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尹大統領が駐韓中国大使をたとえた「袁世凱」とは誰か

登録:2023-06-15 06:11 修正:2024-05-08 07:46
中国のケイ海明駐韓大使が8日午後、ソウル城北区の中国大使官邸で共に民主党のイ・ジェミョン代表に会って発言している=国会写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が中国のケイ海明駐韓大使を批判し、清の袁世凱にたとえた世評に言及したことが分かった。袁世凱は中国と軋轢(あつれき)が生じるたびに、韓国国内の政界でたびたび取りざたされる人物だ。彼はどんな人物だろうか。

 尹大統領は13日、ソウル龍山(ヨンサン)大統領室で開かれた国務会議中、非公開の時間に「ケイ海明大使の不適切な行動に国民がかなり不快感を覚えている。ケイ大使を袁世凱と評する人が多い」と述べたという。ケイ大使が8日、共に民主党のイ・ジェミョン代表と面会した席で、あらかじめ用意したA4用紙5枚分の原稿を15分にわたり読み上げ、「中国の敗北に賭ける人々は後で必ず後悔するだろう」とし、尹錫悦政権の「米国傾倒」外交政策を非難したことに向けた発言だ。

 ケイ大使の発言に、政界は直ちに反応した。与党「国民の力」の国会国防委員会幹事であるシン・ウォンシク議員は9日、院内対策会議で「ケイ大使があたかも旧韓末に韓国に来た清の袁世凱のように暴言を吐いた。傲慢極まりない」と批判した。尹大統領の「相談役」として知られるシン・ピョン弁護士も、11日フェイスブックに「ケイ大使の傲慢不遜さは、多くの韓国人にとって、旧韓末の我々の不幸な時代に清の若者の袁世凱がやってきて振舞った浅慮と横暴を思い出させる」と書いた。

 ケイ大使の発言で政界の議論に再び登場した袁世凱(1859~1916)は、大韓帝国末期の朝鮮に駐在し、内政干渉を行った人物。1882年、朝鮮で壬午軍乱(朝鮮王朝の閔氏政権とそれを支えた日本に対する兵士の反乱)が起きると、情勢を安定させるという名目のもと、駐在官として派遣された。壬午軍乱に巻き込まれた興宣大院君(朝鮮王朝26代国の高宗の摂政として鎖国政策を推進)を無理やり拉致し、清に圧送、軟禁したのも23歳の袁世凱だった。彼は2年後の1884年、甲申政変(朝鮮で起きた急進開化派によるクーデター。親清派勢力の一掃を図り、日本の援助で王宮を占領し新政権を樹立したが、清国軍の介入によって3日で失敗)の鎮圧にも加わった。

袁世凱=ウィキペディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 韓国教育学術情報院が提供する中学校の歴史科の授業参考資料は、当時をこのように説明している。「朝鮮政府が改革政綱を発表した日の午後、袁世凱率いる清軍は速やかに昌徳宮(朝鮮王朝の王宮)に攻め込んできた。急進開花派の軍隊がこれに立ち向かったが、軍事的支援を約束した日本軍はまともに戦わず撤収し、甲申政変は清軍の武力攻撃により3日で終わった」

 甲申政変で功績を立てた後、一時帰国した袁世凱は、1885年に釈放された興宣大院君とともに朝鮮に戻り、同年、清の交渉・通商代表として駐在しながら朝鮮の内政と外交に干渉した。彼は馬や駕籠(かご)に乗って宮殿の門を無断で出入りし、朝鮮政府の公式行事で上座に座った。特に1886年、高宗がロシアに助けを求めようとすると「李氏の中から賢明な人を選んで新しい王を立てる」と脅しをかけたという。朝鮮が1887年に米国に全権公使を派遣する時は、「準則三端」の履行を強要した。その内容は、宴会場で朝鮮公使は清公使より低い位置に座り、清の公使と重要な事案を協議し指示に従わなければならないというものだ。

尹錫悦大統領が13日午前、ソウル龍山の大統領室庁舎で開かれた第24回国務会議に出席するために入場している=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 袁世凱の名前が取りざたされたのは今回が初めてではない。駐韓中国大使らと関連した舌禍が問題になるたびに繰り返し登場した。2016年、邱国洪駐韓大使が当時最大野党代表だった共に民主党のキム・ジョンイン非常対策委員会と面会し、「高高度防衛ミサイル(THAAD)が韓国に配備されたら、韓中関係が崩れかねない」と警告する発言をした時も、袁世凱を彷彿とさせるという批判の声があがった。

 しかし、尹大統領が直接ケイ大使を批判したことについては、大統領が外交争いの前面に出るのは適切ではないという懸念と批判が与野党からあがっている。

 国会外交統一委員長を務めたユン・サンヒョン議員(国民の力)は14日、CBSラジオの「キム・ヒョンジョンのニュースショー」で、「非公開だったため、大統領が個人的な感想を述べたようだ。非公開だったのに、それを外に伝えるのも問題がある」とし、「このままいけばエスカレートされ、大統領もまるで外交争いの全面に乗り出したような形になる」と述べた。

 ユン議員は「大統領が外交争いの前面に出たのに、もし中国がそれ(大統領室の適切な措置の要求)を拒否すれば、国家元首の体面はどうなるのか。国家元首の体面を保つために次は(ケイ大使を)追放しなければならないのか。それでは関係を悪化させるだけだ」と指摘した。

チョ・ユニョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1095879.html韓国語原文入力:2023-06-14 20:52
訳H.J

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