昨年、韓国海洋水産開発院など韓国の国策研究機関4カ所が出した協同研究報告書で「日本の福島原発汚染水放出計画は海洋生態系に脅威を与えかねず、韓国国民の健康と安全への被害が憂慮される」と警告したことが遅まきながら確認された。
4日、韓国の国会政務委員会に所属する共に民主党のカン・フンシク議員が公開した資料によると、海洋水産開発院などは昨年9月に完成した報告書「原発汚染水対応戦略樹立のための基礎研究」で「日本が2023年から太平洋へ原発汚染水を30~40年かけて排出しようとする計画は、人類全体が共に保全し持続可能に利用しなければならない対象である『公海生物多様性』と生態系に実際的・潜在的脅威を与えかねない。また、韓国国民の健康と安全、水産業・海洋観光産業など環境的・社会経済的に否定的な影響と被害が憂慮される」と診断した。
800ページ余りの報告書は、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の2021年7月から政権交代後の昨年9月まで、国務調整室傘下の経済・人文社会研究会の研究機関である海洋水産開発院が主管し、韓国環境研究院・韓国法制研究院・韓国原子力研究院の3カ所が協力機関として参加し作成した。
報告書で研究機関は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「汚染水政策」に反する提案を出した。「原発汚染水の海洋排出が行われないように(韓国政府が)多角的な努力を傾けなければならず、もし排出される場合まで含めた政策目標と政策方向を明確にすることが必要だ」と指摘している。具体的な政策方向と関連しては、「原発汚染水による健康・安全被害を防止し、汚染水による影響を観測・予測し評価するための力量を向上させなければならない」と指摘した。
あわせて報告書では「原発汚染水関連の国際協力と共助を強化することで、汚染水問題に対する実効的・体系的対応体系を構築していかなければならない」と強調した。「国際原子力機関(IAEA)だけでなく、国際海事機関(IMO)、国連環境計画(UNEP)など韓国が当事国として参加している国際条約と国際機関で原発汚染水問題をイシュー化しなければならない」としているが、韓国政府は「福島原発汚染水の放出は安全だ」というIAEAの発表を受け入れる以外に、特別な外交戦に出なかった。
この協同研究報告書は昨年9月に完成したが、韓国政府はこれを公開しなかった。そのため野党では「政府の意向に合わない報告書なので非公開処理したのではないか」という疑惑を提起してきた。7月、カン・フンシク議員が「日本の顔色伺い」と批判すると、パク・クヨン国務調整室国務第1次長は「根拠のない推測」と反論した。
パク次長は当時の記者会見で「経済・人文社会研究会は(報告書が完成した)昨年9月に『汚染水に関連した韓国政府の細部政策が確定していない状態で対応方針などの提言が書かれた報告書が公開されれば、国民に混乱を招いたり対外交渉力などに影響を与える恐れがあり、非公開を決めた』と明らかにしている」と述べた。