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「敵味方」に分ける韓国外交、さらにこじれる北朝鮮核問題の解決策

登録:2022-11-17 10:13 修正:2022-11-17 12:09
尹大統領の東南アジア歴訪決算 
韓国版インド太平洋戦略、プノンペン声明 
成果に挙げるが、外交政策は米国に偏重 
北朝鮮を説得する中国との関係修復を
東南アジア歴訪の日程を終えた尹錫悦大統領とキム・ゴンヒ女史が15日、インドネシア・バリのングラ・ライ国際空港で空軍1号機に搭乗し手を振っている/聯合ニュース

 「他国の首脳は利益外交に血眼になっているが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領だけが価値外交の旗を掲げている格好だ」

 「大韓民国政府のインド太平洋戦略とは…。大韓民国の外交なのか、米国・日本の外交なのかわからない。国籍のない外交は外交ではない」

 統一外交安保分野の閣僚を務めたある元長官と、チョン・セヒョン元統一部長官が、16日に本紙に述べた尹錫悦大統領の今回の歴訪外交の総評だ。

 尹大統領は11~15日、ASEAN首脳会議(カンボジア・プノンペン)と、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット、インドネシア・バリ島)を契機に、米国(13日)、日本(13日)、中国(15日)の首脳と2国間首脳会談を行った。

 特に日本の岸田文雄首相とは、今年9月の国連総会を機に行なった「短い会談」に続き、今回50分間の正式な対面会談を行い、中国の習近平国家主席とも25分間の初の対面会談を行った。韓日・韓中ともに、新型コロナパンデミックの渦中に途切れた二国間首脳外交の扉を、2年11カ月ぶりに開いたという点で大きな意味がある。直近の韓日首脳会談は2019年12月24日の「文在寅-安倍会談」(中国・成都)、韓中首脳会談は2019年12月23日の「文在寅-習近平会談」(中国・北京)だ。

 しかし、その内容には懸念される部分が少なくない。特に、尹大統領が11日に初めて公開発表した「韓国版インド太平洋戦略」と、13日に採択した史上初の韓米日首脳共同声明である「インド太平洋における韓米日3カ国パートナーシップに関するプノンペン声明」があげられる。

 韓国版インド太平洋戦略と3カ国プノンペン声明は、今回の歴訪外交で明らかになった「尹錫悦外交」の主要ポイントだ。実際、キム・ソンハン大統領室国家安保室長は16日、「独自のインド太平洋戦略」の発表をこの歴訪の1番目の成果として、3カ国首脳声明採択を4番目の成果として挙げ、「韓国外交の重要な道しるべが立てられた」と自評した。

 問題は「大韓民国外交の米国化」「米国の言語で書かれた外交文書」という批判的なレッテルが貼られたという事実だ。3カ国首脳声明に出てくる「自由で開放的で、包容的で、回復力があり、安全なインド太平洋地域」という文句は、米国式インド太平洋戦略の中心的なモットーだ。尹大統領の「インド太平洋戦略」は、中国封鎖と牽制を目的に安倍晋三元首相が提案し、米国のトランプ・バイデン両政権が具体化した「インド太平洋戦略」と名前からして同じだ。何よりも3カ国首脳声明は、米国を頂点に韓米日3カ国の序列が明らかなインド太平洋戦略の実行過程で「共同の努力を調整」し「連帯しよう」という公開宣言だ。

 さらに、3カ国首脳プノンペン声明は「不法な海洋権益の主張と埋め立て地域の軍事化に対して強力に反対」し、「ロシアのウクライナ侵略戦争反対」と「ロシアの強圧と脅威糾弾」を明示しており、中国・ロシアに矛先が正面から向けられている。

 3カ国首脳の「韓米日経済安全保障対話の新設」合意も、米中の覇権・戦略競争やサプライチェーン再編の過程で米国を中心に団結するという公開宣言だ。これは、大陸と海洋が出会うつなぎ目としての朝鮮半島の地政学的・地経学的な立場や、朝鮮半島の平和プロセスなどを念頭に置いて、米日と中ロの間で自律的な空間を広げようとした文在寅(ムン・ジェイン)政権の「バランス外交」を廃棄したものだ。1988年の盧泰愚(ノ・テウ)政権の「北方政策」以降、進歩・保守政権が何度も交代したにもかかわらず、「北方・大陸への道」を広げようと努力してきた歴代政権の対外戦略から離脱したということだ。

