ソウル高裁は、日帝による強制労働の被害者が日本の戦犯企業を相手取って起こした損害賠償請求訴訟を「韓日請求権協定」を理由として却下した一審判決を、改めて審理させるために破棄し差し戻すことを発表した。
ソウル高裁民事33部(ク・フェグン裁判長)は14日午後に行われた口頭弁論で、「この事件は一審判決が却下されたため事実関係の判断がつかない。証拠調査は行うが、補足的な証拠調査に過ぎない。裁判を終結し、事件を一審に戻してきちんと審理すべきであろう」と述べた。同高裁は10月19日にこのような内容の判決を下す方針だ。
2021年に一審は、強制動員被害者のSさんや遺族ら85人が日本製鉄、三菱重工などの16の日本の戦犯企業を相手取って起こした損害賠償請求訴訟を却下した。1965年に両国政府が結んだ韓日請求権協定に則り、被害者には訴訟を起こす権利がないと判断したのだ。これは強制動員被害者の損害賠償請求権を認めた2018年の最高裁(大法院)全員合議体による判決に反するため、批判が起きた。
民事訴訟の一審で却下判決を受けた事件について、二審は破棄差戻しができる。今回の二審の判断は、一審の却下判断を覆し、審級制に則って改めて審理を行うべきとの趣旨。
同じ法廷で行われている、日本軍「慰安婦」被害者が日本政府を相手取って起こした損害賠償訴訟も、終盤にさしかかっている。この訴訟は慰安婦被害者が日本政府を相手取って起こした第2次訴訟だ。被害者に対する1人当たり1億ウォンの賠償を日本に命じた第1次訴訟とは異なり、第2次訴訟の一審は昨年4月、損害賠償請求を却下した。主権国家を他国の法廷に立たせることはできないとする国際慣習法上の「主権免除(国家免除)」原理が、その根拠とされた。二審は22日に最終弁論を予定している。
原告代理人団はこの日の弁論で、主権免除法理の専門家である英バーミンガム法学専門大学院のアレクサンダー・オラケラシュビリ教授のインタビュー動画を再生した。オラケラシュビリ教授は「拷問のような反人道的犯罪または戦争犯罪の中に、主権行為に関するものは何もない。強行法規違反は主権行為とはなりえないため、主権免除を認めてはならない」と述べた。また、「日帝の残酷な蛮行に苦しんだ朝鮮人女性被害者たちは、日本の官僚と軍人たちによって『日本軍慰安婦』という名で虐待された。この女性たちが(国家ではなく)民間のギャングによって虐待されたと仮定しても、この女性たちに起こったことは同じだ」とし、違法行為の本質を見なければならないと述べた。