「関東大震災朝鮮人虐殺」日本には無言の韓国政府と与党…国内向けの理念攻勢に躍起
尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領は、在日本朝鮮人総連合会（総連）主催で日本で開かれた関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典に出席した無所属のユン・ミヒャン議員に照準を定め、「反国家行為に断固として対応しなければならない」と述べた。政府は、ユン議員が南北交流協力法を違反したとみて、事実確認を進めており、与党「国民の力」は国会倫理特別委員会に尹議員を提訴した。陸軍士官学校内における洪範図（ホン・ボムド）将軍胸像の撤去をめぐる議論など理念戦争で支持率下落に直面した尹大統領と与党が、ユン議員をテコにして反転攻勢に転じている。一方では100年前の関東大震災での朝鮮人虐殺について、日本政府に謝罪や遺憾表明を求めず、沈黙を守ってきた大統領と政府・与党が反共攻勢に躍起になっているという声もあがっている。
尹大統領は4日、ソウル龍山（ヨンサン）の大統領室で開かれた首席秘書官会議で「自由民主主義の国体を揺さぶり破壊しようとする反国家行為に対し、政治陣営にかかわらず全国民とともに断固たる態度で対応しなければならない」と述べた。1日、朝鮮総連が主催した関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典にユン議員が出席したことを念頭においた発言だ。大統領室関係者は「最高裁判所で朝鮮総連に対して、国家保安法上の反国家団体だと確定判決を下した」とし、「（ユン議員の朝鮮総連主催行事への出席は）憲法の価値が大きく脅かされかねない問題」だと語った。
国務委員たちも尹大統領に加勢した。パク・チン外交部長官は同日、国会予算決算特別委員会決算審査に出席し、「朝鮮総連は国家保安法上の反国家団体で、北朝鮮の代理機関であり、北朝鮮の駐日代表部の性格を帯びている」とし、「北朝鮮の核とミサイルの脅威が高まっている状況で、現職の国会議員が朝鮮総連主催の行事に出席するのは適切ではない」と述べた。キム・ヨンホ統一部長官も「ユン議員は朝鮮総連主催の行事に出席したことと関連し、統一部に事前接触申請を行っていない」とし、「ユン議員が現行法を違反した」と語った。南北交流協力法は北朝鮮住民と接触する前に、統一部に申請することを義務付けている。北朝鮮の路線に従って活動する国外の団体も北朝鮮住民とみなされるが、これにより朝鮮総連も申請の対象になるというのが統一部の説明だ。
与党も一斉にユン議員バッシングに乗り出した。与党「国民の力」は同日、ユン議員の懲戒案を国会議案課に提出した。同党のキム・ギヒョン代表は同日の最高委員会議で、「ユン議員は北朝鮮の朝鮮労働党幹部により適した人物」だとし、「国会議員はもとより、大韓民国の国民の資格もない」と非難した。特に、キム代表はユン議員と野党「共に民主党」の結びつきを強調した。キム代表は「ユン議員は（かつて）民主党所属であったし、今も民主党と共生関係にある」とし、「民主党は、（ユン議員の）除名など断固たる措置に同意してほしい」と述べた。
ユン議員が国会事務処などに海外出張への協力を要請し、行事を主催した朝鮮総連を意図的に隠したという疑惑も持ち上がっている。ユン議員が日本に向けて出国する前に国会と政府に協力を要請した公文書には、行事の主催者を朝鮮総連ではなく、（韓国の）「関東虐殺100周忌追悼事業推進委員会」と書いたという理由からだ。国民の力のハ・テギョン議員は「行事のポスターにも朝鮮総連主催と書いてあり、委員会（と書かれたところ）はポスターのどこにもない」とし、「詐称ともいうべき出張」だと主張した。
当時追悼式典に出席した人たちは、歴史認識のない韓国政府と与党の理念攻勢を批判した。「正義記憶連帯」のイ・ナヨン理事長は「関東虐殺への追悼は朝鮮総連だけでなく、日本の市民社会が主導し、数十年間にわたり行われてきた」とし、「韓国政府が（虐殺に）沈黙したにもかかわらず、韓国と日本の市民たちが連帯し、犠牲者を追悼してきた。行事には関東大震災の遺族らも出席していたが、彼ら全員を国家転覆勢力と決め付けているわけだ」と指摘した。関東虐殺100周忌追悼事業推進委員会の関係者も「関東大虐殺から100年が過ぎても政府が真相究明、特別法どころかメッセージ一つ出さない時、在外同胞たちは真相究明と追悼事業を進めてきた」とし、「長年続いた追悼（式典）に出席したことになぜ理念の物差しを突き付けるのか理解できない」と語った。
関東大震災は1923年9月1日、東京をはじめ関東一帯に発生したマグニチュード7.9の大規模地震で、当時日本警察が介入して「朝鮮人が暴動を起こした」というデマを流したことで、朝鮮人に対する無差別な虐殺が起きた。しかし、韓日政府はいずれもこの問題と関連した真相究明に積極的ではなく、大統領室もこれに対し日本の謝罪などを求めたことがない。
訳H.J