13日(現地時間)、カンボジア・プノンペンのホテルで開かれた韓米日首脳会談で、尹錫悦大統領(左から)、米国のジョー・バイデン大統領、日本の岸田文雄首相が発言している/聯合ニュース

 尹大統領のこのような外交的志向は、米国・中国・日本の首脳との2国間会談でも明らかになっている。「密着する韓米日、危うい韓中」という構図だ。

 まず、会談の時間配分で差がはっきりしている。尹大統領はバイデン大統領と50分間、岸田首相と45分間会談したが、習主席とはその半分の25分間の会談にとどまった。差別的な時間配分は、議論の内容に入ればその温度差がよりはっきりとわかる。

 例えば、尹大統領の代表的な統一・対北朝鮮政策である「大胆な構想」に対する米・日と中国の首脳の反応は、はっきりと分かれる。米・日首脳は3カ国声明を通じて「『大胆な構想』の目標に対する支持」を明確にした。一方、習主席は「北朝鮮の意向がカギ」だとし「北朝鮮が呼応するならば」という条件をつけて「支持・協力」の意思を明らかにした。

 ところが、北朝鮮はすでに「大胆な構想」について、キム・ヨジョン労働党副部長の談話で「逆徒の李明博(イ・ミョンバク)が持ち出し、同族対決の産物として捨てられた『非核・開放・3000』のコピー版」だとし、「決して相手にしない」と公開で拒否した。このような事情を知らないはずのない習主席の言及は、「大胆な構想」に対する支持とは考えにくい。これに対して大統領室の高官は「北朝鮮が受け入れさえすれば中国が全面的に後押しするという肯定的なメッセージとして捉えた」と述べた。

 尹大統領は、「北朝鮮核」問題などと関連して、交渉の枠組みづくりよりも北朝鮮への圧力に対する国際協力の基盤を広げることに力を注いだ。バイデン大統領との会談で、北朝鮮の「核使用」に「すべての利用可能な手段を活用して圧倒的な力で対応」するという約束を取り付けたことや、習主席に「より積極的で建設的な役割」を注文したのが代表的な例だ。しかし習主席は「韓国が南北関係を積極的に改善していくことを希望する」とし、他のアプローチをするよう勧めた。

 何よりも習主席は「2国間自由貿易協定(FTA)交渉の速度を上げよう。経済協力を政治化し汎安保化するのには反対しなければならない」とし、「真の多国間主義をともに実践しよう」と述べた。「真の多国間主義」とは、米国のオーカス(AUKUS)・クアッド(QUAD)など小多国間主義やインド太平洋戦略を批判する時、中国が好んで使う概念だ。尹大統領のインド太平洋戦略と韓米日3カ国経済安全保障対話の新設に反対するということだ。これにより、今後の韓中関係での紆余曲折は避けられないものとみられる。

 北東アジアにおいて、韓米日3カ国の密着と揺れる韓中関係、重大な峠に差し掛かった韓ロ関係は、韓国にとって絶対課題である対話と交渉を通じた「北朝鮮核問題」の解決、そして恒久的平和体制づくりの努力に否定的な影響を与えざるを得ない。

 ある外交安保分野の重鎮は「北東アジアで分裂外交、陣営外交が勢力を得ている雰囲気だが、そうなればなるほど南北関係を含めた朝鮮半島の情勢管理が難しくなり、韓国の外交の空間は狭くなる」と憂慮を示した。元政府高官は「ウクライナ事態後、ロシアとの貿易が韓国は17%減ったが、日本はむしろ13%増えた」として「価値外交という言葉に惑わされず、利益外交の実状を見なければならない」と強調した。

 だが、尹大統領は帰国専用機の中からフェイスブックにあげた文で「自由と連帯の精神」を繰り返し強調した。表面的には価値外交とされる、事実上の「敵味方に分ける陣営外交」を、さらに強化するという意味だ。

イ・ジェフン先任記者、キム・ミナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1067613.html韓国語原文入力:2022-11-17 8:35
訳C.M

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