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韓国政府の強制動員賠償金「第三者弁済供託」、裁判所5カ所のうち4カ所が棄却

登録:2023-08-28 07:51 修正:2023-08-28 09:06
法曹界「異例の事件」…結局、最高裁で判断する可能性
新任の最高裁長官候補であるソウル高裁のイ・ギュニョン部長判事が23日、キム・ミョンス最高裁長官に会うために訪れたソウル瑞草区の最高裁の前で、記者の問いに答えている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は日帝強占期の強制動員被害者とその遺族に対する賠償金を裁判所に供託するというやり方で、強制徴用問題の「第三者弁済」解決策の決着を早期につけようとしたものの、裁判所の相次ぐ棄却決定によるブレーキがかかっている。

 供託とは、債務者が債権者ではなく裁判所に金を預けることで借金の返済を果たす制度。政府は抗告などの法的手続きを継続するとの立場を取っているため、韓国政府が日本企業に代わって被害者に賠償金を支払うことができるかの最終判断は最高裁で下されるとみられる。

 27日のハンギョレの取材を総合すると、行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団(財団)が、裁判所の供託官による賠償金供託不受理決定を不服として裁判所に異議を申し立てた事件は計9件(5裁判所)。5カ所の裁判所のうち4カ所(7件)は裁判を経て政府の異議申し立てをすでに棄却しており、現在は平沢(ピョンテク)支部(2件)1カ所だけが結論を下していない状況だ。

 24日に政府の異議申し立てを棄却した水原(スウォン)地裁安山(アンサン)支部民事21単独のシン・ソンウク判事は決定文で、「加害企業が違法行為事実そのものを否認し、被害者に対する損害賠償債務を認めていない状況において、申請人(財団)が第三者弁済を通じてこの事件の判決金を返済した後に加害企業に求償権を行使しなければ、加害企業に免罪符を与える結果が発生する」と述べている。

 8月14日から相次いで下されている裁判所の異議申し立て棄却決定に対し、財団は抗告状を提出している。抗告審(二審)でも異議申し立てが棄却されれば、財団は再抗告を通じて最高裁の判断を仰ぐことができる。

 法曹界ではこの事件について、結局は最高裁の判断を受けることになると予想している。債権者である被害者が日本の加害企業の直接賠償を望んでおり、このような状況に対する法規定も曖昧だからだ。

 日本の明治民法をもとに制定された韓国民法の第469条2項は、「利害関係のない第三者は『債務者』の意思に反して債務を弁済することはできない」と規定しているが、強制動員の被害者は「債権者」であるため、この規定の直接の対象とはならない。現行の日本民法では「前三項の規定(第三者も弁済できる、など)は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない」という規定がある。

 これまで裁判所は、民法第469条第1項「当事者の意思表示によって第三者の弁済が認められない時には、第三者弁済はできない」という規定を根拠として、供託を拒否してきた。だが、契約による債権ではなく今回の事件のような「違法行為による法定債権」にも第1項が適用されるかについては議論されたことがないため、法曹界でも意見が分かれている。最高裁の関係者はハンギョレに「何しろ異例の事件であるため、第三者弁済供託に関する法理が最終的にどのように適用されるかはまだ分からない」と語った。

 今回の事件は、尹錫悦大統領が指名した新任の最高裁長官の任期中に判断が下される可能性が高い。尹大統領は22日、裁判所内の代表的な「知日派」、「日本通」とされるソウル高裁のイ・ギュニョン部長判事(61)を次の最高裁長官に指名している。イ部長判事は保守色が強いとされ、尹大統領との親交も深いという。

チョン・ヘミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1105909.html韓国語原文入力:2023-08-27 09:34
訳D.K

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