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ウクライナを訪問した尹大統領の「反ロシア」価値観外交…「自由と民主主義を守る」

登録:2023-07-17 07:55 修正:2023-07-17 08:47
尹錫悦大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が15日(現地時間)、ウクライナ・キーウの大統領官邸のマリインスキー宮で両国首脳会談に関する共同メディア発表を終えた後、握手をしている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 ポーランド訪問を終えた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が国外歴訪の日程を延長し、15日(以下、現地時間)、ロシアと戦争中にあるウクライナを電撃訪問した。尹大統領はこの日、ウクライナのキーウにある大統領官邸でウォロディミル・ゼレンスキー大統領と首脳会談を行い、「韓国の安全保障・人道・再建支援を包括するウクライナ平和連帯イニシアチブをともに推進していく」と述べた。尹大統領はこれに先立ち、リトアニアのビリニュスで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に参加し、中国とロシアをけん制する流れに乗ったことに続き、ウクライナを直接訪問して、反ロシアの態度をいっそう明確にした。「価値観外交」を強調し、米国などの西側との密着の水準を大幅に引き上げる動きは、ロシアとの関係など国益に対する脅威になりうるという懸念が出ている。

 キム・テヒョ国家安保室第1次長は16日、ポーランド・ワルシャワのプレスセンターで、ウクライナ訪問結果についての会見で「安全保障分野で3つ、人道支援分野で3つ、再建支援分野で3つなど、9つのパッケージを用意した」と述べた。安全保障分野で韓国は、防弾服やヘルメットなどの軍需物資の支援を拡大し、中長期的には両国の防衛産業の協力を計画することにした。人道支援分野についてキム第1次長は「地雷の探知機や除去機に対するウクライナの需要がきわめて高く、支援を拡大することにした」と述べた。再建支援分野では「1億ドルの事業基金を活用したインフラ建設事業の推進」などを約束した。

 尹大統領と夫人のキム女史はウクライナを訪問し、民間人虐殺が発生したキーウ近くのブチャ市、民間人居住地域でミサイル攻撃が集中したイルピン市、人道支援が切実に求めらている国立児童病院などを訪れた。

 尹大統領のウクライナ電撃訪問は、自由民主主義国家の連帯を最優先視する「価値観外交」の延長線だとするのが大統領室の説明だ。尹大統領は、ゼレンスキー大統領との会談後の共同メディア発表で、「現在のウクライナの状況は、70年ほど前の大韓民国を思いださせる。必生即死、必死即生(死ぬ気になれば必ず生き残るという意味で、戦争などにおいて決然とした意志を示す)の精神で我々が強く連帯してともに戦っていくならば、必ず我々の自由と民主主義を守ることができるだろう」と述べた。同じ敵を相手に戦う同盟国に言う言葉だ。尹大統領はまた、「大韓民国はウクライナの自由と平和、繁栄をはぐくむパートナーになり、さらには、ウクライナとともに世界の自由・平和・繁栄に寄与する信頼できるパートナーになるだろう」と述べた。

 キム・テヒョ第1次長は記者団に、ウクライナ訪問について「価値観外交と責任外交の実践基調が、アジアを越えて欧州までを含む立体的かつグローバルなレベルで緊密に連帯しているといえる」と述べた。

 大統領室はまた、尹大統領が「国軍の派兵地でない戦場に行った初めての大統領」だと強調した。大統領室は「かつて韓国軍の派兵地(ベトナム、イラク)に軍の統帥権者として訪問した事例(朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領)はあるが、派兵地ではない戦場に国際社会の責任ある一員として連帯の立場で訪問するのは、今回が初めて」だと説明した。

 尹大統領の訪問は、ウクライナ戦争後、韓国企業のウクライナ再建事業の進出を支援する布石とみなせる。ウクライナとの関係が強化されれば、韓国企業が再建事業に参加することに役立つためだ。キム・テヒョ第1次長は「自分の目で現場を確認することで、具体的にウクライナの状況を評価でき、肌で感じて何が必要であり、我々が具体的にどのような協力ができるのかを正確に識別できた」と訪問の背景を説明した。

 だが、尹大統領のウクライナ訪問は、ロシアの敵対国を自任し、韓国を危険に陥れることになる可能性のある動きだとする批判が出ている。これまでウクライナを訪問した外国首脳は、米国のジョー・バイデン大統領、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相、カナダのジャスティン・トルドー首相など。ほとんどは、ウクライナとの距離が近かったり、密接な利害関係がある主要7カ国(米国・日本・ドイツ・英国・フランス・イタリア・カナダ)の首脳だ。アジアの首脳としては、日本の岸田文雄首相、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領に続き、尹大統領で3人目だ。

 外交官として30年以上にわたり活動したある人物は「外交舞台での『価値観外交』は、米国のような超大国が自己の利益を追求して掲げる聞こえのよい修飾語」だとしたうえで、「尹大統領は、外交において道徳的観点を強調して『自由の闘士』を自任し、あえてしなくてもいい過剰な動きをみせている」と述べ、ウクライナ訪問を批判した。

 ユーラシア戦略研究所のパク・ビョンファン所長は「ロシアは、韓国がウクライナに露骨に肩入れしていると感じるだろう」としたうえで、「尹大統領は『大韓民国営業社員第1号』を自任しながらも、現在ロシアにいる韓国企業や海外同胞が被ることになる苦痛には関心がない。現地の企業からは『韓国政府は何をしようとしているんだ』という怨念の声が強く聞こえる」と述べた。

 政府が「軍需物資の支援拡大」の延長線としてウクライナに殺傷兵器を直接・間接的に支援するかどうかも注目される。大統領室高官は「事前に韓国は直接の殺傷兵器(支援)はないことを知ったうえで、(ウクライナが)招待した」と強調した。

クォン・ヒョクチョル記者、ワルシャワ/キム・ミナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1100370.html韓国語原文入力:2023-07-17 02:44
訳M.S

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