立などを考慮すべきだと付け加えた。中央大学のシン・ジヌク教授(社会学)は、「民主主義モデルの限界を克服するためには、熟議民主主義の意思疎通の過程が非常に重要だが、現実は容易ではない。意思疎通に参加する動機、そして相互尊重の文化、共存という共同の目標がなければならない」とし、「だが両極化した政治文化においては、その前提条件が満たされないことが多い。多くの人は反対者とのコミュニケーションを嘲笑したり拒否したりする。このような悪循環を断ち切るための代案を考えなければならない。何より尊重と傾聴の文化を拡げ、強化し、厚い社会的連帯の中心を形成することが重要だと考える」と語った。

 慶煕大学比較文化研究所のキム・マングォン学術研究教授(政治哲学者)は「マンスブリッジ教授が韓国は革新の場となりうると述べつつ考慮した諸要素は、一般的な面で説得力がある」としながらも、「韓国の政治が親日・従北のような歴史的なイデオロギーを受け継いできたこと、敵対視が深刻化しつつある政党体制は当面は変わらないだろうということ、所得格差などの不平等の深化、能力主義と関係する嫌悪と差別などを考慮しなければならない。これらは韓国が革新の場として可能性があるかについて考えるべき問題」だと述べた。

 国会未来研究院のパク・サンフン招聘研究員は、「政治参加より重要なのは、組織され、かつ精製された意見を持つ人々の参加」だとし、「組織された政治参加や精製された政治参加、責任ある政治参加が増えないという問題を考えるべきだ」と語った。また、「私は今が世界的に民主主義の全盛期だと思う。だから、民主主義をきちんと行うためには、我々が今までやってきたことを捨てて新しい革新的な民主主義を探すのではなく、今までやってきたことをどうやってさらに発展させるかというふうにアプローチすることも、取りうるアプローチの方法ではないかと思う」と付け加えた。

ソン・ヒョンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1111703.html韓国語原文入力:2023-10-11 16:32
訳D.K

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